電力自由化が抱える課題とは?停電と料金、倒産の不安

2016年から始まる電力自由化で一般家庭も電力会社を自由に選択することが可能になります。これまで続いてきた電力供給の仕組みが一新されることにより、どのようなリスクが生まれるのでしょうか?特に消費者への関わりが大きい3つの課題について解説します。
電力の供給力
電力自由化で最も心配されることといえば電力供給の安定性、つまり停電のリスクです。アメリカ合衆国カリフォルニア州では電力自由化が悪い方向に連鎖し、停電が頻発するという事態が発生したために「電力自由化は停電を引き起こす」というイメージが未だ根強いのです。
市場競争が激しくなる中で設備投資や人件費のコストカットが行われる中、不意に起こる緊急事態に対して日本の電力会社はどのような対策を進めているのでしょうか?
電気を必要なところへ分け合う仕組み化
その中で大規模な停電リスクを減らすために、広域的運営推進機関が設立されることとなりました。これにより電力会社同士の垣根を超えて、地域への電力融通や供給指示を行えるとしています。
しかし電力を分けるだけではなく、供給量に余裕を持たせるための予備電力を備えておく取り組みが必要であるとも言われています。
経営の安定性
電力小売に新規参入してきた新電力と契約をして、もしも経営が破綻したら電気の利用者はどうなるのでしょうか?
電力の市場競争が活発化して電気料金の低下が期待される電力自由化ですが、競争をすれば敗れる企業も出てきます。つまり、電力会社の倒産リスクを抱えるということです。
電力会社の倒産といえば新電力の「日本ロジテック協同組合」が2016年に破産したケースがありますが、この時に同社と契約していた自治体などの法人が停電に苦しめられたりはしませんでした。当時は各地域の大手電力会社がセーフティネットとしての義務を負い、全てのユーザーに必ず電力供給を行っていたためです。
今後の電力自由化では各地域の一般送配電事業者が「最終保障サービス」を義務付けられます。電気の小売事業者が撤退した場合でもユーザーへの電力供給が止まることはありません。
電気の料金設定
電力自由化で期待されていることといえば、電気料金の低下です。市場競争の原理が働けば企業努力により電気の価格は安くなると思いがちですが、逆に値上がってしまうリスクも指摘されています。
電力自由化で電気料金が軒並み値上がりした事例も
電気料金に大きく関わる発電コストや環境コストの増加により、既に電力自由化が行われているドイツやイギリスでは電気料金が値上がりしたという事実があります。
日本の場合、2020年までは経過措置として大手電力会社は「規制料金」で電力の供給を行うため、急激な料金変更は2017年時点では発生していません。電気の料金設定を政府により規制されてきた日本は、規制撤廃後の電気料金をどのように下げていくのかに注目するべきでしょう。