発送電分離の課題と可能性とは?

発送電分離は4つに分類される
発送電分離は、大きく4つに分類されます。
所有権分離
資本関係を排除し、送配電部門を別会社化する。
法的分離
送配電部門を独立した別会社として扱う。
会計分離
他部門と送配電部門の会計を分離する。
機能分離
独立した系列運用部門が整備計画と運用を実践して送配電部門の所有権のみを電力会社に残す。
発送電分離とは?
「発送電分離」とはその名の通り、発電と送電を分離することです。
家庭や工場に届ける電気は発電所で作られますが、それを届けるには電線や変電所といった送配電設備が必要となります。
大手の電力会社であれば発電と送配電、この両方の設備を所有管理しています。
今までは、電力会社がこれら全てを行なっていましたが、発送電分離することで送配電設備を切り離して、これにより新規参入事業者が利用できるようになります。
海外ではイギリスを始めヨーロッパで活発に行なわれており、アメリカの一部でも導入されています。
⇒電力自由化の先駆け「イギリス」ではどうだった?
「なんで日本では行なわれなかったの?」こんな疑問を抱く方が多いのではないでしょうか?
日本の場合、「電気事業再編成法案」によって各電力会社の地域独占体制が作られてしまったために発送電分離が難しくなっていました。
発送電分離は、そもそも1990年代中頃に欧米で電力自由化の法律が作られて実行されていますが、日本で発送電分離が実施されることになったのは2013年の自民党の総務会で電力改革の政策が承認されたことがきっかけです。
2018年から2020年を目標に発送電分離に基づいた電力自由化を実践する予定でしたが、そうなると大手電力会社が大規模に組織改変をする必要性が出てくることから、現状的には5年間の猶予を持たせています。
長きに渡り電力自由化に反対してきた既存の大手会社の反対により実現に時間がかかっていましたが、東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所の事故が起因して国有化されることとなり経産省と電力会社の力関係が逆転。そのことにより、電力自由化に漕ぎ着けることができたと言えます。
発送電分離は戦前にもあった
日本では、第二次大戦以前に発送電分離の状態でした。 ピーク時には、約700近い中小クラスの電力業者がしのぎを削るような状況下で契約している需要家にのみ送電していたので、同じエリアでも停電していたり、していなかったりと、ちぐはぐな事態が起きていました。
また、送電側が細分化されていたため、契約する需要家の人数が少ないと経費が伴わずに電線を引いてもらえないこともありました。 そういう意味では、不平等だったと言えるかもしれません。
現在のように、既存の電力会社が政府の管理下のもと送電と配電を管理することで、どこの電力会社と契約しても平等に送配電される仕組みになったと言えます。
なぜ発送電分離を導入するのか?
そもそもなぜ発送電分離をするのか疑問に思う方が殆どではないでしょうか?
電力事業を行なうには発電設備も送配電設備もどちらも必要となります。
仮に発電設備を持っていたとしても、送配電設備を一から作るにはお金も時間もかかってしまいます。
これですと新たに電力事業に参加したいと思っても中々参加できず、不平等となります。
これを避けるために発送電分離が行なわれます。
⇒今からでも間に合う?電力事業者の候補を挙げてみよう
どうやって発送電分離を行なうの?
では、具体的にどのようにして発送電分離が行なわれるのでしょうか?
これには、恐らく「法的分離」がとられることになると思います。
大手電力会社が所有する送配電設備と部署を新たな会社として切り離します。
いわば独立させる形となりますので、どの事業者に対しても中立な立場の管理者が設備を扱いますから、誰でも平等に設備を使用できる可能性があります。
しかし表向きは平等な立場としていますが、切離した新しい会社はあくまでも「大手電力会社の子会社的な立ち位置」となります。
ですから、結局のところ「親会社である大手電力会社が、都合の良いように利用価格を設定してしまう可能性がある」という問題点を抱えています。
どうしても利害関係がありますから本当に平等に発送電分離が機能するのか不安なところです。
もちろんこのような事態を避けるために、話を煮詰めていき決定していくことでしょう。
発電と送電部門は自由化されない
現在、電力自由化が実施されているのは販売部門のみです。 2016年4月から全面的に電力自由化が開始されても発電と送電に関しては、自由化されていません。 未だに既存電力会社が市場を独占しており政府の管理下に置かれている状態です。
何故、発電と送電部門は自由化されないのでしょうか。 それには、設備面に膨大な費用がかかるのと電線や電柱の設置問題などがあるからです。 この2点が解決されることが、完全自由化の課題になるでしょう。
発送電分離のこれからの課題
上記でお話したように、電力自由化後に発送電分離がちゃんと機能するのかが心配な点でもあります。
電力自由化に伴い発電、送配電、小売とそれぞれ分割して機能することとなります。
これにより新規参入と業者間の競争を強化することが出来ます。
我々消費者にとっては嬉しいことのように思えるのですが、問題がないわけでもないのです。
というのも、それぞれ別々の会社が管理をしますので緊急時など万が一の時でも、きちんと連携して電気の供給を安定的に出来るのかが不安視されています。
発電する側と送配電する側で情報をシェアしたり互いの連携がスムーズに行けば良いですが、問題が起きないとも限りません。
緊急時に何か問題が起きては大パニックに陥る可能性が高いですから、そのようなことが起こらないためにも仕組みづくりをどうするかが非常に重要になってきます。
新規参入の電力会社はトラブルに対応できるの?
