海外事例に学ぶ電力自由化の節約術のまとめ

2016年4月からの電力全面自由化に伴って、一般家庭においても電力会社を切り替えが可能になりました。
これによって各自のライフスタイルに応じて、電力会社やプランを選択することで電気料金を節約することができます。
日本ではまだまだ電力自由化は始まったばかりですので、18年ほど前から電力自由化に取り組んできた海外の事例をまとめて電気料金の節約術について考えてみたいと思います。
電力自由化 ドイツ編
ドイツでは、日本と同様に地域ごとに電力供給会社が指定されていましたが、1998年に電力市場の完全自由化が行われました。
結論から述べるとドイツの電力事業は過剰量の電力会社およびプラン(ベルリンなどの大都市近郊では100種類以上)によって消費者に混乱をもたらし、成功したとは言いがたいようです。
多すぎる選択肢、新事業会社の不祥事、そして電力比較サイトも中立性を欠いていたため、住民の信頼を失ってしまいました。
電力市場の自由化後、通信分野からの参入やベンチャー企業が台頭した時代もありましたが、それらの企業は激しい競争に巻き込まれて倒産してしまいました。
たとえば、Teldafaxという通信事業会社は固定電話と電力とガスのセット販売をしていましたが、2011年に料金を前払い済みだった70万人の顧客を抱えたまま倒産しました。
現在では、地域ごとの電力会社による買収や合併を通してRWE、EnBW、E.ONという主要3社が40%のシェアを占めています。
一般家庭における電力切り替え率は、自由化から14年後の2012年において28%となっており、電力自由化は瞬間的に行われるものではなく比較的長い時間を要するということを示しています。
自由化直後には、多くの新電力事業会社が安い電気料金等のキャンペーンを打ち出しますが、持続性まで考慮してしっかりと情報収集をしながらプラン選択をすることが最も賢い節約術と言えるかもしれません。
電力自由化 イギリス編
イギリスは1998年に電力自由化が行われており、これまでに約20社が新電力事業会社として参入したようです。
イギリスでも日本と同様に、通信事業やスーパーマーケットによる電気料金の節約プランなどが打ちだされており、住民は「料金プランの価格」「顧客サービス」「再生可能エネルギー」という観点を中心に電力会社を選んでいるようです。
現在では、約40%の人が電力もしくはガス会社の乗り換えを経験しており、イギリスでは電力自由化の取り組みは比較的成功したと言えるようです。
乗り換えの理由としては、「電気料金が安くなるから」という節約術における一環という考え方が支配的のようです。
逆に乗り換えをしない理由としては、「現状のエネルギー利用に満足がいっているから」という理由が多く、とりたてて手間をかけて電力会社を変更するほどの動機を感じなかったからというものが強いようです。
しかしながら、2013年に大手電力会社が燃料費変動とはかけ離れた大幅値上げを行ったため、この時期に電力会社変更を行った人も多いようです。
以上をまとめると、イギリスでは電力自由化は比較的成功したと言えるかもしれません。
また、現状では新電力事業会社のプランによる節約術などに興味がない場合でも、既存の電力会社の大幅値上げやサービス低下などに抵抗する手段として電力会社の選択肢がある、ということは消費者的な意思表示に役立つかもしれません。
⇒電力自由化の先駆け「イギリス」ではどんな状況だった?
電力自由化 フランス編
フランスにおける一般家庭向けの電力自由化は、2007年に行われています。
それまでは国営企業であったEDF(電力)、GDF(ガス)がそれぞれの市場を独占していましたが、2007年の自由化で電力とガスがともに自由化されたためEDFがガス市場に、GDFが電力市場に参入して旧独占企業同士の競争が始まったようです。
これは、日本でも東京ガスが電力事業に乗り出した点と似ていますね。
その後、新規参入や地域限定の電力会社の規模拡大などが行われ、現在では、フランス全土で160社が電力とガスの小売をしていると言われています。
しかし、フランスでは保守的な国民性もあってか2014年時点で旧独占企業のシェアが電力とガスそれぞれ90%を超えており、電力会社を変更した家庭は4%程度に留まっており、自由化がなされたとは言いがたい状況です。
日本と比べても、フランスの場合は自由化前から独占企業が1社(EDF)のみであり、国内に競合がなく、顧客情報やノウハウも独占している状態でした。
一方、日本の場合は東京電力、関西電力、中部電力など地域ごとに電力会社が存在しているため、それぞれが競合相手になり、自由競争が比較的起こりやすい状況にあると言えるかもしれません。
また、小国の集合体であるEUという特殊な政治形態上、EDFの競争相手は国内ではなく海外(ドイツ、ベルギー、イタリアなど)の電力会社となっているようです。
以上をまとめると、フランスでは電力自由化後も依然として独占企業の地位は揺るがないようです。
これは、地政学上の観点からも単純に日本と比べることはできませんが、競争相手が国内ではなく隣国の電力会社であるということが主な理由の一つとしてあげられるようです。
日本においても特に九州地方は大陸との距離も近いため、今後は中国や韓国の電力会社が新参入することで、さらに安い電気料金を提供するということがあるかもしれません。
他の産業と同じく海外を視野に入れることで、将来的にはさらに安価なプラン選択による節約術を実現できる可能性があるということを考慮しておくのもいいかもしれません。
⇒フランスは電力自由化後も料金&体勢に変化なし!!
