ガス小売自由化のガイドラインを決める「ガスシステム改革小委員会」とは?

ガスシステム改革小委員会の目的は?
2017年4月から実施予定の都市ガス全面自由化に関して、一足早く自由化された電力市場での競争が巷で話題になっているようですが、都市ガス市場は、保安規制徹底など技術面で、LPGとの競争、オール電化との競争、石油との競争など、市場構造の面で電力とは異なる点の多いのが現状です。
ガスシステム改革小委員会は都市ガスの市場システム改革に関して自由化後の市場競争について検討し、都市ガス全面自由化のための制度的な枠組みを固めていきます。
これがガスシステム改革小委員会での議論のテ-マだ
ガスシステム改革小委員会はガスの適正利用を目的としたガス全面自由化をいかに成功に導くかの前提のもとに、ガス界の権威が一堂に会して議論を重ねていくものです。
ここで扱われるのテーマについてその一部をご紹介すると次のようになります。
・ガスシステム改革の背景
・都市ガス政策の経緯
・日本のガス供給システムの現状
・ガス小売事業について
・一般ガス導管事業者・特定ガス導管事業者について
・・託送供給制度
・・同時同量制度
・・二重導管規制
・・一般ガス導管事業者、特定ガス導管事業者の供給計画
・・導管事業者の接続努力義務
・・最終保障供給
・ガス製造事業者
・・LNG基地の第三者利用
・・ガス製造事業者の情報公開>
・その他の問題
・・ガス導管事業の整備促進措置
・・需要家情報システム・卸料金などの取引監視・実施時期について
・ガス事業法の一部改正
・詳細設計の論点
・・託送供給制度
・・同時同量制度
・・二重導管規制
・自由化後の電力、ガス市場
・・総合エネルギー企業・自由化市場での競争戦略
・・料金の将来展望(真の自由化、理論と改革の峡間)
ガスシステム改革小委員会のメンバー構成はこうなっている
(委員長)
山内弘隆
一橋大学大学院商学研究科教授、財務省財政制度審議会委員、ほか
(委員)
引頭麻実 大和総研常務執行役員、柏木孝夫 東京工業大学特命教授 ほか
(オブザーバー)
蟹沢俊行 一般社団法人日本瓦斯協会副会長・専務理事
松村知勝 一般社団法人日本コミュニティーガス協会専務理事 ほか
ガスシステム改革小委員会(第1回)の各議員の意見
ここでは何十回にも及ぶ委員会の中で、記念すべき第1回の会議での討論の内容を抜粋してご紹介します。
ガスの将来性について
意見:その1
東日本大震災以降の電力受給問題における原発代替としての天然ガス発電の重要性を考慮すると、天然ガス
の役割は極めて大きいものがあります。
ただ、重要なのは価格です。天然ガスは石油、石炭に比べて、日本の行動次第では値下げ方向に動かすことができる可能性が強いという観点で将来性があり、それを実現することにより天然ガスシフトが可能になると考えられます。
また、天然ガスシフトの内容を明確化することが必要です。第一は、ベース電源としてのコンバインドサイクル(注1)の活用で、第2は、産業、民生用まで含め、現状3%のコジェネレーション(注2)を15%まで引き上げあることを考えます。
(注1)コンバインドサイクルとは
ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式のことで 最初に圧縮空気の中で燃料を燃やしてガスを発生させ、その圧力でガスタービンを回して発電を行います。 ガスタービンを回し終えた排ガスはまだ十分な余熱があるため、この余熱を使って水を沸騰させ、蒸気タービンによる発電を行います。
(注2)コジェネレーションとは
コジェネレーション (cogeneration) これは、内燃機関、外燃機関等の排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高める、新しいエネルギー供給システムのひとつです。
意見:その2
天然ガスの将来性については二つのポイントがあります。
ノウハウを経済成長モデルに繋げることで、天然ガスシフトが極めて現実味のある方向性となります。
また、発電の観点から考えますと、天然ガスはコンバインドサイクル発電や燃料電池など、多様な利用技術に対応できるエネルギーであり、今後分散型電源へシフトする中で、極めて重要な地位を占めると考えられます。
意見:その3
ガスシステムの改革の中で需要家の選択肢確保は重要ですが、どの選択をしても需要家便益が増大しないようでは意味がありません。
川上、川中の制度的な議論のみならず、川下のガス機器等までも含めて、イノベーションを起こしていく必要があります。ガス事業者も含めたエネルギー事業者の大きなビジネスモデルチェンジが、ガス事業の将来性に関わってきます。
⇒ガス自由化での安全性は?安定供給は大丈夫?
