都市ガスは大手3社がマーケットシェアの7割を独占!!

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ガスは電気と並んでわたし達の生活になくてはならない貴重なエネルギーです。
こうした貴重さゆえに、他の商品のように価格についてはこれまであまり考えてきませんでした。

つまりガス会社に言われるままに料金を支払ってきたのです。要するに他の商品と違って値段については高いとか安いとかを考える余地がなかったのです。
ところがこの都市ガスが2017年から自由化されるという話を聴き、急に価格のことが気になってきたのです。

なぜなら自由化といえば、自由競争になることですから、当然価格競争が起こり、その結果価格が下がる可能性が期待できるからです。
また今回都市ガスが自由化になると聴いて、人々は初めて都市ガス業界が競争の無い独占企業であったことに気がついたのです。

都市ガスの売上高とシェアのランキングはこうなっている

おもちゃの表彰台

上のタイトルにあるように都市ガス業界では大手3社がマーケットシェアの7割を独占しています。

自由競争が原則の資本主義社会でこれは異例のことです。この実態をはっきり理解するために、ここでは都市ガス業界の売上高とマーケットシェアのランキングを上位10社に絞ってみてみましょう。

都市ガス企業トップ10社のランキング

数字は売上高、カッコ内はマーケットシェア

  • 第1位 東京ガス 2兆1121億円(39.2%)
  • 第2位 大阪ガス 1兆5125億円(28.0%)
  • 第3位 東邦ガス   5604億円(10.4%)
  • 第4位 西部ガス   2001億円(3.7%)
  • 第5位 静岡ガス   1534億円(2.8%)
  • 第6位 日本瓦斯   1268億円(2.4%)
  • 第7位 TOKAI    I972億円(1.8%)
  • 第8位 北海道ガス  936億円(1.7%)
  • 第8位 北海道ガス  936億円(1.7%)
  • 第9位 京葉ガス   934億円(1.7%)
  • 第10位 広島ガス   835億円(1.5%)

いかがでしょうか、これを見て東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの上位3社がシェアの約7割を独占していることがよくお分かりになったのではないでしょうか。
参考資料:SEARCH COM 業界動向(平成25~26年度)

なぜいま都市ガスの小売が自由化になるのか?

上述のようにガスが自由化になるのは、料金については利用者から不満があったからではありません。にもかかわらず今回小売が自由化され自由競争になるのはなぜなのでしょうか。理由は価格を含めて次のような点にあります。

理由1・外国と比較してガス代が高い

すでに自由化されている欧米などに比べて日本のガス代は高止まりしています。日本を100とした場合の欧米各国の数字はこうなっています。

  • 米国57
  • フランス87
  • ドイツ85

理由2・サービスを向上させる

自由化による自由競争で起きるのは価格競争だけでなく、サービスの面でも改善が起こるのは必至です。なぜなら顧客満足度は価格だけで決まるものではないからです。

ガス自由化、第3の理由とは?

今回のガス自由化が行われたのは、決して国民が望んだからではありません、もちろん自由化され値段が安くなるのは歓迎でしょうが、値下げに気づいたのは自由化が発表された後からなのです。

つまり国民はガスの自由化について何の予想もしていなかったのです。
にもかかわらず自由化されるのは関係者による別の思惑…そう、電力会社の思惑によるものです。

これはあまり知られていないことですが、日本の電力会社は発電用という名のもとに、ガスを大量に取り扱っているのです。どれぐらい大量かと言いますと、例えば東京電力を例に挙げますと、実に東京ガスの2倍にも及ぶのです。

これだとガス会社と競争してもじゅうぶん太刀打ちできます。今回のガス自由化は電力会社が政界に働きかけた結果である、とも言われています。

ガス自由化にはどんな企業が参入するのか?

ガス小売が自由化になれば、多くの企業がガス市場に参入してくると言われていますが、いったいどんな企業がどれだけ参入してくるのでしょうか。まず真っ先に考えられるのは電力会社です。

理由は上述のように、多くの電力会社がすでに発電用のガスを大量に備蓄しているからです。それをよく表すように、地域の電力会社である東京電力、関西電力中部電力、四国電力、九州電力などの5社は、すでに家庭用のガス小口販売に対する準備を始めています。

ガス自由化で料金はどれくらい安くなるのか?

