東京電力が50億をかけて都市ガス製造?電力自由化との関係は?

今年の6月、東京電力ホールディングスが50億円もの資金を投じて千葉にガス製造設備を投資したことが発表されました。東京ガスならともかく、電力を一般家庭に消費している東京電力が、なぜガスの取り扱いを始めたのか?
その陰には今年の4月に始まった電力自由化に、来年開始されるガス自由化、そして東京ガスの存在が大きく関係しています……
今話題の電力自由化とは?
テレビや新聞などで大きく取り上げられたため、ほとんどの方はご存知でしょうが、今年の4月から電力自由化が開始されました。電力自由化が始まったことで、学校や病院などの法人だけでなく、私たち一般家庭も自由に契約する電力会社を選ぶことができるようになりました。
これにより東京電力や関西電力等の既存の電力会社だけでなく、携帯キャリアのauやソフトバンク、他にも楽天や東急グループ等、これまでにない新電力会社が台頭してきました!私たち一般家庭の方には朗報ですが、電力自由化に参戦した新電力会社の多くが、東京電力等の既存電力会社よりも安く電気を提供することができます。また電気料金自体はほとんど変わらないものでも、お得なポイントやサービスを用意している新電力も多いため、やはり新電力の方がお得になっています。
電力自由化の影響で東京電力は絶不調!?
これまで【東京電力エリア】に住んでいた方は、電力会社を切り替えるという選択肢がありませんでした。しかし電力自由化が行われた今なら、東京電力よりもお得な電力会社に乗り換えることができます。つまりこの電力自由の影響で、東京電力契約者数は確実に減少しています。
また東京電力エリア内の首都圏は、日本国内でも最大級の新電力会社が参戦しただけでなく、関西電力や中部電力等の既存電力会社までもが東京電力からシェアを奪おうと進出してきました!
と、日本で最も電力会社による争いが激しい首都圏ですが、実は東京電力から最も顧客を奪っているのは、意外な企業でした……
東京電力不振の影には……?
携帯キャリア、ガソリン会社、通信会社と数多くの企業が電気を売るようになりました。しかしその中でも、最も積極的に電力自由化に参入したのは、他でもないガス会社にになります。なんと、ガス会社のほとんどがガスと電気のセット割を用意しました。つまりガスと電気をまとめて支払うだけで、電気料金を割り引いてくれるというわけです。
電気料金を安くしたい方だけでなく、単純にガスと電気の支払い先を統一したいという方にとっても、このプランはうれしいはずです。その証拠に、東京ガスは2016年5月時点で、既に30万件以上の顧客を獲得しています。
東京電力と東京ガスのプラン……お得なのは!?
このように東京ガスのプランは好評なようですが、実際に東京電力のプランと比較すると、どちらがお得なのでしょうか?
おそらくほとんどの人が契約しているであろう従量電灯Bプランと、東京ガスが一般家庭向けに用意したずっとも電気1プランを比較してみましょう。どちらのプランも基本料金は同じですので、重要なのは使用量に応じて電気代が変動する電力量料金の方になります。
●東京電力(従量電灯B)の電力量料金表
最初の120kWhまでの料金(1kWh) | 19円52銭 |
---|---|
120kWhをこえ 300kWhまでの料金(1kWh) | 26円00銭 |
300kWhを超える料金(1kWh) | 30円02銭 |
●東京ガス (ずっとも電気1)の電力量料金表
最初の140kWhまでの料金(1kWh) | 23円24銭 |
---|---|
140kWhをこえ 350kWhまでの料金(1kWh) | 23円45銭 |
350kWhを超える料金(1kWh) | 25円93銭 |
東京ガスの強みは豪華な特典……?
