自動車保険を安くする最大のコツ「等級」とは

自動車保険に入ると、「等級」という言葉が頻繁に出てきます。等級は保険料を大きく左右するといわれ、ネットで自動車保険に加入する際も「現在の等級」を尋ねられます。
等級とは、言ってみればドライバーの安全運転レベルを表したものです。事故歴に応じて保険料が割増、または割引される「ノンフリート等級別料率制度」によって、1等級から20等級まで定められています。
それでは、この等級はどのような条件のもと設定されるのでしょうか? その重要性や確認方法なども含め、詳しく解説します。
「等級」は保険料を左右する重要なポイント

等級とは、保険料の割引・割増引率を決める「ノンフリート(※1)等級別料率制度」によって定められた区分のことです。通常、1等級から20等級まで設定されており(※2)、契約者の事故歴や事故内容などから、契約者と契約者の車に対するリスクに応じて区分されます。
また、等級によって保険料の算出に使用される係数が設定されています。等級が高いほど保険料は安く、反対に等級が低いほど保険料は高額になっていきます。等級は保険料を決める重要なポイントなのです。
※1.契約者の所有または使用する車の自動車保険契約台数が9台以下の場合は「ノンフリート契約」、10台以上の場合は「フリート契約」といいます。
※2.共済保険などでは22等級まで設定されている場合もあります。
「等級」は契約者間の公平を保つための制度
一般的に等級が下がると保険料は高くなりますが、それは何故なのでしょうか。
例えば、事故を起こして保険会社から保険金を受け取っているドライバーと、事故を起こさず、補償を受けたことがない優良ドライバーがいたとします。この場合、2人が同額の保険料を負担するのは不公平ですよね。
そこで役立つのが「ノンフリート等級別料率制度」です。この制度は、等級によってドライバーのレベルを細分化することで、事故リスクが高い契約者の保険料を高く、リスクが低い契約者の保険料を安くできる仕組みになっています。このようにノンフリート等級別料率制度は、保険料負担の公平性を確保するシステムなのです。
等級による割増・割引率
各等級の割増・割引率は、同じ階級であっても、
- 過去に事故を起こしたことがある場合(事故有)
- 事故を起こしたことがない場合(無事故)
上記2つの条件によって、適用される係数が変わります。詳細については、以下の表を御覧ください。
等級による割増・割引率表
等級 | 事故有 | 無事故 |
---|---|---|
1等級 | 64%割増 | 64%割増 |
2等級 | 28%割増 | 28%割増 |
3等級 | 12%割増 | 12%割増 |
4等級 | 2%割増 | 2%割増 |
5等級 | 13%割引 | 13%割引 |
6等級 | 19%割引 | 19%割引 |
7等級 | 20%割引 | 30%割引 |
8等級 | 21%割引 | 40%割引 |
9等級 | 22%割引 | 43%割引 |
10等級 | 23%割引 | 45%割引 |
11等級 | 25%割引 | 47%割引 |
12等級 | 27%割引 | 48%割引 |
13等級 | 29%割引 | 49%割引 |
14等級 | 31%割引 | 50%割引 |
15等級 | 33%割引 | 51%割引 |
16等級 | 36%割引 | 52%割引 |
17等級 | 38%割引 | 53%割引 |
18等級 | 40%割引 | 54%割引 |
19等級 | 42%割引 | 55%割引 |
20等級 | 44%割引 | 63%割引 |
※2017年6月調べ
事故有係数適用期間について
事故有の係数が適用される期間を「事故有係数適用期間」といい、事故の種類によってその適用年数は変わります。また、事故有係数適用期間中に再び事故を起こしてしまった場合は期間が延長され、その上限は6年になります。
等級が低いと自動車保険に加入できない可能性も!