発送電分離によって新規参入事業者も平等に送電網のアクセスが出来ることを保障するため、既にある大手電力会社と比較しても不利な競争とならないよう中立性を保たなければいけません。
しかし自由に新規事業者が参入できるということは、それだけ管理が大変になるということになります。
全ての発電事業者の動きを管理し、常に電気の需給を調整しなければいけないのです。
送配電を担っている会社は調整機能に関しては高度な技術とそのための方法を熟知していますので、電力自由化後でも停電が発生することは考えにくいですが、問題は新規参入するであろう発電事業者なのです。
彼らがこれらの技術を習得するまでにはどうしても時間が必要となりますので、万が一の時のトラブルに対応できるのかが鍵となります。
発送電分離が導入されて電気料金は安くなる?
きちんと機能することは勿論ですが、消費者が興味関心を抱いているのはどちらかと言うと料金面かもしれませんね。
電力自由化=電気料金値下と多くの方が関連付けるのではないでしょうか?
発送電分離と電力自由化を行なうことで直ぐに電気代が下がる、と言うことは実は考えにくいと言われているんですね。
というのも既に海外では一足先に取り入れられているわけですが、ただちに電気料金が下がったという明確な結果は出ていないんです。
既に発送電分離を導入している海外では電気料金が逆に値上がりしているので、その部分がどのように関係してくるのか動向が気になるところでもあります。 各事業者が競争することで電気料金の値下げは確かに期待できるかもしれません。
ですが、それを実感するには時間がどうしてもかかるようです。
2011年に起きた東日本大震災により太陽光や風力、蓄電池など再生可能エネルギーの導入が急ピッチで進められてきました。
しかしこれらの発電には火力や原子力に比べ莫大なコストを必要とします。
また、自然環境とは常に安定しているものではありませんので、それだけで電力の安定供給をすることは困難とされています。
結局のところ火力や原子力といったバックアップが必要となり、これにも多額のコストが必要となります。
電力自由化が進み、わざわざコストのかかるバックアップ作業を役割を担う事業者が出てくるとは考えにくいです。
発送電分離によるメリットやデメリット
発送電分離のメリットとデメリットは、どんなところにあるのか見ていきましょう。
まずメリットとしては、「電気料金が安くなる」ことが考えられます。
今までのように特定の電力会社は、地域独占状態だったために電気料金を下げることが出来ませんでした。
しかし新規事業者が参入することで、このような状態が崩れるため競争化が進み、その結果電気料金の値下げに繋がると考えられています。
参入する事業者が増えるということは、消費者の選択肢が増えるということになります。
中には地熱や風力、太陽光など再生エネルギーのみで発電した電力を売る事業者だって出てくる可能性があります。
今まで送配電網を所有していない事業者も発電や小売事業に参入することで活性化を図ることが出来ます。
また、発電と送配電を分離することで既存の電力会社は維持管理の役割から解放されます。
これによりどちらのビジネスも拡大され、結果として全体的に電力ビジネスの底上げが期待できます。
発送電分離によって電力不足になるかも?!
では、逆にどのようなデメリットがあるのでしょうか?
電気の購入先を選ぶことが出来るということは消費者にとって嬉しいことですが、これが販売側にとっても良いことなのかといいますとそうではありません。
何故なら発電した分の電気全てが売れるわけではないからです。
発電した電気を売るには自社を選んでもらわなければいけないわけですから、選んでもらえないことには電気は売れません。
余った分は無駄になってしまうわけですから、このデメリットを考えると新たな発電所を建設するのは簡単なことではないのです。
確実に売れるとわかっていれば何の迷いもなく発電所を建てられますが、先の見通しが付かないわけですから見切り発車で発電所を建てるわけにはいきません。
その為、将来的に電力不足になる可能性があると言われています。
また、総合的におこなっていた事業が分散されることで能率性が悪くなり費用が余分にかかってくる点もデメリットです。 繰り返しになりますが発電と送電が連携できなければ頻繁に停電が起きる他、災害時の復旧の対応も遅れる恐れもあると言われています。
事実アメリカではこのような問題が起きてしまい、大停電が発生、更には計画停電をする州も過去に出ています。
まとめ
以上のように発送電分離による制度やその仕組みに関してはまだまだ解決しなければいけない課題が残されています。
ただ単に、発電と送電を分けるだけが発送電分離ではありません。
そこには、自由化される電力市場がしっかりと機能するための制度とルールが必要となります。
単に事業者レベルだけで解決を図る問題ではなく、政府レベルで方向性をきちんと定めなければいけません。
電気が安くなるのは消費者にとって嬉しいことですが、やはり一番は安心して電気が使えることです。
まずは安定供給を確保し、それから競争化を図り消費者により良いメリットをもたらしてくれる事を願います。
電力自由化は消費者にとってもメリットあり!今より電気代が安く出来ないか見てみよう
電力自由化による電力市場が安定して機能するために、発送電分離の安定した運用が必要です。消費者にとっても電気代が安くなるメリットがあります。
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