電力自由化の仕組みと「裏事情」

電力自由化の仕組みとは
1999年に電気事業法が改正され、新電力として大口需要家に対して電力供給ができるようになりました。
それと併用して、送電線も自由化されたことで託送料金を支払えば消費者に送電が可能な仕組みが構築されました。
※託送料金=送配電事業者の所有する配電網から消費者に電気を送電するときに発生する料金。
そして、2016年4月から事務所や一般家庭向けの低電力の電力自由化が開始していますが、特別高圧の自由化は既に2000年3月からスタートしています。
電力自由化後の電力供給に際しての3つの仕組みとは?
2016年4月から電力自由化がスタートしましたが、今までと違い新規電力会社が参入にしてくるにあたり需要家にリスクなく新しい電力会社を検討してもらうために2013年4月に「電力システムに関する改革方針」として3つの目標が議決されています。
自由化による電力市場の開放
電力市場が開放されたとにより、新しい企業が事業者として優位に事業展開できる機会を作ることで、需要家にメリットのある電気料金プランを提供していくと同時に、様々な電気を選択できるバリエーションを持たすことで双方に最適な仕組みを構築することを目指しています。
他にも送配電部門を別の会社にすることで公平な送電ができるような仕組みを取り入れています。
電気を安定して届けるためのシステム
東日本大震災後は火力発電が主流になりましたが、資源などの面からも現在は再生可能エネルギーの必要性が再認識されて初めています。
しかし、太陽光発電や風力などの再生可能エネルギーは、電力供給が自然に左右されることがウィークポイントになります。
再生可能エネルギーを利用していく場合に、安定して電力が需要家に供給されていくような仕組みを構築していくことも行われています。
対策としては、広域機関を設置することで常に変動なく電気を活用できるような供給ルートの強化を図っています。
電気料金を値下げする仕組み
火力発電が主流になってからは、コストがかかることで電気料金が高くなりました。
電力自由化では、このことを踏まえて新規電力会社の参入により自由競争が行われ価格淘汰されていくことで、需要家が安心して安く電気を利用できるような仕組みを作ることも考えています。
日本の電力供給システム3つの部門で成り立っています
発電した電気が家庭に届くまでの流れを知っていますか?日本の電力システムを一口で言いますと、電力は、水力発電、火力発電、石炭火力など多岐に渡ってありますが、その発電所から発電した電気を、送電線で変電所に送り配電線の流れを辿り、各家庭に供給されます。
発電部門(発電所)
発電部門は、それぞれの発電所で電気を生成する部門です。
電力自由化後も安定して電気を送り届けるため、東京電力や関西電力など政府が承認した会社が発電を行うので電気の品質自体は今までと同様、安定した状態で送電されます。
- 水の流れる勢いで発電する「水力発電」
- 現在世界中で最も多く利用されている「火力発電」
- 昔は”黒いダイヤ”と呼ばれ、石炭を使った「火力発電」
- 火力発電の中では最もCO2(二酸化炭素)の排出量が小さい「LPG火力発電」
- 風邪の力で電気を作る「風力発電」
- CO2を排出しない再生可能エネルギー「地熱発電」
- 食物に由来するエネルギー資源「太陽熱発電」
- 大要の光を集めて発電する「太陽光発電」
- 核分裂によって生じるエネルギーを利用して発電する「原子力発電」
送配電部門
発電所から消費者まで、つながる送電線、配電線などの送電線ネットワークを管理する部門です。
いわば電気を家庭に届ける部門です。発電タイプが変わってくることで、送電の在り方も変わってきます。
またネットワーク全体で、電力バランス(周波数など)を調整し、停電が起きないように電気の安定供給を守るのもこの部門です。配電においては、遠く離れた発電所から作られた電気が到達して、消費されるゴール部門とも言えるでしょう。
小売り部門
消費者と直接やり取りし、料金メニューの設定や、契約手続きなどのサービスを行います。また消費者が必要とするだけの電力や、発電部門から調達するのもこの部門です。
電力小売り全面自由化で、新たに新規参入企業が増加している部門でもあります。
電力自由化スタートで新規小売業者が儲かる仕組みは?
