LPガス販売指針とは? 消費者を守るプロパンガスの販売ルールを知ろう

LPガス販売指針とは?

LPガス販売指針とは、LPガス(プロパンガス)の事業者が消費者に対して守るべき取引のルールやガス料金の内容を分かりやすくし、LPガス事業者と消費者との関係が適正であるように導く自主的な取り決めのことで、一般社団法人全国LPガス協会によって定められています。
一般社団法人全国LPガス協会は、全国のLPガス事業者に会員をもつ団体で、LPガスの安全確保や、事業の発展、LPガス事業の信頼性の向上に取り組んでいます。
今回は、この全国ガス協会から定められている「LPガス販売指針」についてご説明いたしますね。
LPガス販売指針はなぜ作られたの?
LPガス販売指針が作られたのは、「消費者のLPガス事業に対する不信感を解消する」ことと、「消費者とLPガス事業者との間に起こるトラブルをなくす」ことが目的です。
LPガス販売指針が作られる以前では、LPガス事業の在り方に対し明確なルールが無く、消費者がLPガスの料金内訳がよく分からず、不当な金額を請求されているのでは、と疑問視されることや、LPガス事業者を他社に乗り換える際に、契約中の業者が配管した設備の所有権を主張して乗り換えさせないようにする、などのトラブルが少なくありませんでした。
こうした背景をもとに、平成11年に公正取引委員会から「不透明な料金体系」と、「無償配管を行うこと」を改めるようLPガス業界へ指導があり、LPガス販売指針が作られることになりました。
LPガス販売指針の内容は、5つの章(5項目)から成り立っています。
LPガス事業者が守るべき5つの原則
まず最初の項目(第1章)では、LPガス事業がきちんと適正に行われるためには、次の5つの原則を守るべきとされています。(分かりやすく言葉を書き換えていますが、意味は元と同じです)
- 消費者が自由に「利用するエネルギー」を選ぶことを尊重すること
- 契約の内容や締結された事柄が分かりやすく、明示されていること
- 継続的・安定的にガスを供給できる体制ができていること
- 安全性を保つ努力を怠らないこと
- 料金を決める方法が合理的で、消費者に理解されていること
これらをきちんと守っており、LPガス販売指針がホームページ上に掲載しているLPガス事業者は「良識のある」事業者と言えますが、逆に言えばこれら5つの原則を守っていない事業者はご自分の目でしっかりと見極める必要がある業者という事が言えるかもしれません。
従いまして、この原則をきちんと守っているかを確認することが、業者の質を見極める1つの方法と言えます。
第1章では、この原則のほかに、関係法令の遵守や、消費者からの苦情や相談への対応にも力を入れる旨が記載されています。
LPガス事業者による契約や申込みについてのルール
第2章では、LPガス事業者による勧誘や契約締結時、申込みについてのルールが書かれています。
勧誘・申込みの適正化
勧誘・申込みに関する適正化の項目では、訪問販売、通信販売、電話販売におけるそれぞれの場合での勧誘や申込みルールが定められています。
訪問販売では以下の説明事項を守るようにとされています。
- LPガスの料金、その算出方法、ガス料金以外に必要な費用と支払時期
- 保安のための設備の説明と、その費用負担について
- 契約期間、および途中で解約する場合の条件
- 保安業務、その他のサービスに関する説明
- 保安業務のうち、どこまでが事業者の責任か(責任分担)
- LPガスに関連する設備の所有関係(ガス配管のここまでは事業者のもの、など)
- クーリングオフ制度
これ以外の項目でも、勧誘の前に事業者名、勧誘目的である旨を明示することなどのルールが挙げられています。
勧誘時の注意事項・禁止事項等
ここでは、訪問販売の際の注意事項や、独占禁止法に接触するような取引を例に挙げ禁止しています。
次に、一例をご紹介いたします。
事業者名と勧誘目的であることをきちんと伝える
例えば、「LPガスの無料診断です」など、本来の目的とは違うことを言って勧誘すること、もしくは勧誘する目的を明らかにせず「料金が適正か調べているだけです」などと伝えることは不適切です。
事実と異なることを伝える、重要なことを伝えないのは禁止
本来ならば、現在契約している事業者との契約を変えるのに違約金が発生するのにも関わらず、それを伝えずに契約をすすめたり、もしくは「費用はかからない」と伝えたりすることは禁止されています。
独占禁止法の不公正な取引方法
第2章では、次のことが禁止されています。
- 他社と比較して不当に安い料金で消費者と契約し、他社の事業を妨害すること
- 実際には利益の出ないような料金設定で契約すること
- 料金やサービス面など、いかにも他社よりすぐれていると消費者に「誤認」をさせ、契約をすること
