オーストラリアの電気代が高い理由は?電力自由化を追ってみた

オーストラリアの電気代は電力自由化後上昇
オーストラリアは、電力自由化後に価格が大きく上昇しています。そして現在では世界一電気代の高い国とも言われており、これからも電気代の上昇は歯止めがきかない状態となってきています。
具体的に電気料金の上がり方を数値で表すと3年間で約40%も上昇しています。
オーストラリアは豊富な石炭資源があり、長い間電気料金が格安の国だったのですが、今では電気料金のことをずっと考えながら生活しなければならないほど、国民の生活は逼迫しています。
特にオーストラリアでは、平均所得の最も低い州が最も電気代を多く払っており、国民は大きな不満を募らせています。元々は電気料金が格安であったのになぜここまで上昇したのでしょうか。
それはやはり国際会議で取り上げられ、積極的に石炭を原料とした火力発電が行えなくなったからです。そこで仕方なく再生可能エネルギー、つまり環境に優しい電力供給へ強引にシフトしなければならなくなったのが原因でしょう。
しかし、元々石炭から電力のほぼ全てを賄ってきたオーストラリアが再生可能エネルギーの発電設備を持っているはずもなく、急いで作らなければなりません。
そのため、その費用を国民が負担しなければならない形に練ってしまったという側面もあります。
そして、政府は公式の発表で「電気代が安価な時代は終わった」という明言をしており、国民としては迷言なのですが国家的に電力価格の上昇は大問題になってしまっているということを国民に伝えました。
これが2012年のことなので長い間、オーストラリアはギリギリの状態であることが見て取れます。
電気代が再生可能エネルギーへ移行のため値上がり
先ほども紹介したようにオーストラリアは再生可能エネルギーへの移行を急いで進めている状態ですが、その推進には多額の資本が必要となり、政府はそれを国民に負担させる形を取っているため電気料金が上がっているという見方もできます。
国の国策に国民がお金を出すことは世界でも普通なのですが、あまりに短期的に物事を進めようとしすぎているせいで国民の負担が急激に増加しているという現状があります。
ですが、急いで進めなければ二酸化炭素の排出は減らず、国際的に批判をずっとされてしまうというのが政府からすれば避けたいことなのです。
そのため短期的に国民の負担が増えようとも多少強引に資本を集め、設備が整えば元の格安の価格に戻すことで国民の理解を得ようとしている形です。
しかし、それがいつになるのかは不透明な状態であり、それまで国民が耐えられるのか国外に国民が流出して行ってしまうのではないか、というリスクも大いにあります。
国民が大幅に減ればその分国内に残された国民の負担は増大し続け、電気料金が安くなるのが更に先になるわけです。
オーストラリアの電力自由化の歴史
オーストラリアは電力自由化以前、州によって電気の発電から小売までを全て管理していました。
しかし、政府は電気代の価格の低下と市場の活発化と、電力の安定供給などを目的にエネルギー政策を行い始めました。この政府がエネルギー業界全体に対して自由化の動きを見せはじめたのは1990年からです。
そこから、徐々に自由化の幅を広げていき1998年に全面的にエネルギーに関しての自由化は完了したと政府は発表しています。そして、電力の市場については市場運営会社が運営することになりました。
その市場のことを全国電力市場というのですが、これは入札制で電気を競り落とす市場のことであり、他の国ではあまり見られないシステムを導入しました。
海外の電力自由化後の動きとして政府が国営の企業を民営化すると言いながら、株式公開後にも大量の株式を保有して利益を得ようとする場合が多いそうです。
⇒電力自由化の海外事例を徹底検証!
