電力自由化で節約できるのか?

電力自由化で新電力の会社に切り替えることによって、電気料金は節約できるのでしょうか?実は、電力自由化によって優遇されるのは電気を多く使用する家庭が対象になります。
電気を多く使用する世帯が電力自由化のターゲット
電力自由化が始まりましたがテレビのCMなどで頻繁に宣伝されており、関心も主婦などの間において高くなっています。電力自由化によって新しく電力業界に参入した東京ガスやソフトバンクなどの新電力の会社が電気料金のプランを公表しています。
しかし、それぞれの電力会社の電気料金プランは必ずしも分かりやすいものではありません。電気を使用する量によって大きな違いがお得感にあり、しかもセットでケーブルテレビや携帯電話と契約しなければならない電力会社もあり、割引そのものがないケースもあります。
また、お得感がある代わりに縛りとして2年契約があるプランや期間限定のポイント付与のプランもあります。
ここでは、それぞれの電力会社の資料などを基に年間の実質的な電気料金を試算してみました。毎月の電気使用量が同じとして、年間の電気使用量は1月分のものを12倍したものとし、料金単価をこれに掛けたうえで、それぞれの割引分やポイント付与分などを実質の電気料金の値引きとして差し引きました。
結論から言えば、電気を多く使用する家庭ほど電気料金を大きく節約できることです。
この理由は現行の電気料金の制度が「電気を多く使用するほど割高な電気料金になる3段階料金に設定されているため」です。
毎月の電気の使用量が多くない家庭の場合は基本的に低く電気料金が設定されています。なので元々電気代が高くない家庭の場合にはさらなる減額はできない状況にあります。そこで電力会社は「戸建ての4LDKに住んでいる4人家族のような電気を多く使用する家庭」をターゲットとしています。
東燃ゼネラル石油は割安感を広く打ち出し
東燃ゼネラル石油は電気だけの契約で電気の使用量が多くない家庭に対してもお得感を打ち出しました。同社は東京電力の電気料金をベースに3%〜6%を契約アンペア数によって割引しています。
そのため、電気を多く使用しない家庭の場合でも一定の割引を得ることができるようにしています。東急パワーサプライも東京電力の現行の電気料金より基本料金をメインに安く設定しています。
ほとんどの割引がセット契約
しかし、ほとんどの電力会社が競合するのは電気を多く使用する家庭向けです。この場合には、セットでガスやケーブルテレビ、携帯電話などと契約すると、よりはっきりと電気料金がお得になるように設定されています。
(例1)
・マンションの3LDKに住んでいる4人家族
・40アンペアの契約電流
・400キロワット時の月間使用電力量のケース
実質的に5%〜8%の割引率になります。しかし、電気料金自体の値引きは多くなく、ほとんどが割引をケーブルテレビや携帯電話の契約部分で行うことで割安感を出しています。
(例2)
・戸建ての4LDKに住んでいる4人家族
・50アンペアの契約電流
・700キロワット時の月間使用電力量のケース
実質的にさらに大きな割引率になるケースが多くあります。
ジュピターテレコムは300キロワット時を月にオーバーした分に関しては、現行の東京電力の電気料金と比較して割引率を10%に設定しています。この層に関しては上得意客として東京電力や東京ガスなどの多くの会社が見ており、囲い込みをポイント付与などによって図っています。
手数料が解約する際にかかる場合もある
契約する際や解約する際には手数料に注意が必要です。
東京電力など多くの会社では手数料は契約する際にかかりません。しかし、ジュピターテレコムでは事務手数料として3240円が必要になります。
ジュピターテレコムや東京電力では手数料が解約する際に発生することもあります。例えばセットのソフトバンクと東京電力のプランでは、解約を契約期間が終了になる2ヶ月以前にすると手数料としてバリュープランの場合に2500円(税込み)、プレミアムプランの場合に5000円(税込み)が発生します。
プランによって違っていますが、ジュピターテレコムでも戸建ての場合に21600円かかる場合があります。