電力自由化の電力供給源は電力卸売市場(JEPX)が握る
そもそも全ての電力会社は、電力自由化で儲かる仕組みなのでしょうか?
電力会社の一番の重要な役目としては、まずは、電力を契約者に安定して供給する事が大前提です。多くの新規参入電力会社は、自社でベース電源(原子力、火力施設、再生可能エネルギー施設)を確保しているのでしょうか?全ての契約者に自社のベース電源から電気を供給できるところは、既存の電力会社くらいでしょう。
つまり、多くの電力会社は既存電力会社等や電力卸売市場(JEPX)から電気を調達して、各契約者に対して電力を供給する仕組みになります。
更に言うと、電気料金を安く設定したくても調達コスト以下の料金では、電気を売る事は赤字になってしまう為に既存電力会社と比較して大幅な値下げを見込むことは難しいのが現状です。
あくまでも、新規参入を表明している大手通信業者、大手ガス会社、石油会社等は新規顧客の発掘コストや既存顧客を失わない為に電力自由化市場に参入しているのです。このような新規参入組は、電力自由化で契約した顧客に安い電気料金プランを促し、自社サービスを附帯させて利益を上げるビジネスモデルであると考えられます。
例えば携帯電話などは、それのみの販売だと簡単に安い会社に乗り換えされやすいですが、電力とコラボさせることで通信費と電気代が共に安くなるので、消費者が離れていきづらい点がメリットになってきます。
大手ガス会社は来年のガス自由化に向けて積極的な動き
特に来年は、電力自由化に続きガス自由化になる事からガス会社にとっては、今から既存顧客の囲い込みや新規顧客を発掘する必要性に直面しています。つまり、新規参入業者にとっては電力自由化とは、既存ビジネスを維持する為に新規顧客開拓と既存顧客を維持する為の一種の集客ツールに過ぎず、電気を売ること自体で儲ける仕組みではありません。
電力自由化でスイッチ(切替え)する仕組みと方法は?
電力自由化でスイッチング(切替え)を検討している一般消費者側の立場から考えると、どの電力会社が良いのかを判断するのは、更に複雑になっていくでしょう。
- 「ガス料金が安くなります」
- 「ガソリンが安くなります」
- 「携帯料金が安くなります」
- 「ポイント還元します」
- 「航空券が安くなります」
- 「マイルがたまります」
あなたは、このような各電力会社の広告宣伝を見て、どのように感じますか?
電気料金が安くなり、各社の特典を比較するたけでは答えは出ないでしょう。実は、電力自由化に料金プランがでている企業が16社程度しかなく、今後100社以上もこのようなプランを出した場合には、最終的にはプランを比較しなくてはならなくなります。電力自由化の料金プランが複雑化してきたらどう選べばよいのでしょうか?
わからない今は、スイッチ(切替え)を控える人もかなり増えるのではないでしょうか。
電気料金のシミュレーション精度が鍵
このような複雑化した状況では、電気料金を比較やスイッチングする電力自由化料金比較サイトが乱立する可能性が高く、各社が提供する電料料金のシミュレーション精度も重要になってきます。ここでポイントなのは、一般消費者にとって最適なプランを電気料金シミュレーションにより見つけ出すことができる仕組みを持つ電力自由化料金比較サイトの登場が必要と言えることです。
電力自由化で失敗したドイツ
ドイツでは、電気料金プランを比較できるスイッチングサイトと、ある大手電力会社が組み、消費者にとって最適なプランを紹介するのではなく、スイッチングサイトに一番報酬が落ちる1社のプランだけを紹介したことにより大問題になった過去があります。結果として、ドイツでは電力自由化に対して消費者の信頼を完全に失ってしまいました。当然ですが消費者の電力使用傾向と使用量は複雑であり、1社だけの最適なプランとして紹介される事はまず考えられません。
一番重要なのは、各社のプランがある程度発表されたタイミングで、多くの可能性の中でプランを比較する事が求められることです。電力自由化のCMや広告、ニュースの過熱により、すぐにスイッチ(切替)する事は現時点ではお勧め出来ません。
⇒電力自由化ドイツの事情は?
電力自由化で損する人も!訪問販売や電話勧誘には注意!
