シェールガスとは? 日本社会にもたらす3つの経済的影響

日本は少子化ですが、世界の人口は年々増加傾向にあります。
私達が生活していくには、石油や石炭などの資源エネルギーが欠かせません。
しかし資源エネルギーの埋蔵量は限られており、これから限りある資源をどう確保していくか世界的レベルで問題になっています。
そのような状況の中でシェールガスは、新しい資源エネルギーとして注目されるようになりました。
シェールガスという言葉を聞いたことがない方も多いと思いますが、これからマスメディアなどでも耳にする機会が多くなるかもしれません。
シェールガスは、今後スタンダードなエネルギーになっていく可能性もあるのですから。
シェールガスとは

シェールガス(Shale gas)は、新型天然ガスです。また、非在来型天然ガスとも言われています。
頁岩(けつがん)という堆積岩の層から採取され、従来の砂岩に蓄積するガス田以外の泥岩から産出されるガスであることからこう呼ばれるようになったのです。
頁岩の「頁」は本のページを意味し、薄くはがれることからこの名前が付いたものです。
色は炭のように黒く、メタンが主成分となっています。
シェールガスの歴史は古く、生産が始まったのはアメリカで100年以上も前のことです。しかし、採取が困難なため採算性が悪いため、細々としか採取されず、あまり注目されることはありませんでした。
それが2000年代に入って、やっと採掘技術が確立され、それ以後は生産性も改善され一気に生産量が増えました。
そのおかげで新しいエネルギーとして、大きな注目を浴びるようになったのです。とはいえ、シェールガスの採掘には莫大な投資が必要になります。
それ故に、今後の経済性や採算性がどうなるかについては、不透明な部分が多く残っています。
採掘が軌道に乗れば大量のガスが採取できるため、採算は合うと見込まれていました。
その後、アメリカでは2013年2月、世界の1/3の生産量を占めて世界最大になっています。
シェールガスはエネルギー革命とも言われており、世界中に影響を及ぼしています。とりわけ日本に与える影響は大きく、産業界はもちろんのこと、広く一般家庭にも及んでいます。
シェールガスの埋蔵量を期待できない日本では、カナダやアメリカのシェールガス事業に参加することで日本のエネルギー政策に活用しようとしています。
⇒天然ガスとは?成分や埋蔵量、デメリットについて
シェールガスは何に使われているのか?

シェールガスは、以前からある天然ガスと同じです。
使い方も特に変わりませんが、現時点でどのような用途で使われているのか見ていきましょう。
燃料電池として活用
燃料電池は、近未来のクリーンな発電装置として注目されています。
蓄電池と違い酸素と水素を化学反応させ発電させるので、電気を永続的に利用することができます。
化学反応で発電させるのでエネルギー効率も高く、電気発生時には水が生産されるだけなので、CO2削減効果もあり温暖化対策にもつながるのです。
家庭用燃料電池も開発されていますが、ご家庭で使用すれば発電するときに発生する熱を暖房や給湯に使うことが可能になるので、毎月の電気料金を削減することができます。
発電所としても活躍が期待されている
日本では、シェールガスを利用した新しいLNG火力発電所が着々と建設されています。
現在は、沖縄県「浦火力発電2号機」、北海道小樽市「石狩湾新港発電所」、横浜市「扇島パワーステーション3号機」が稼働しています。
今後稼働される予定の発電所は以下になります。
稼働予定の発電所 | 稼働予定日時 |
---|---|
富山新港火力発電所石炭1号機 | 2018年11月稼働予定 |
石狩湾新港発電所 | 2019年2月稼働予定 |
天然ガス自動車が注目されている
シェールガス革命により天然ガス単価が下落した影響で、天然ガス自動車が海外で注目されています。
日本でも約4万台利用さていることが分かっています。
コスト高になる電気自動車開発より、燃料単価の安さから天然ガス自動車開発のほうが早急に進められそうです。
天然ガス自動車市場は先進国よりも算出国である発展途上国のほうが盛んで、パキスタンやイランなどが保有率の上位にランキングされています。
世界中のシェールガス埋蔵量はどれくらいあるの?

