電気代の支払いが後ろ倒しになる?!電力自由化の課題とは?

電気代の支払いが後ろ倒しになる?
東京電力の子会社である東京電力パワーグリッド株式会社は6月1日の発表で、託送業務を委託されている電力小売事業者に送る月間の電力使用量データのうち、約2.7万件分のデータの通知が遅れていることを公表しました。
東京電力パワーグリッドが電力使用量データを送らなければいけない対象は約60.8万件ですので、そのうち約4%以上が該当するという事になります。
月間の電力使用量データの通知が遅れると電気料金の計算が出来なくなるため、現在は本来の支払日よりも後ろ倒しになっています。
また、電力使用量データだけではなく、太陽光発電などで客先から発電された電力量の通知も、通知対象である2.2万件のうち49%のデータ算定が遅れています。
これにより、小売電気事業者が実際に月間で使用した電力量と、当初使うと計画されていた電力量との差(インバランス)の確定、および料金の計算もできないという不具合も同時に発生しています。
遅延の解消目標としては6月中を目指しており、東京電力パワーグリッドは、データ通知遅延解消に向け着々と動いている状況です。
電気代の請求が遅れた原因は「託送システムの不具合」
今回、電力使用量データ、発電電力量データ、インバランスの算定が遅れている原因となったのは、「託送システムの不具合」と発表されています。
託送とは、電力会社が持つ送配電網をほかの小売電気事業者、もしくは発電事業者などに提供し、送配電業務を代わって行うことを指します。
託送システムとは、需要家が供給者の変更(スイッチング)手続きをしたり、託送料金を計算したりするのに必須のシステムで、託送を円滑に進めるために開発されたものです。
つまり、今回の問題は、託送を管理するシステム上に不具合が生じたことで、送配電網を利用した小売電気事業者に対してどれだけ送配電を行ったかの通知ができず、電気料金の徴収が後ろ倒しになっているという事ですね。
具体的に起こった不具合の内容は、以下の通りです。
1.託送システムに使用電力量が連携されない
正常な状態では、需要家が電力を使うとそれに合わせて託送システムにそのデータが送られるしくみになっていますが、今回は需要家が使用した電力量をきちんと託送システムに送るという連携ができておらず、システム上で使用量の確認ができなかったものがあったという事ですね。
2.連携がきちんとできていても、システムの不具合で通知ができていない
1の託送システムの連けいの問題をクリアしていても、託送システムを通じて小売電気事業者へデータの通知ができないという不具合も発生しています。
この場合、託送システム上にデータが残っていることになるため、そのデータを手作業で取得して通知する対策を現在実行しているとのことです。
今後、不具合の解消はどう進められるの?
不具合の解消は6月中を目指すとされていますが、現段階では次の流れで改善が進められています。
- 託送システム上の問題を自動でチェックできる簡易プログラムを整備し、なぜシステム上に不具合が生じたかの原因を特定する
- 原因特定プログラムから得られた原因個所に対して、データ管理が正しく行える手順を確立する
この2ステップで、すでにいくつかのデータお知らせ遅延に対する改善がみられており、東京電力パワーグリッドの発表によると、今後はさらに原因特定プログラムの開発を進め、より効率的に改善が進められるように取り組む方針とされています。(それでもなお解消できない場合には、託送システム上のデータを強制的に出力し、小売電気事業者に提供するとのことです。)
電力自由化を円滑に進める上での課題
2016年4月より一般の需要家向けの電力小売りが全面的に自由化され、需要家にとってはより「お得」に、「サービスの良い」電気料金プランを契約でき、もしもの時には契約している電力会社以外からも電気供給の支援を得られることが期待されていました。
しかし、今回の問題から、電力自由化によってかえって電力供給に問題が生じるリスクについても、より浮き彫りにされることとなりました。
電気料金の支払いが後ろ倒しになるというのは、需要家にとってはいずれ支払うものだからとあまり気にならないかもしれません。
しかし、これが長期化・慢性化すると、需要家からの電気料金収入が小売電気事業者へ決まった時に入らなくなり、会社の運用資金がまわらずに経営そのものが危うくなる、ひいては電力市場全体に影響するケースも十分考えられます。
また、東京電力が設置を担当している「スマートメーター」に関しても、未だに完全に取り付けが完了しておらず、せっかく自由化が開始してもほかの電気事業者に切り替えができない需要家も一定数存在します。
電力自由化では明るい展望がある一方で、システムの運用や市場全体にはまだまだ安定するまでの「課題」が残っており、それらが解消していかなくては安心して電力自由化の恩恵を十分に受けられないとも考えられます。
一般の需要家であっても、自衛の意味でもきちんと電力市場の動向を学び、次を予測して事業者との契約をすすめる工夫が必要と言えそうですね。
電力の安定供給と電気代の節約を実現するためにしっかり料金プランの比較を
このように、新電力の託送システムの不具合により電気料金支払いが後ろ倒しになる問題があり、これは安定した電力供給にも悪影響を及ぼす可能性があります。このような事態を防ぐためにも、電力会社切り替えを考えている方は信頼できる電力会社を見極めるようにしましょう。
また、主要電力会社の料金プラン切り替えだけでも大幅な電気代削減になるケースもありますので、一度は今の電気料金を他のものと比較してみることをおすすめします。
タイナビスイッチを使えば、簡単に電気料金の比較ができます。よりお得な料金プランはあるのか?ぜひ調べてみてください。