- 顧客に対し不当な利益(賄賂など)によって契約を促すこと
契約の締結
ここでは、契約締結時には書面を交付することを定め禁止事項として、次のことを定めています。
- 契約する際に消費者に対して伝えるべきことを伝えない
- うその情報を伝える
- 押し売りをする(帰ってほしいと伝えられても居座る)
- 監禁行為
- 違約金を不当に高くすること
消費配管・ガス機器等貸付のトラブル対策
第3章ではこのトラブルへの対策として、LPガス販売指針は定められたという経緯があり、配管を貸し出す際のルール、無償配管の禁止や、もし無償で配管された場合、配管の所有権はどこにあるか、費用はどうなるかなどのルールが記載されています。
冒頭でお話ししたように、LPガス販売指針が定められていない頃、無償配管の慣行(消費者に配管工事費は無料でやります、などと伝え無償で消費配管を工事すること)によって、消費者が次の事業者へと乗り換えたい時に、契約中の事業者が「この配管はうちが工事したもので、所有権はうちにあるので他社には使わせません。」などと言って契約を解除させない、というトラブルが多くありました。
消費配管やガス機器の所有権がLPガス事業者にある場合、その旨と利用料の有無、書面にきちんと明示しておくことなどの注意事項が書かれています。
消費配管やガス機器における解約時の取り扱いについて、以下のように記載されています。
無償配管が行われたことが明確であるもの
無償配管は禁止されており、所有権は消費者にあるのでガス事業者からの利用料金は請求できません。
無償配管が行われたが不明瞭であるもの
無償配管は禁止されており、原則、所有権は消費者にあるのでガス事業者からの利用料金は請求できません。
消費配管が販売事業者のものである(貸付配管である)と明確なもの
消費者との間できちんと合意されている契約に関しては、貸付費用の請求が可能です。
消費者が契約について理解していない、書面になっていないなどの場合は原則として請求できません。
LPガス販売事業者の変更について
第4章では、トラブルの原因になりがちな「LPガス販売事業者の変更」について書かれています。
解約の通知
解約は、消費者の意思によって自由に行われるもので公正でない勧誘の影響を受けて行われるものではないこと、消費者から次に新しく契約する事業者へ解約を委任された場合は、委任状に則って正当に行われることなどが記載されています。
LPガス料金などの精算
未払いのLPガス料金や、貸し付けていた配管の使用料金は、決められた方法によって行われます。
きちんと書面で貸付料金や、精算時の計算方法が明記されていなければ料金の請求はできません。
供給設備などの撤去
ガスの配管など、供給設備の撤去は、基本的には所有者である現LPガス販売事業者によって行われます。
その場合、「1週間ルール」というものが定められており、撤去が難しい場合や、正当な理由が無い場合には、契約解除の申し出が消費者からあった1週間以内に供給設備を撤去すること、とされています。(延長が認められる正当な事由についても、詳しく記載してあります)
LPガス料金が明瞭であること
第5章では、料金の情報を提供するだけではなく、その算定方法についての十分な説明を怠らないこと、契約締結時には料金、支払方法や時期などの重要な情報について、書面で消費者へと渡すことが義務付けられています。
今までLPガスの契約時に消費者が困ってしまうことに、「料金の内訳がどうなっているのかが分からない」という内容が多くありました。
また、料金の算定方法についても、何を基準にして料金設定がされているかを理解して説明できなくてはいけないとされています。
⇒プロパンガス料金消費者協会が提示する適正料金とは?
エネルギー事業も透明化が必要

5章にわたりLPガス販売指針を紹介してきました。
エネルギー事業のなかでも、LPガス料金は今まで「なぜ、その料金なのか」や、「そもそも料金の内訳がどうなっているのか」などが不明瞭なケースが多くありました。
そうした体制は消費者に不安を与え、エネルギー事業を行っている会社への不信感へと繋がりますので、今回ご紹介したLPガス販売指針のように、ルールや取引の在り方がきちんと定められていく必要があります。
国内の良識あるLPガス事業者はこの「LPガス販売指針」に則って事業を展開していますが、料金の透明化などに関しては、料金の内訳が分かりにくい業者も多く、まだすべての事業者が確実に守っているとは言えない状況でもあります。
今後、電力自由化に追随して「都市ガス」の自由化が進んでいく中で、さらにエネルギー事業への消費者の関心は高まり、その内容の透明さが問われていくことが予想されますが、消費者の方々もエネルギー事業全体を見て、正しい知識を持って料金や消費者との関係性がきちんと適切であるかを見極め、契約先を選んでいくことが大切と言えますね。