回避可能原価とは何か?再生エネルギーと交付金・賦課金の関係性

#太陽光発電 #水力発電 #電気の基礎知識
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回避可能原価

どんな発電方法でも同じコストがかかるであろうと算出されたコストを「回避可能原価」といいます。
電力は発電所があってこそ販売できるものです。

しかし発電所がなくても電力自由化で新電力が利益を得るためだけに転売できないように設けられたものが回避可能原価です。
太陽光発電や風力発電バイオマス発電などは建設費用がかかるうえ、天候に左右されやすく発電量が一定ではありません。

  • 回避可能原価の意味が分かりにくい
  • どうして回避可能原価を計算しないといけないの?

など回避可能原価の意味がサッパリ分からない、理解に難しいという方のために回避可能原価の意味と、計算方法について簡単に分かりやすく説明します。

回避可能原価とは何か?

迷っている主婦イラスト

2016年から電力自由化になり、再生可能エネルギー電気を日本卸電力取引所(JPEX)で転売することで利益を得るだけの目的で利用できないように経産省は取り組みをしました。

本来は電気を売るための固定客がいて小売りするのが目的のための日本卸電力取引所が売り買いを繰り返し利益だけを得るのは不当だと判断したためです。
その内容は日本卸電力取引所の価格に再生可能エネルギー電気の回避可能原価を上乗せするというものです。

一般家庭に供給される電力の多くは発電事業者や電気を小売りする企業が利用する日本卸電力取引所で電力の売買ができる市場で取引したものが含まれます。
私たちが毎日利用する電気は電力会社に電気料金として毎月支払っていますが何か今後変化はあるのでしょうか?

電力自由化と回避可能原価の関係

お金と計算機

回避可能原価を取り入れるようになった背景には電力自由化があります。
2016年以前、電力会社は発電所を設置しなくても再生可能エネルギーを日本卸電力取引所(JPEX)から買い取ることで発電所がなくても電気を販売できました。

どんな事業者でも電気を売り買いできるようになり、そのおかげで、日本卸電力取引所で買取った電力を横流しし、利益を得ることが簡単にできるようになりました。
実際、転売目的で電力を横流しし、利益を数億円稼いだ新電力が問題視されたこともありました。

違法性はありませんが、実態が浮き彫りになり問題視されるようになったことで火力発電所のコストをベースにした回避可能原価が算出されるようになったのです。

回避可能原価の算出例

例えば太陽光発電の買い取り価格が1kWhあたり30円とします。
火力発電のコストが1kWhあたり10円ならば太陽光発電は火力発電と比較すると20円の差額が生じます。
その火力より多くかかった費用の20円を交付金として支給すればコストが一緒になります。

電気事業者は利益を上げるために回避可能原価に上乗せして小売りをおこなっています。
これを防止するために回避可能原価を日本卸電力取引所価格に連動にすれば利益は発生しません。

電力会社が建設した発電所で1kWh発電するための経費と再生可能エネルギーを卸電力から取引価格で購入してもコストに差額がないようにするため賦課金と交付金で調整するためのものです。
つまり、発電方法の種類によって発電単価は全く違いますが、再生可能エネルギーを用いた発電方法の電力会社を設立してもそうでない発電所を構えても回避可能原価によってコストは同じになるということです。

回避可能原価が見直される理由

2016年4月から電力自由化になり、どんなジャンルの会社でも電気を小売りできるようになり、小規模で発電できる太陽光発電所が増えています。
しかしこのまま増え続けると消費者の負担額が増えてしまいます。
それは国民一人に対する再エネ賦課金の負担額が増えることを意味します。
この消費者の負担額を減らそうと回避可能原価が見直されることになりました。

回避可能原価は2016年から施行された電力自由化から回避可能原価の計算式が変更されました。
なぜ、回避可能原価を計算するようになったのでしょう?
これは政府が再生可能エネルギーを普及させようという思惑があるためです。

2030年までに温室効果ガスを26%削減

発電所から最も温室効果ガスが出るものは火力発電所です。
政府は2030年までに2013年度と比較し26%の温室効果ガスを削減するとINDC(約束草案)を表明しました。

温室効果ガスとは、そもそも温室効果のある気体のことで主に二酸化炭素や対流圏オゾン、メタンなど地球温暖化の要因になるものをいいます。
先進国や途上国など、世界的にCO2は問題視されています。

2012年度の気候ネットワークのデーターによれば、日本の温室効果ガスの33.6%は発電所からのものです。
そのため発電時にCO2が全く発電しない再生可能エネルギーを増やそうとしていますが、コストがかかります。

政府は再生可能エネルギーを今後さらに普及させるため、再生エネルギーの発電コストを賦課金と交付金を支給し、高コストな再生可能エネルギーでも差額が生じないように調整し、今後再生可能エネルギーの普及がすすむようにし、結果的に温室ガス削減を目的にしている部分もあります。

固定価格買取制度と回避可能原価の関係

固定価格買取制度とは太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは発電所で発電した電力を、一定期間に大手電力会社が固定価格で買取る必要がある内容です。
固定価格買取制度(FIT)は回避可能原価が低くなれば交付金が増え、結果的に再生可能エネルギーの価格が低くなります。

価格は回避可能原価と再生エネルギー発電賦課金で決まるからです。
再正エネルギー発電賦課金とは、私たち消費者が電気料金と一緒に含まれている金額になり、再生可能エネルギーで発電した電力を購入した電力会社に再分配される仕組みです。
固定価格買取制度と回避可能原価はバランスが重要で密接な関係があるのです。

回避可能原価が再生エネルギーだけにある理由

黄色い雨傘

2014年に回避可能原価の算出方法が変更になった太陽光発電や風力発電や水力発電などは火力発電などに比べると天候に大きく左右され安定的に発電ができません。
そのため、電源に対して発電コストが一定でない太陽光発電に対し、回避可能原価を公平にするために算出方法を見直し、コストに差が出ないように配慮しています。

回避可能原価の算出で各電力会社が電気料金の軽減につながり、消費者はメリットを受けられる仕組みです。

今後の回避可能原価はどうなるのか?

火力発電所

火力発電の燃料費が高騰すれば発電単価が上昇し、結果的に太陽光発電などの回避可能原価は高くなります。
そのため今後は市場価格を元に計算し、上昇の見通しです。
今後は電力の仕入れ値が高くなることが予想されます。

回避可能原価が上昇することで分配されるはずの再エネ発電賦課金が減少します。
回避可能原価の計算法によって電力市場が変化するため、今後どのように変化するのか発電事業者や消費者にとっても関係深いものです。

回避可能原価の算出法が変更になったことは、仕入れ単価が日本卸電力取引所市場の単価に連動するため電気の仕入れ価格が値上げされることを意味します。
仕入れ価格が上がり、販売価格を値上げると他社に顧客を奪われることになりかねません。
そうなれば利益幅を狭くする方向になってしまいます。
また政府は再生可能エネルギー発電促進賦課金を軽減する方針で回避可能原価は値上げされるでしょう。

売電行為や太陽光発電を買い取り、新電力に卸売り行為などが法制度で変化しビジネスの方針が変化してしまうことも予測しないとならないわけです。