日本は地質年数が新しく頁岩層が少ないため、シェールガスの埋蔵は残念ながら期待されていません。
以下が、2013年6月に米国エネルギー省が発表した世界のシェールガス埋蔵量ランキングです。
シェールガス埋蔵量世界ランキング | (単位:兆立方メートル) |
---|---|
中国 | 36.1 |
アメリカ | 34.4 |
アルゼンチン | 21.9 |
メキシコ | 19.3 |
南アフリカ | 13.7 |
オーストラリア | 11.2 |
カナダ | 11.0 |
リビア | 8.2 |
上記の表でも分かるように古い堆積地層のある、ロシア、オーストラリア、中国、ポーランド、ウクライナ、アルゼンチンにはシェールガスが存在しますが、シェールガスの開発を妨げる様々な問題が起こっています。
アメリカにしか堀削技術がないことや、アルゼンチンでは設備や堀削技術の問題と労働争議の頻発、中国では水資源の不足などがあり、欧州では地下資源が国に帰属することと開発による振動や騒音など、他にも土地の荒廃や堀削によるデメリットがたくさんあります。
シェールガスは世界経済に大きな影響を与えている

2017年になろうとしている今、アメリカ経済が好調な理由として、シェールガスの影響も少なからずあるのでは、という仮説が米経済界で囁かれています。
シェールガスの生産量が2020年には世界の50%を占めると予測される米国では、エネルギー大国の地位が確固たるものになると予想されるからです。もしそれが本当なら、近い将来日本にも好景気の波が押し寄せてくるかもしれませんね。
シェールガスが環境に与える影響については疑問の声もある
シェールガスが環境に与える影響について、当初は温室効果ガスの排出量は他の資源より少ない、といわれていました。しかしその後、二酸化炭素より温室効果の高いメタンを主成分にしていることから、石油や石炭より高い温室効果がある、という研究結果も発表されています。これと合わせて、採掘による地下水の汚染や地震誘発の恐れも懸念されています。
米国シェールガスの増産で今後も天然ガスの価格は下がるのか?
いま日本ではガスの小口販売自由化で、ガス価格引下げに人々の関心が集まっています。価格値下げの理由の一つとして、LNG(液化天然ガス)を大量に備蓄している電力会社がガス市場に進出してくることが挙げられています。
LNGは、米国産シェールガスの影響もあって値下がりが続いています。値下がりのおかげで日本の電力会社は、LNGを大量に備蓄することができたのです。
それを使ってガス市場に参入するのですから、ユーザーが値下げを期待しないはずがありません。とはいえ、今後も天然ガスの値下がりが続くかどうかは不明です。なぜならシェールガス増産のため価格が下落し、一部では業者の撤退が始まっているからです。
2013年4月米シェールガス会社であるGMXリソーシズ社のシェールガス過剰生産による価格下落が原因の破綻に端を発し、米石油ガス生産大手会社チェサピーク・エナジーのシェールガスの価格下落による資産売却、バッケン油田での巨額投資の損失とシェールガスの経済性の低迷など、最近では生産過剰により価格が低迷し、中には収支が悪化して撤退する企業も出始めています。
これが続くと一転して減産に転じますから価格は再び上昇することも予想されます。これでは自由化後に値下げが期待されるガス価格も、将来的には不安定なものになる可能性もあります。
シェールガスが日本社会にもたらす2つの影響とは?

アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく、といわれるほど日本はアメリカの影響を受けやすい国と言われています。この点から考えると、シェールガス革命の影響で起こったアメリカの好景気はやがて日本にも影響が出てくるはずです。
ではアメリカが好景気になれば、具体的に日本でどのようなことが起こってくるのでしょうか。以下、経済雑誌の予想をもとに、家庭へ及ぼす2つの影響を挙げてみたいと思います。
石油化学産業の衰退
シェールガス自体が安価であっても、日本に輸入するにはタンカーや液化費用が加算されます。その結果、高い価格で購入することになります。アメリカの石油化学産業が息を吹き返しても、逆に日本は衰退していく可能性が考えられます。
それを改善するには日本企業が自ら、海外でシェールガスの開発と生産を行い、供給拡大を行いながら価格上昇を抑制することが課題となってくるでしょう。
その開発技術を海外に提供したり資金提供することで、他国との信頼関係を構築しながら安定した安いシェールガスを需要することが可能となるかもしれません。
賃金が上がる
前述のようにアメリカは今、シェールガス革命の影響もあって好景気の様です。以前から長い間、アメリカで起こることは日本に波及する事が多いと言われていますので、近々日本にも好景気の波が押し寄せてくる可能性もあります。会社の利益が増え、それに伴って労働者の賃金が上がる事も期待できそうですね。
まとめ
2040年までには、最大消費量である石炭を追い抜き天然ガスが最も多くなると予測されていますが、これからの日本としてはアメリカから輸入することでかかってくるコスト面をいかに削減するかという問題が立ちはだかっています。
安く安定したシェールガスを供給するには、まだ色々な課題がありそうですね。