電力自由化 イタリア編
イタリアの電力自由化はフランスと同じく2007年に行われ、それまでは電力は、ENELという国営独占企業が80%のシェアを占めていました。
電力市場の自由化後は海外企業の進出が目立ち、フランスの国営電力会社であるEDF、ドイツのE.On、そしてフランスの国営ガス会社GDFなど隣国の独占企業が新参入しています。
イタリアでは国内の新規参入企業が少ないのが特徴で、国内の産業構造から見ても保守的で硬直的であることから海外の参入が大部分を占めざるを得ないのかもしれません。
電気会社の乗り換えはオフィスや工場など営利追求の場所では10~25%ほどですが、一般家庭においては未だに7%程度のようです。
また、電力比較サイトも公平性が担保されておらず、電気料金の価格のみの説明になっているようです。
そこで政府機関が中心に比較サイトを設立しましたが、中立ではあるものの、使い勝手やデザインが悪く、電力自由化の普及を高めるには至っていないようです。
以上をまとめるとイタリアの電力自由化はフランスと同じく、保守的な体質から普及しているとは言いがたいようです。
さらに国内の新規参入が少なく、電力比較サイトも利便性が悪く、電力自由化自体の認知度が高いとは言えない状況です。
エネルギーの節約術を考える上で、国の体質や政治的背景を理解しておくと、長期的な視野をもった賢いプラン選択ができるかもしれません。
⇒《世界の電力自由化》イタリアから学ぶ電力自由化の影響
海外の先進事例を踏まえて考える電気料金節約術まとめ
このページではエコロジー先進地域であるヨーロッパ(ドイツ、イギリス、フランス、イタリア)の先行事例を紹介しました。
地形的、政治的類似性を踏まえると、どの国の事例もこれからの日本の電力事業を考える上で参考になると思います。
日本と同じ島国であるイギリスの場合は今後の日本の電力事情を予測する上で役にたつと思います。
2011年の原発事故以降、電力会社への不信感が高まるという出来事がありましたが、電力自由化は独占企業に対する消費者の意見反映という観点からしても有効に働く可能性もあります。
そして、独占企業による不明確な電気料金の値上げなどがあった場合の「逃げ道」を確保しておく、という意味で、今すぐに電力会社変更を検討していない人でも「保険」を考えておくのもよいかもしれません。
ドイツにおいて新参入の電力会社の自由競争が激化し、最終的に顧客を抱えてしまったまま倒産してしまったことから、慎重な会社選択を要するということがわかります。
さらにフランスとイタリアに関しては、保守的な政治や産業構造から電力自由化が思うようには進んでおらず、依然として旧国営会社の独占状態にあることがわかりました。
しかしながらEUは小国の集まりであり、国内の新規参入だけでなく、海外の電力会社がライバルになっているようです。
これは、日本で言えば東京電力圏に中部電力が電力供給を始めるといったことに匹敵するので、地域の旧電力エリアを超えた電力会社のプランの価格やサービスをチェックしてみるのもよいかもしれません。
ヨーロッパの電力自由化とその後の10年、20年の経過を中心に考察し、長期的な電気料金節約術について考えるヒントをお伝えしました。
日本では電力自由化は始まったばかりで、選択肢が広がっていく一方で、情報が混乱しているところもあると思います。
海外の先進事例などを参考に電気料金の節約術、サービスが向上できるプラン選択などをじっくり検討してみてはいかがでしょうか。
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