ざっとプランを比較したところ、東京ガスのプランは東京電力よりも、電気を大量に使う家庭ほどお得になります。東京電力は今年の6月に値上げしたので、この差はより顕著なものになったでしょう。逆にいえば電気をほとんど使わない家庭、例えばひとり暮らしの世帯なら東京電力の方がお得です。
とはいえ東京ガスはガスと電気のセット割を用意しています。ガス会社ならではのこの割引方法、なんとガスと電気をセットで契約するだけで、月に270円もお得になります。さらに東京ガス提携プロバイダと契約していれば、プロバイダ毎に各種料金が割り引かれます。
東京電力も支払った電気料金に応じてTポイントか、Pontaポイントが付与されるというサービスを実施しましたが、これはあくまでも新プラン限定です。また東京ガスでも電気料金に応じて独自のポイントが付与されます。これに関しては東京ガス独自のポイントではありますが、お得さでは東京ガスの方が上です。その他うれしい特典などもありますので、特典やサービスに関しては東京ガスの方が優勢といえるでしょう。
東京電力VS新電力会社……勝つのは?
しかし東京ガスのプランはあくまでも電気を大量に使う家庭向けのため、ひとり暮らしの方なら新電力に乗り換える必要がないかもしれません。ですが、HTBエナジーやエルピオでんき、LOOPなど、ひとり暮らしでも電気料金を節約できる新電力会社は何社もあります。電力自由化が始まってから、一般家庭の切替比率はまだ1%程度と、非常に少ないです。とはいえ、これから電力自由化という言葉が浸透していけば、電力会社の乗り換えも頻繁に行われるようになると思われます。
このままでは東京電力が、東京ガスやその他新電力会社にシェアを奪われるかもしれません。しかし東京電力もこのまま手をこまねいているというわけではなく、東京ガスに奪取された顧客を取り戻す手立てを用意していました!それこそが、来年行われるガス自由化です!
電力自由化とガス自由化の関係性
今年の4月から始まったのが電力自由化です。続いて来年には都市ガス自由化というものが開始されます。ガスはプロパンガスと都市ガスの2種類に分かれています。基本的にプロパンガスの方が料金が高く、ガス代が契約する事業者毎に大きく変動します。
なぜここまで料金体系が異なるのか、それはプロパンガスの方は既に自由化を済ませているからです。つまり今電力自由化が行われたことで、新電力会社と東京電力の電気代に差異があるのと同じ理由です。そのため2017年に都市ガス自由化が始まれば、電力自由化と同じように様々な企業がガスを取り扱うようになります。そして実は、ある企業が既に都市ガス自由化に向けて動き出しています。それが東京電力であり冒頭で触れた、東京電力が50億もかけてガスを製造する理由です。
東京電力逆転のカギはガス自由化
東京電力がガスを取り扱うようになればどうなるのか?
おそらく製造したガスを一般家庭向けに販売するはずです。それも電気とガスのセット割引を用意するはずです。つまり東京ガスのガスと電気のセット割に対抗する腹積もりでしょう。
東京電力のガスって大丈夫?
仮に東京電力がガスを扱うにしても、やはり消費者として気になるのは値段と安全性です。
値段に関しては料金体系等が一切不明のため断言できませんが、東京ガスに奪われた顧客を取り戻すために、消費者の心を鷲掴みにするような施策を用意してくることでしょう。
そうなると気になるのは安全面ですが、この点も問題はないでしょう。なぜなら東京電力は既に、工場などに向けてガスを販売しているという確かな実績があるからです。電気もガスも安全に使いたいものです。そのため、東京電力のような確かな供給実績を持つ企業から買いたいという方は、東京電力の電気とガスのセットが最適かもしれません。
電力自由化の波に乗った方が良いの?
ただせっかく始まった電力自由化、東京電力以外にも様々な電力会社と契約できるのですから、思い切って電力会社を切り替えてみるのも1つの手です。違約金が膨大にかかる企業なら契約を躊躇われてしまうかもしれませんが、東京ガス等のように違約金が0円の企業も少なくありません。自分にあった電力会社を見つけて、電気代をお得にしたいですね。