初めて自動車保険を契約した場合、等級は6等級(2台目以降の契約は7等級)からスタートしますが、事故を起こして自動車保険を使うと、その度に等級は下がっていきます。
前年に事故を起こして等級が下がったとしても、その後無事故を通せば等級は上がっていきますが、問題は「連続して事故を起こしてしまった場合」です。
連続して事故を起こし1等級や2等級に区分された事故多発者は、
- 次の契約更新を打ち切られる
- 車両保険なしの「制限付き契約」による更新になる
可能性があります。
特に1等級になると、「事故を多発している非常にリスクの高いドライバー」と判断され、新たな自動車保険にも加入できないケースが一般的です。
極端に低い等級は、保険料が高くなるだけではなく、保険の更新や新規加入にも影響を与えてしまうことを覚えておきましょう。
等級が下がる条件とは

事故を起こして保険を使った場合、等級は3つ下がるケースが一般的です。ただし、事故の種類によっては等級が1つ下がるものや、等級が下がらない場合もあります。
3等級ダウン事故が適用されるケース
1件につき等級が3つ下がる事故を「3等級ダウン事故」といいます。
こちらは、以下の場合に適用されます。
- 他人を死傷させて「対人賠償保険金」が支払われる
- 衝突事故や単独事故による「対物賠償保険金」または「車両保険金」が支払われる
事故有係数の適用期間は1件につき3年です。
1等級ダウン事故が適用されるケース
1件につき等級が1つ下がる事故を「1等級ダウン事故」といいます。自然災害などの偶発的な原因で車が破損し、「車両保険」が支払われる場合に適用されます。
事故有係数の適用期間は1件につき1年です。
ノーカウント事故が適用されるケース
保険を使っても翌年度の等級が下がらない事故のことを「ノーカウント事故」といいます。適用される事故のケースは以下の通りです。
- 契約者やその家族が自動車事故で負傷し、「人身傷害保険※1」や「無保険車傷害保険※2」、「搭乗者傷害保険※3」が支払われる場合
- 家族が自転車で人にケガをさせたなど、「個人賠償責任特約※4」の保険金が支払われる場合
- 「弁護士費用補償特約※5」が支払われる場合
※1.契約者やその家族が自動車事故に遭った際、実際の損害額に応じて保険金が支払われる
※2.対人賠償保険に入っていない車との事故によって充分な補償が受けられない場合、足りない保険金が支払われる
※3.人身傷害保険にプラスされる保険で、入通院日数に応じて治療期間中でも保険金が支払われる
※4.日常生活で起きた事故によって損害賠償責任を負った際、保険金が支払われる
※5.示談交渉にかかる弁護士費用などを補償してもらえる
等級が下がることで保険料はどう変わる?
等級が下がることで、保険料にはどれだけの影響が出るのでしょうか。現在の等級10等級・保険料40,000円の契約者の無事故・事故有の保険料を、等級別の割増引率を使って比較してみましょう。
まずは、それぞれの4年間の保険料の合計額を計算してみました。
※あくまでおおよその目安です。実際の保険料とは異なります。
無事故の場合
経過年数 | 等級 | 保険料の目安 |
---|---|---|
翌年度 | 無事故11等級 | 保険料39,000円 |
2年後 | 無事故12等級 | 保険料38,000円 |
3年後 | 無事故13等級 | 保険料37,000円 |
4年後 | 無事故14等級 | 保険料36,000円 |
合計:15,0000円 |
3等級ダウン事故を起こした場合
経過年数 | 等級 | 保険料の目安 |
---|---|---|
翌年度 | 事故有7等級 | 58,000円 |
2年後 | 事故有8等級 | 57,000円 |
3年後 | 事故有9等級 | 57,000円 |
4年後 | 無事故9等級 | 40,000円 |
合計:212,000円 |
1等級ダウン事故を起こした場合
経過年数 | 等級 | 保険料の目安 |
---|---|---|
翌年度 | 事故有9等級 | 57,000円 |
2年後 | 無事故10等級 | 40,000円 |
3年後 | 無事故11等級 | 39,000円 |
4年後 | 無事故12等級 | 38,000円 |
合計:174,000円 |
無事故と事故有では、たった4年間で保険料負担額に大きな差が出ることがわかりました。
3等級ダウン事故 | 62,000円増額 |
---|---|
1等級ダウン事故 | 24,000円増額 |
特に3等級ダウン事故を起こした場合、3年間は事故有係数で保険料が計算されるので、保険料負担は格段に多くなります。
等級が下がる事故の具体例
では、等級が下がる自動車事故とは、どのようなものなのでしょうか?
