簡易ガス事業って一体何? メリットとデメリットを解説
簡易ガスとは、簡易的なガス発生設備を使い、一般ガス事業と同様70戸以上の消費者にガスを供給する公益事業です。
簡単な設備でガスを供給できるというメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。
簡易ガス事業の仕組みやメリット、デメリットについて詳しく解説します。
簡易ガス事業って?その仕組を詳しく解説!
LPガスは各家庭にボンベが設置され、ご家庭にあるガス機器への短い配管を経由し、ガスを届ける仕組みです。
しかし、各家庭にボンベを設置することが困難な団地などの場合はどうなるのでしょうか?そのようなところにプロパンガスやLPガスと呼ばれる液化石油ガスを供給する事業のことを「簡易ガス事業」と言います。
一般家庭へ供給 | 個別供給方式 |
---|---|
69戸以下のマンションなどに供給 | 小規模導管供給 |
70戸以上のマンションなどに供給 | 簡易ガス事業 |
このように、LPガスを供給する場所によって名称が変わり、70戸以上の団地やマンションに供給する場合を簡易ガス事業と呼びます。
LPガスはガスボンベにより各消費者に供給されますが、簡易ガス事業では、70戸以上の供給地点の近くにガス発生設備を備えることで供給されます。
ガス発生設備には、大型のLPガスボンベが設置されており、そこから各消費者にガス管を通してガスが供給されます。ちなみに、LPガス基地からタンクローリーでガス発生設備にガスが運搬され、LPガスボンベ内にガスを充填、供給されます。
たとえば、ある団地の設備は以下のようになっています。
- LPG貯蔵タンク30トン×1 、10トン×1
- 電気温水式ペーパーライザー3基
ベーパーライザーは、蒸気発生器です。発生させた蒸気によってタンクのガスを気化し、導管で供給する仕組みです。
このように熱によって強制的にガスを気化させる方式を「強制気化低圧供給方式」と呼びます。
これに対し、一般家庭内の自然な温度で気化させる方式を「自然気化低圧供給方式」と言います。
簡易ガスが供給されている場所は団地以外にも!
70戸ほどの小規模な団地のみならず、高層マンションのような数百戸という大規模な場所でも簡易ガス事業によってガス供給がされていることもあります。
1,000戸以上の団地でも採用しているところは多いです。日本で最大の簡易ガス事業を行っている北海道の北広島団地では、供給箇所は7,351戸にも及びます。
しかし、中には簡易ガスを廃止する団地もあります。団地の老朽化による取り壊しや、地震によるダメージが大きかった団地では、簡易ガス事業が廃止されるケースもあります。
簡易ガス事業の料金や安全面はどうなっているの?
簡易ガス事業の料金や安全面を、安心してガスを使用するために一度確認しておきましょう。
簡易ガス事業の供給義務と料金面について
簡易ガス事業では、ガス事業法に基づき供給地点にガスを供給します。また、利用者の誰にでもガスを供給する義務が課せられています。
保全や保安、料金やその他の条件についても国から厳しい規制を受けています。したがって、この団地では料金が安い、違う団地では料金が高い、というばらつきはありません。
ただ、どこでも一律同じ料金というわけではなく、多少金額の違いはあります。
簡易ガス事業の保安面について
簡易ガス事業者のガス発生設備や導管などは、経済産業省で決められている技術上の基準に適合するよう施工します。また、事業開始前には検査に合格しなければ事業を開始できません。
事業開始後でも、基準に適合するよう維持と管理が義務づけられています。簡易ガス事業の工事や維持は、ガス主任技術者の監視の下で行われます。
ガス主任技術者は団地ごとに選任され、その職務内容は保安規程により定められています。必要があると認められた場合は、経済産業局長により保安規程の変更を命じることが出来ます。
簡易ガス事業4つのメリット
簡易ガス事業は、都市ガスと同じように導管を経由してガスを供給します。したがって、メリットやデメリットも同じようなものがあります。
1.小規模な需要にすぐに対応できる
簡易ガス事業は、先述したように団地など利用場所の近くに大型ボンベで設備を作り、そこからガス管を経由し各消費者にガスを供給します。
設備を作るにしてもそれほど大規模ではなく日数もかからないので、需要があればすぐに設置対応することも可能です。
2.災害時でも迅速に復旧できる
災害が起きて設備が壊れたとしても、設備自体が大規模ではないため復旧も早いのです。
液化石油ガスもタンクローリーなどで運び、すぐに補充出来ます。各消費者までのガス管も短いので点検も早く終わり、迅速な復旧ができます。
3.二酸化炭素の排出が少ない
液化石油ガスは、ガソリンや灯油よりも二酸化炭素の発生量が少なく、環境に優しいガスです。
プロパンやブタンを主成分とし、炭素と水素だけで出来た炭化水素であるため、窒息するほどに部屋に充満しなければ人体に有害ではありません。ただし、火災には注意が必要です。
しかも、出荷時点で不純物の濃度が基準値以下になるように調節されているため、ススなどの有害物質もほとんど出ません。
ただし、不完全燃焼を起こすと害のある一酸化炭素が発生するため注意が必要です。
4.ガス設備の設置費用が安い
簡易ガス事業を行う場合、利用者の近くに小規模な設備を設置すれば良いため、それほど設備費用もかかりません。
事業所などの場合は、屋上に大型ガスボンベを設置して利用するところもあります。
簡易ガス事業の2つのデメリット
多くのメリットがある一方で、デメリットもありますのでチェックしておきましょう。
1.ガス供給設備を設置する必要がある
都市ガスと違い、ガス供給専用の設備を設置しなければなりません。
簡易ガス事業の規模にかかわらず、ガスボンベやタンクをはじめとした一連の設備が必要です。
2.ガスボンベは定期的に補充する必要がある
簡易ガス事業では、利用者の近くにガスボンベやタンクなどの供給設備を設置します。そのボンベやタンクに、タンクローリーなどで運んできた液化石油ガスを充填し、ガス管を通して利用者までガスを届けます。
そのため、ボンベやタンクへの定期的なガス補充が必要です。利用者がガスを使用すれば当然ボンベやタンクのガスは減っていきますので、定期的な補充が大切です。
ガスの全面自由化による簡易ガス事業への影響
簡易ガス事業はこれまで独占的に地域でガス供給を行えましたが、2017年4月からガス小売り全面自由化が実施されます。
これにより、登録を受けた事業者であれば自由にガス小売り事業へ参入することが出来るようになります。自由化には簡易ガス事業も含まれます。
従来の簡易ガス事業が設定しているガス料金よりも安い事業者が出てくれば、そこに乗り換える利用者も当然出てくるでしょう。
ただ、急激な料金の変動を抑えるために、当面の間は簡易ガス事業者に対して従来の規定料金メニューの提供を義務付けることになっています。
消費者の新規事業者への移行も、電力自由化に場合と同様にガスでも自由化後に急激な移行はないと考えられます。しかし、徐々にコストパフォーマンスの良いガス事業者への移行が進んでいく可能性があります。
ガス自由化によって、従来の簡易ガス事業者も大きな転換を迫られます。
また、消費者にとってはガス代をオトクにできる良い機会となるため、複数のガス事業を検討して、よりオトクなガス事業者を選択すると良いでしょう。