今回のガス自由化の目的の一つは国際的に見ても高い日本のガス価格を是正することにあります。
では自由化したら、実際にどれくらいの値下げになるのでしょうか。
最近の統計による1ヶ月のガス代の平均は4913円となっており、電気代に比べると半分以下です。

したがって家計に占める割合はそれほど高いとはいえません。とはいえ毎月かかる費用ですから少しでも安くなれば利用者にとってはあり難いことです。
では自由化でどれくらい安くなるかといえば、現在の予想では10%程度です。

つまり今の月間平均額の10%の490円程度安くなるのです。これは都市ガス大手企業の一つである日本瓦斯の和田社長が新聞の記事で語っていることですからほぼ間違いない数字でしょう。

この額は同じく自由化される電力の5%割引の倍になりますから、月々の電気代とガス代の差はさらに大きくなります。

電力各社は自由化に際してガスをこうして販売しようとしている

作業員

前述のようにガス自由化に際して真っ先に参入しようとしているのは大手電力会社5社です。ガス市場への参入の最大の理由は、火力発電用の液化天然ガスをガス会社を凌ぐほど大量に扱っているため、料金を安くして販売できるからです。

また自由化を機にガス小売市場に参入しガス市場全体を活性化して盛り上げようとしているのです。
では各々の会社はどのような戦略でガス市場に参入しようとしているのでしょうか。それについて最大手3社の取り組みを個々に見ていきましょう。

東京電力

大手電力会社のガス取扱高はガス会社を凌ぐほど多いことに関しては前述しました。では実際にどれぐらい多いかと申しますと、東京電力だけを見ても、LNG(液化天然ガス)の輸入量は並みいるガス会社を凌いで第1位の座を占めているのです。

それ故に備蓄量も並大抵の量ではありません。この有り余る備蓄ガスを、自由化を機に家庭用の小口販売に回そうとしているのです。それだけでなく同業の日本瓦斯を始め、地方のガス会社への卸売りも企てているのです。

関西電力

関西電力の工場など大口顧客向け液化天然ガスの売上高は2014年には754億円にも達しておりシェアでは国内4位の座にあります。また液化ガスの輸入量はガス会社で国内第2位の大阪ガスのガス販売量を凌ぐほどなのです。関西電力はこの豊富なガスの備蓄量を活かして、東京電力に負けじとガスの家庭向け小口販売に力を入れ始めています。

中部電力

中部電力は東京電力、関西電力に次いで第3位の電力会社です。この会社のガス自由化に対しての戦略は電力の顧客に対して電力とガスとセットにした商品を割引料金で販売することです。

販売はガス導管を通してだけでなく、タンクローリーでの直接販売も採りいれ、二つの方法による積極販売を展開します。また現在ボイラーに重油を使っている工場などに対しては、燃料をガスに転換するよう積極的に提案していくことも戦略の一つにしています。

ガス自由化ではデメリットも考えなければいけない

2017年からのガスの小口販売自由化では、ともすれば料金値下げなどのメリットばかりに目がいきがちですが、デメリットがあることも忘れてはいけません。
今の時点で考えられるデメリットは次の二つです。

デメリット1・価格が不安定

電力会社が扱う天然ガスはすべて輸入に頼ることになります。
輸入では為替相場が価格に影響しますから、為替レートの変化で価格は上下して不安定になることが避けられません。

デメリット2・自由化の恩恵を受けられない地域もある

ガス自由化で参入する大手電力会社はたいてい都市部にあります。こうした電力会社が地方の小さな電力会社と交流があれば良いのですが、ガス業界は会社同士の連携が余り活発ではありません。そのためせっかくの自由化の恩恵も、大都市から遠く離れた地方のガスユーザーには届かないかもしれません。

まとめ

2017年から始まるガス小口販売の自由化でガスの問題がクローズアップされたため、人々の間でガスに関する話題がよく取り上げられるようになりました。

自由化でのガス代の割引の話で盛り上がるのも良いのですが、それだけに終わらず、ガス会社をはじめとして、ガスをめぐる様々な事情について考えてみる良い機会になるのではないでしょうか。