セット契約の場合には料金の支払いが滞納すると公共料金に影響が出る場合もあります。セットの東京ガスのプランではガスと電気は別々に契約するので、電気料金の支払いを滞納した場合でもガスが止まることはありません。
しかし、セットのソフトバンクと東京電力のプランでは携帯料金と電気料金を合算して支払うことが条件になっています。2ヶ月料金の支払いを続けて滞納すると電気も携帯電話も止まる恐れがあります。
電力自由化によって新電力会社に切り替えると電気料金が節約できるため、急いで切り替える人もいるでしょう。しかし、後悔しないように電気契約に関していろいろな確認ポイントに注意しておく必要があります。
電力自由化を実施したドイツは電気料金が節約できたか
電力自由化は海外においてはすでに実施されています。ここでは、電力自由化を実施したドイツにおいて電気料金が節約できたかについてご紹介しましょう。
ドイツのケース
ここでは電力自由化が90年代の終わりからスタートしたドイツのケースから、将来的な日本の電気料金について見ていきましょう。
ドイツは年間の電力消費量のうち、自然エネルギーによるものが30%を占めているなど進んだエネルギーシフトの国として有名です。しかし、電力自由化についてはさまざまなトラブルがあったようです。
ドイツはEUの中で電力自由化に一番最後まで抵抗していました。
ドイツが電力自由化に抵抗していた理由:お金
ドイツは市や州などがエネルギー供給を上下水道と一緒に担当していて、自治体の予算に電力を供給する業者へ出資した分の儲けが組み込まれていました。
そのため、電力料金が自由になると安い電気料金の競争をしたり、顧客を無くしたりすれば市や州の収入が少なくなるので政治的にこのことを嫌いました。EUの中の大国においては結果的に電力自由化のための法律の施行が最も遅れました。
さらにいろいろな不備が電力自由化の制度にもありました。
「政治力があったそれぞれの州の電力会社の大手が約3割程度電気料金を安くした」
そのため別の電力会社も3割程度一緒に値下げをしました。利用者で契約を切り替える人は実際には多くありませんでしたが、小売りの電力会社間の競争のみが激しくなったため、体力が無い電力会社の場合は1年程度で経営が厳しくなりました。
このような電力会社を電力会社の大手が吸収し、電力自由化がスタートしてから5年程度で、4社の大手電力会社がドイツ全体の85%の発電出力を占めるという事態に陥りました。
「4社による独占化」ということです。
ただし、地域がメインの電力会社は生き残りはしたのですが、約600社で15%の発電出力を分けるスタイルになりました。
電力自由化がスタートする前は10数社の電力会社がドイツ全体の発電出力の70%程度を占めていましたが、電力自由化をしたことで独占化がかえって進んでしまいました。独占化が進むとどうなるか?歴史が教えてくれます。
電気料金は初めの3年間のみ下がりました。
しかし、独占化が進んだ後は毎年のように電気料金は上がりました。
電力自由化が目指していた電気料金の低下とは全く逆の結果になりました。
ドイツでは独占を防止するために監督官庁を国が設け、地域の電力会社や新しく参入する電力会社が不利にならないようにするために送電線を使う際の規則を作り直したり、発送電を分離したりしました。
ある程度このような方策によって落ち着きましたが、競争を自由にすれば独占になるのは想定できたため、監督官庁を最初から設けて規則をしっかりと決めておけば、それほどトラブルになることは無かったかもしれません。
日本における電力自由化の場合でも同じようなトラブルがあるかもしれません。電力に関しては発電所の大きなものと送電線を持っている電力会社が非常に有利であるため、高圧契約の場合はすでに電力自由化になっているにも関わらず、市場はほとんど動きませんでした。
今回の低圧の電力自由化の場合にも独占化がさらに進んで、現在の電力会社がさらに少なくなって、3社あるいは4社になる可能性もありえます。そうすれば電力自由化で電気料金を節約したいと思ってもできないかもしれません。
まとめ
電力自由化で新電力の会社に切り替えることによって電気料金が節約になるのは、基本的に電気を多く使用する家庭になります。電力自由化で新電力の会社に切り替える場合には、ドイツのケースなども参考にしながら十分に検討しましょう。