ドイツのガス自由化後の切り替え率は18%!!

EUが掲げる統一エネルギー市場の実現のために、障壁となっていたドイツの供給区域設定契約と排他的導管敷設契約を撤廃させたことと、ドイツ国内の産業界から出ていたガス料金の値下げという意見が反映されたことで、ガスの自由化が一斉にスタートしたのです。
2005年に施行された新エネルギー経済法によって、ガス事業者は、配給部門と輸送、販売部門が分割されたのですが、顧客10万件未満のガス事業者に対しては、法律の適用外となったこともあり、ほとんどのガス事業者にとっては、それまでと変わらずにガスの配給と販売を分けないままの状態でした。
そのこともあり、2005年の時点では、新規事業者の参入による競争はほとんどなく、消費者がガス事業者を新たに変えた件数は302件だったという記録が残っています。
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ドイツのガス自由化は成功したのか?

2005年の時点では、新規事業者の参入による競争は活発ではなかったものの、その後は公営会社と価格競争を繰り広げたおかげもあって、ガス料金が値下げされる結果となりました。
ところがそんな状態は長くは続かず、新規事業者のうち小さめの会社から順々に大手企業に吸収されたり、姿を消したりということがあり、現状ではガスの自由化以前と比較して、ガス料金は値上がりしています。
ドイツの場合、ガスの原料となる天然ガスなどの8割以上が輸入によるものということもあり、ガス料金に反映させることが難しいということもあります。
ガス会社の切り替え率18%
ドイツでは、ガス自由化によって、ガス会社をそれまでの事業者から変更した消費者の割合は、2012年の時点で18%となっています。
とはいえ、せっかく新規事業者へと契約の切り替えを行っても、先述したように大手会社に吸収されるなど、悪い意味での流動性があったため、結局もともと契約していた地元の公営会社(シュタットベルケ)との契約を結び直すといった傾向があるようです。
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公営会社(シュタットベルケ)は25%程倒産していく可能性も

シュタットベルケとは、地方自治体が関与している公営企業の名前です。
シュタットベルケでは、電力やガスや水道、ゴミの処理や鉄道やバス、遊園地やスポーツ施設といった、地域住民が生活していく上で必要なサービスを提供しています。
ドイツでは1998年からの電気やガス自由化にともない、多くの新規事業者が参入を果たしたのですが、大半の消費者は、地域密着企業であるシュタットベルケとの契約を継続しています。
シュタットベルケが、古くからサービスを提供していることによる安心や信頼があるというのが、その大きな理由となっているようです。
シュタットベルケ側からも、消費者へのサポートをまめに行ってきたことが、その信頼や安心につながっているのかもしれません。
ゲーラ市のシュタットベルケの倒産
チューリンゲン州にあるゲーラ市は、人口10万人の州で三番目に大きな都市です。
ゲーラ市のシュタットベルケも、ガスや電力やゴミの処理、電車やバスなどのサービスを提供し、住民とも良好な関係を気づいていました。
ゲーラ市では、他の地域のシュタットベルケと同様に、電気やガスなどのエネルギーの供給によって得た利益を、電車やバスの運行で発生する赤字分を補填する形で経営を続けていました。
ところが、1996年に導入した発電システムのGera-Nordが、2009年以降は再生可能エネルギー電源のシェアが増えたことから電力の値段が大幅に下がってしまい、エネルギー部門が他の赤字部門を補填することで成立していた経営が厳しくなってしまいました。
しかも再生可能エネルギー電源のシェアが増大したことで、新たなインフラ整備(配電線の拡張)を必要としたゲーラ市のシュタットベルケは、地域の銀行に追加融資を申し込むものの、銀行から丁重に断られたことから、2014年には倒産に追い込まれてしまいました。
ゲーラ市のように、今後倒産する可能性のあるシュタットベルケは25%ほど存在すると言われており、今後のガスの自由化による消費者のガス事業者の切り替えにも影響を与えるかもしれません。
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ドイツでもガス比較サイトは重要視されている

ドイツでは、ガスの自由化にともない、100以上もの比較サイトが存在します。
その中でも最も信頼性の高いサイトとして知られているのが、「VERIVOX.de」です。
入力画面に世帯人口や郵便番号などを入力しますと、条件に見合ったガス事業者や料金プランを表示してくれます。
支払いオプションやプリペイドといったような契約の条件も選べるのもポイントです。
有料比較サイト
ドイツには、有料のガス比較サイトも存在します。
例えば「Hauspilot.de」では、45ユーロの料金をサイトに対して支払うことで、ユーザーにとって公平かつ中立な視点でガス会社を紹介し、契約の切り替えも代行しています。