オーストラリア政府は、そのようなことは行わず入札で電力を競り落とす市場を作り、市場の活性化を促しました。
オーストラリアの電力事情
現在のオーストラリアの電力事情は特殊です。それは、電力を買う際に何から作られているかを見てから決めるという方法が当たり前なのです。
ものすごくヘルシー志向のOLみたいですね。少し、面倒ではないかと思うのですが、電気を元から選ぶのには大きな理由がありました。
その理由とは元々オーストラリアは化石燃料が多く、資源の豊富な大地の上に成り立っている国です。電力供給も安定的に行われており、何の問題もありませんでした。
しかし、ある時に海外で行われた、これからの世界の環境を考える会議で「オーストラリアが化石燃料、つまり石炭を使って発電している際に出てくる二酸化炭素の量が多すぎるから地球がダメになっているのだ!しかもその量は年々増えている。」という議題が出て、それが世界中に拡散してしまったのです。これによりオーストラリアは世界中から大バッシングを受けました。
そしてその非難は、オーストラリア政府にも向けられました。そこでオーストラリア政府は、石炭以外の燃料から発電している電気を変えるという選択肢を国民に提示し、国民が主体的に選んでいるため、政府が石炭からの発電を推奨しているわけではない。
つまり、二酸化炭素の問題は私たち政府にはないといいました。ある意味、国民に責任をなすり付けたわけですね。この政府の対応が後にオーストラリアの電力事情を大きく悪化させる最大の要因となることとなります。
発電方法の転換期
オーストラリアは、その後再生可能エネルギーへの転換期が訪れました。地球に優しいものから出来ている。もちろん二酸化炭素の排出量もとても少ない、そんなものから出来ている電気の購入などを政府も推奨していました。
ですが、今まで化石燃料から発電した電気をメインで使っていた国が急にクリーンエネルギーへと移行しようとしても、まず発電設備が足りません。そのため、クリーンエネルギーの値段が非常に高くなったのです。
しかし、国民は石炭からできた電気を使えば世界からバッシングをされるので抵抗があり、仕方なく値段の高騰しているクリーンエネルギーを使わざるをえませんでした。
この時、オーストラリア政府はクリーンエネルギーの発電設備への多額の投資を行っています。供給量が増えれば自然と値段は下がると考えたのです。
⇒《世界の電力自由化》オーストラリアの電力市場の今!
オーストラリアの電気代の経緯から学ぶべきこと
オーストラリアの自由化から日本が学べることは、多くあると思われます。まず、再生可能エネルギーに対しての資本の投入を急がないことで、電気代の高騰のリスクを避けることです。
オーストラリアは化石燃料での発電に多く頼っていたために、急いで再生可能エネルギーに転換しなければなりませんでした。
日本は化石燃料により火力発電も多いですが、その他の水力、風力、地熱、ソーラーなど多くの燃料からの発電を前々から進めていたので急ぐ必要は無いように感じます。
ただ、原発を一斉に止めてしまえば、その瞬間に電気代は爆発的に高騰するのですが、政府がそれを防ぐと思われるので大丈夫です。
つまり、短期的に原発をなくすのではなく長い時間をかけて少しずつ減らしていくのが建設的な方法であると思われます。そうしなければ、単純に電力の供給量が減りますので需要が供給量を追い抜いてしまいます。
もう一つ日本が、オーストラリアの電力自由化から学べることは
電力自由化にはスピード感が非常に大切ということです。オーストラリアは、電力自由化の動きを見せ部分的な自由化を繰り返し、全面的な自由化まで約8年という月日を必要としました。結果、市場のバランスは不安定なまま進んでしまったことがわかります。
慎重さと大胆さ、そして消費者を保護する制度。日本の電力自由化は現状、これらの要素を満たしていると言えるでしょう。
「様子見」いつまで続ける?固定支出の節約は早いほうが実績も大きい
オーストラリアの事例だとゆっくりとした変化が8年間続けて行われ、慎重さが良い結果を呼ぶとは必ずしも言えない結果となってしまいました。
日本は海外の先行事例を参考にして制度を整えてはいるものの、消費者からは電力自由化が安定するまで様子見をするといった声が多いですね。
日本の電力自由化は2017年のガス自由化以外には2020年に行われる送配電分離まで特に動きはありません。様子見を止め、動き出すなら「今」なのです。
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