意見:その4
天然ガスはCO2排出が少なく、今後伸びていことは間違いないと考えます。ただし、天然ガス需要を無理に拡大するのではなく、適材適所での利用拡大が重要です。
供給サイドでの自由化により、エネルギー企業がガスや電気、石油を最適に組み合わせ工夫して売り込んでいくようにするとともに、需要化も最適な組み合わせで買えるようにすることが重要です。
意見:その5
LNGの価値は石油連動のため相当高いようです。特に、ガス事業者は電気事業者に比べ企業体力、規模等は千差万別であり、調達においてLNGの価格政策をよく見極め、事業者間の競争が公平に担保されるようなイコールフィッテング(注3)を踏まえた上で、ガス事業の将来性を考えることが必要です。
(注3)イコールフィッテングとは
商品やサービスを販売している双方が対等の立場で競争が行えるよう、基盤や条件を同じにすることを言います。
社会福祉法人と営利法人などとのイコールフッティングに関しては、内閣府の規制改革会議でも、「介護・保育分野においては経営主体間のイコールフッティングを確立すべき」と提言されています。
意見:その6
需要家が選べる状況を作ることは非常に重要です。しかし、消費者は既存のシステムの中で長年暮らしており、色々なエネルギーを組み合わせて販売するということは、消費者の混乱を招きかねないことから、明快な情報提供をする必要があります。
ガスシステム改革の目的について
意見:その1
改革においては需要家が選べる状態を作り出すことが重要です。その際、電力とガスの間、ガスとLPガスの間、ガス会社同士の間でも需要化が選べる条項をつくる必要があります。そのために、インフラのボトルネック(注4)の問題や、料金システムに不透明な点があれば解決する必要があります。
(注4)ボトルネックとは
あるプロセスの時間や品質などの管理指標を左右する工程。 1つの要因で全体の結果や性能を左右する、最大の要因を指す。 例えば、ITや通信業界では、処理速度や通信速度を阻害する要因や原因箇所を指して用いる。 転じて、事業を拡大する上で最も経営資源の確保が難しい箇所を指す場合もある。
意見:その2
事業局案の4点に同意します。今般のエネルギー基本計画では、電源構成などの定量的数値を出すことが難しい中で、目標は明確にする必要があり、例えば「総合エネルギー企業化を目指すための産業性格はどうあるべきか」を明確に示していくべきです。
そうなると、事務局案(3)のガス供給インフラの整備については、単にガス導管をつなぐのみならず、ガス&ワイヤー&ファイバーなどの複合型インフラとしてのあり方を、総合エネルギー企業を目指す上で議論する必要があります。
意見:その3
最終的に、このシステム改革により日本全体としてのエネルギー効率が上がったのかを検討する必要があります。ガスシステム改革も、大きな総合エネルギー化の一環だと思っているため、全体最適が目的に中にあると良いでしょう。
また、事務局案(4)の消費者収益の保護と安全確保について、システム改革をした場合に保安に影響を与えないとは言い切れず、保安の確保は特に重要な目的の一つと言えます。
意見:その4
事業局案(4)の消費者利益の保護と安全確保について、小口部門を自由化し事業者間の競争が激しくなった場合、はたして安全が確保されるか、また新規参入者が災害等にすぐ対応できるのかについて不安を感じます。そうした部分を整備した上での改革が必要です。
「参考資料」経済産業省・総合資源エネルギー調査会 基{政策分科会 ガスシステム改革小委員会(第1回)議事要旨。
以上がガスシステム改革小委員会の第1回における各委員からの意見の抜粋です。いかがでしょうか?これは平成25年の11月に行われたものですが、上でご紹介した選び抜かれたメンバーによるこうした議論を何十回も度重ねて行ったうえで、ガス全面自由化の方針が打ち出されているのです。
これだけでもガス全面自由化がいかに重要なことであるかがよく分かります。それを知るためにも、ここでの議論の内容を知ることは消費者にとっても有意義なのことなのではないでしょうか。
まとめ
いよいよ2017年4月から都市ガスの全面自由化が始まります。消費者にとっては料金の値下げやサービス向上が期待されますから待ち遠しい限りです。
しかしこの自由化の前には、ガス界の選りすぐられた専門家で構成された「ガスシステム改革小委員会」の会議が何十回も重ねられた上でのスタートであることを忘れてはいけません。