まだ残されている新電力の課題とは?電力自由化に必要なこと
電力自由化で望まれる電力会社同士の公正な競争ですが、これを実現するために新電力が抱える課題がいくつも残されてます。電力自由化の行方を左右するほど重要な新電力の課題を解説します。
収益性の柱である電力を安価で確保できるか
新電力は発電所や送配電網といった大規模な設備を自前で持たないことで、大手電力会社よりも安価な電気を小売することができると言われています。そのかわり新電力が抱えるコストの大半は電力購入費用となり、いかに安く安定した量の電力を調達できるかが競争のしどころです。
発電所を持たない新電力はベース供給力が足りない
大規模発電所のような設備を保有しないことで設備投資や保守にかかるコストの分、大手電力会社よりも安価に電気を小売できるのが新電力の強みと言いました。発電所を持たない新電力は卸電力取引所や全国の自治体・個人が保有する発電所から電気を仕入れるわけですが、ここに問題があります。
誰でも安定的に電力を調達できる場所を育てる必要がある
新電力が直面している問題は卸電力取引所での電力の取引量が少ないこと、そして多くの自治体が未だに売電先を競争入札にせず大手電力会社と随意契約を結んでいることです。新電力が安定的に電気を調達できる手段が少ないことでの価格変動リスクを避けて、電力小売事業への新規参入がストップしてしまう恐れがあります。電力の先物市場の活性化が電力小売市場への参加者を増やし、多様性と競争力を育むことに繋がるでしょう。
制度が将来的に不確かである
電気を使う国民が負担する再エネ割賦金を活用して、再生エネルギーの電力を安価で調達することができたのもつかの間でした。2015年にFIT買取制度の変更が決定され、FIT電源の仕入れ単価が上昇することになったためです。新電力の収益や経営にも関わる制度は電力自由化が始まった後も適時調整が入ると見られ、どの電力事業者にとっても今後の見通しが立ちにくい状況にあります。
発送電分離の仕組みは本当に機能するか
現在の大手電気事業者が持つ圧倒的な強みは発電・送配電・小売の3つの機能が一体化していることです。このままでは新電力との公正な競争は起こりえないため、大手電力会社の3つの機能を分割する発送電分離が実施されることとなりました。送配電会社は大手電気事業者・新電力を問わず設備を利用させる中立性に、急増すると予想される新しい発電事業者との連携ノウハウも構築しなければなりません。
新電力が活躍できないと、やがては自由化以前の状態に
変化し続ける制度に対応しきれないまま収益性を確保できずにいれば、小さい新電力から事業撤退という流れが生まれてしまうことでしょう。それはやがて電力会社の多様性を失わせ、競争力が働かない状態にたどり着きます。大手電力会社による独占市場に、いくつかの大手新電力だけが残るということですね。電力自由化以前の10社独占状態とそう変わりません。
電力自由化が本当に成功するためには、上に記した新電力の課題をクリアできるかが鍵となります。
新電力の今後はどうなる?
今回紹介したように、電力自由化や新電力には多くの問題が残されています。しかしせっかくの電力自由化。既存電力会社との契約を維持するよりも、思い切って新電力会社に乗り換えるのも1つの手です。まずはお試しで電力会社を切り替えてみようという方は、違約金が0円の企業を選ぶべきでしょう。