また注意ポイントとして、既存大手電力会社は現在の契約プランの料金体系を維持する必要があるので、電力自由化になったからといって既存料金プランを変更しない限り、料金が変わる事はありません。これは、電力自由化により4月から全ての料金プランと料金が変更された事により、現状のプランよりも損をする人が出る可能性があり、市場の混乱を招く恐れがあるからです。
まずは、スイッチ(切替え)前には正しい手順で比較してから最適プランを選ぶように心がけましょう。
特に訪問販売や勧誘の電話により電気料金プランをスイッチ(切替え)する事は絶対にやめるようにしましょう。
東京電力の戦略の仕組みは代理店制度を活用
実際に東京電力は代理店制度を取り、各代理店との独自サービスを融合させて顧客の集客と維持に努めています。
株式会社カナジュウ・コーポレーション,株式会社川島プロパン,河原実業株式会社,北日本ガス株式会社,新日本瓦斯株式会社,ソネット株式会社,ソフトバンク株式会社,TOKAI グループ,株式会社TOKAI ,株式会社 TOKAI コミュニケーションズ,株式会社TOKAI ケーブルネットワーク,エネチェンジ株式会社,東海ガス株式会社,東彩ガス株式会社,日本瓦斯株式会社,東日本ガス株式会社,株式会社ビックカメラ,株式会社USEN,レモンガス株式会社
東京電力は、代理店制度という仕組みを取り、各代理店との独自サービスを融合させて顧客の集客や維持に努めていると考えていますが、実際のプランを見ると他の競合プランと価格面では見劣りしてしまうのが現状です。
本当に、この状況で顧客を維持できるのか?料金プランから1つの戦略が読み取れます。実は、東京電力の新料金プランは、あるターゲット層に獲得に絞られている可能性が大きいのです。
誰もが欲しがるプレミアム顧客
ほとんどの人が従量電灯B,Cを契約していますが、新料金プランと既存料金プランを比較した時に月間使用量の平均が300kWh未満の場合は、既存の料金プランと変わらないことが読み取れます。契約内容によっては、新プランに変えないほうが良いプランも混在します。
つまり、東京電力にとって、300kw未満の契約層は他社にスイッチ(切替え)されても仕方ないと考えているのでしょうか?
言い方を変えると、値下げをしてまでも絶対に維持したいプレミアム顧客ではない可能性があります。
既存電力会社は、毎月の電気料金が1万円以上支払うようなプレミアム顧客を維持する戦略だろうと予想されます。
電力自由化の仕組みは実は赤字顧客の切り離し?!
電力会社の料金プランは電気料金を使えば使うほど、電気料金の基本料金が上昇するという業界特有の料金モデルになっており、他の業界では使うだけ安くなる料金モデルと全く異なります。この料金モデルから考察すると、既存電力会社にとって電気を多く使う人は高利益率の「金の成る木」であり、絶対に他社にスイッチ(切替え)されたくないはずです。
各契約者にかかる営業コストはほぼ同じである事から、そもそも電気使用量が少ない(一人暮らしや太陽光発電設置者等)契約者から生まれる利益はほとんどないか、赤字で電気を供給している可能性があります。
そのような背景から考えると、電気を多く使う契約者には引き続き契約を維持するプレミアム料金プランを準備する一方で、電気を使わない人にはプラン変更をあえて準備せずに、どこかの小売業者に切り替わってもらう事で会社全体の利益率や収益性を上げる事が狙いかもしれません。
電力自由化での注意点
今後、電力自由化により既存電力会社と新規小売業者の価格競争がより熾烈になると予想されますが、全ての小売業者がこの制度をうまく利用して自社サービスを発展させることができると考えています。心配なのは、消費者の方です。
消費者が目先の電気料金だけでプランを選ぶのは絶対に危険です。
各小売業者は、各消費者から別の形で利益を取る仕組みを考えています。それが消費者にとって本当にメリットのあるものであるか判断することが重要です。
電力自由化で得をするための方法は?
2016年4月から始まった電力自由化ですが、テレビなどでも大々的に取り上げられただけあり、様々な思惑が蠢いていますね。下手に乗り換えると、これまでよりも高い電気代を支払うケースもありますが、それはあくまでも下手に乗り換えた場合です。
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