具体的な例をいくつかご紹介します。
3等級ダウン事故の例
- 他人を死傷させてしまう交通事故を起こした
- 車同士の衝突事故で他人の車や物を破損させてしまった
- 電柱、または自宅の門などの建物に車をぶつけてしまった
- 当て逃げ被害に遭った
1等級ダウン事故の例
- 水災・火災・台風による事故に遭った
- 車が盗まれてしまった
- 落書きやひっかき傷など、いたずらによって車が損傷した
- 飛び石などによって窓ガラスが破損した
等級が上がる条件とは
一般的な自動車保険は1年ごとに契約更新がやってきます。1年間の保険期間を無事故で通し、自動車保険を使わなければ、等級は毎年1つずつアップしていきます。
例えば、自動車保険を初めて契約した6等級の契約者が、1年間事故を起こさず、翌年7等級に上がったとします。保険料の割引率は-19%から-30%になり、1年で保険料負担額が大幅に下がります。その目安は以下の通りです。
6等級スタートの契約者が5年間無事故だった場合の保険料割引率(目安)
経過年数 | 等級 | 割引率 | 保険料の目安 |
---|---|---|---|
契約時 | 6等級 | -19% | 40,000円 |
翌年度 | 無事故7等級 | -30% | 35,000円 |
2年後 | 無事故8等級 | -40% | 30,000円 |
3年後 | 無事故9等級 | -43% | 28,000円 |
4年後 | 無事故10等級 | -45% | 27,000円 |
5年後 | 無事故11等級 | -47% | 26,000円 |
割引率が最も高い20等級になるには最短でも14年かかりますが、保険料の割引率は-63%と、かなりの額の保険料がお得になるとわかります。
等級は引き継ぎができる
自動車保険には「等級の引継ぎ」という制度があります。この制度によって、自動車保険を他の保険会社に切り替える際、今までの等級をそのまま引き継ぐことができるのです。
日本の損保保険会社であれば、基本的にはどの保険会社間でも簡単に引き継ぎを行えます。労済や共済から保険会社への引き継ぎも問題ありません。
引き継ぎの際は契約期間に注意
等級の引継ぎは、契約の満期日翌日から7日以内に行う必要があります。満期日翌日から7日以上経過してしまうと、等級を引き継ぐことができなくなり、6等級からのスタートになります。
保険の契約期間はきちんとチェックしておきましょう。
なお、1〜5等級の人が7日以上経過した後に契約をしても、低い等級が引き継がれるだけで、6等級からの契約にはなりません。
新規契約として扱われるには、満期日から13ヶ月以上経過している必要があります。
同居している家族間なら等級を引き継げる
等級の引継ぎは、以下の条件を満たす場合は家族間で行うことも可能です。
- 記名被保険者の配偶者(証明書類を提出すれば、内縁関係も可)
- 記名被保険者と同居している親族
- 記名被保険者の同居親族
家族間であっても「同居している」ことが大きなポイントです。
例えば自分の子どもであっても、離れて暮らしている場合は等級の引継ぎは認められません。もし子どもに等級を引き継がせたいのなら、同居をしているうちに手続きを済ませておく必要があります。
等級は「保険証書」で確認できる

自動車保険の等級は、毎年送られてくる保険証書に記載されています。保険証書とは、「契約期間」「満期日」などの諸条件が細かく記載されている書類です。
保険証書が手元にない場合は、契約している保険会社・代理店へ電話で確認することも可能です。その際、本人確認の他に「自動車の登録番号」を尋ねられるので、あらかじめ控えておきましょう。
等級を理解して保険料の節約と見直しを!
自動車保険の保険料は、等級によって設定された割増・割引率によって大きく差が出ます。保険料を節約するには、安全運転を心がけ、無事故年数を重ねて等級を上げていくことが大切です。
等級の割増・割引率の算出には、「損害保険料率算出機構」によって算出された「参考純率」が使用されています。この「損害保険料率算出機構」に加入している保険会社であれば、等級別の割増・割引率は基本的に同じです。
しかし、保険会社独自の保険料割引システムや算出方法によって、同じ等級でも保険料が安くなる場合があります。
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