《世界の電力自由化》韓国電力市場の驚愕の現状!

韓国の電力自由化への流れ
韓国の電力自由化への本格的な流れは、2000年前半から始まりました。しかしこれは部分的な自由化であり、小売部門は自由化されず幅の狭い自由化となりました。
韓国の電力自由化への取り組みは、もともと1989年に始まりました。韓国には韓国電力公社という国営企業が、韓国の電力の発電や配電、小売りなどを担っていました。しかし、1989年に民営化されたのに現在に至るまで政府が半分の株式を保有しているという、中途半端な状態が続いています。
その後、電力に関しての規制緩和が行われ、90年代の後半には積極的に議論される議題の一つとなりました。そして2001年、発電部門に対する新規参入を認める法律が議会により可決され、いわゆる「本格的な電力自由化」が始まりました。
それと同時に卸電力取引所も開設され、発電事業に関しての自由化は完了したということになります。
このことで政府は、「市場の競争原理が働き、電力の値段が低下していく」と思っていました。しかし、電力の価格は政府が予想した通りには変化していきませんでした。
⇒電力自由化へのあゆみ『大韓民国』
韓国の電力自由化の完全化での電力価格の変化
発電事業は完全に自由化されたために、電力の価格は一時的には低下しました。しかし電力価格の値下げは、長くは続きませんでした。
それは燃料の高騰により発電コストが大幅に上昇し、それに伴い卸価格が上昇したことが大きな原因の一つと考えられています。
ですが、電気を使う側が支払う電気代は変わりませんでした。
普通は電気を作るための原価が上昇すれば、一般市民が払う電気代も上昇します。しかし韓国では、小売りの価格は政府が決めた金額でしか売ることができません。
なので韓国の電力市場を独占している元国営企業のKEPCOは、高い電気を安く売らなければならなかったので、多額の赤字を計上し続けるしかありませんでした。
この原価割れした電力販売を続ければ、韓国経済への大きな負担となります。そのため現在、「発電施設を減らすことにより赤字を減らす」という大胆な方法が専門家から提唱されています。そんなことをすれば電力の安定的な供給が行えなくなり、「停電のリスクが高まる」ことになり兼ねません。
⇒電力自由化になったら停電で大騒ぎに?
新規参入業者の障壁
韓国は発電事業のみを実質自由化したのですが、未だ元国営企業が事実上の独占状態を保っています。
<独占状態にある2つの理由>
- 韓国政府がこの企業が株式公開を果たした後も全体の半分の株式を保有していること
- 発電部門という初期投資が莫大である市場に、リスクを冒してまで参入しようという企業は少ない
ということが大きな原因であると考えられます。
とはいうものの、いくつかの企業は新規参入してきます。それでもこんな状況下なので、自由化から10年以上経つ今でも、新規参入企業が供給できている電力は全体の1割以下という結果にとどまっています。
韓国の電力自由化での規制と緩和のバランス
韓国の電力自由化の規制と緩和のバランスは、非常に偏っていると言えます。まず電力自由化への動きが始まってから、発電部門の完全自由化という発表までに大きなタイムラグがあります。このタイムラグがあったせいで、「制度改革が上手くいかなかった」と言うこともできます。
簡単に言うと韓国政府は、「電気を作るのは自由。でもそのためのお金は出さない!」というスタンスを取っていました。要するに、政府はなにも負担しないけど、利益は出してくれよ!と言っているようなものなのです!
もっと早い段階で電力自由化が全ての部門において完了していれば、新規参入企業もここまで少なくなることはなかったのは明白なる事実です。
韓国は電力自由化ではアジアの先駆者的存在
韓国はアジアの中では、電力自由化の先駆者的存在です。ですが韓国は電力自由化の結果、多くの失敗を犯したのでアジアでの電力自由化の波は停滞してしまいました。
特に電気代の高騰に関しては「最初の段階では価格が低下し、その後急激に上昇する」という自由化の典型的な失敗を犯してしまいました。これは欧州などで多く確認されている事例であり、避けることができたはずです。
今回、日本での電力自由化が成功すれば、日本はアジアでの電力自由化のパイオニアとなることができ、多くの分野での技術力のアピールに説得力が増し、国内の景気が回復する可能性を秘めています。
韓国の電力自由化の問題点
電気代の高騰「新規参入業者の数」
韓国の電力自由化後の問題点のひとつは、「電気代の高騰」です。韓国は電力自由化で、発電部門のみを自由化しました。発電事業は初期費用が莫大な金額になるため、参入障壁が非常に高く、新規参入業者の数が圧倒的に少なかった。これが、韓国が電力自由化後に電気代が高騰した原因の一つです。
電気代の高騰「小売市場の自由化」
また、小売市場を自由化することをしなかったことも大きな問題点の一つだと言えます。小売部門を自由化していれば参入障壁が低いため、多くの他業種の企業が参入し、魅力的なサービスを提供することができていたかもしれません。
<具体的成功例>
オーストラリアでは、小売り部門を自由化した後に携帯電話事業者が参入し、小売り事業を大きく拡大しています。
オーストラリアの例は、他業種ならではの発想を生かしたビジネスプランが功を奏した結果です。社会的なインフラである「携帯と電気という二つのものをまとめて支払いが可能である」という点と、「携帯と電気を同時契約すれば特別割引」など、お得感が消費者に喜ばれたことが成功の大きな要因だったようです。
それにより、その企業は業績を伸ばし大手の電気事業者として現在もオーストラリアで電力の供給を行っており、結果として電力の安定供給を実現することが出来ています。
電力不足問題
韓国では今でも、電力不足の懸念が続いています。特に夏には地球温暖化の影響もあり、電力の需要が急激に増加します。
2011年に停電した際には、9月という季節にはありえない突然の気温上昇が起こり大停電を招き、韓国の電力システムのアラが露呈しました。
その時は「突然の急激な気温上昇」という自然現象が直接の引き金であったため、電力の供給システムの問題に目を向ける人はそこまでいませんでした。
しかし、地球規模の爆発的な人口の増加に伴う需要の増加が避けられない昨今、「韓国の電力システムでは供給が需要に追い付かない」というエラーがいつ起こってもおかしくない状態にあります。
しかもその解決策である安定的な供給の目途もついていないため、国民は電力不足の不安を抱えたままの生活を余儀なくされています。
これに対し政府は夏の間のみ、企業の入っているビルのエアコンの温度制限を実施したものの、予断を許さない状況が続いていることは未だ変わらない事実です。
韓国の電力自由化から学ぶ日本の課題とは
韓国の電力自由化は、一言でいえばとにかく中途半端であったと言うしかありません。政府が元国営企業の株式を半分も残したまま、残りの株式を公開したとしても、電力を自由化したとは言えません。
イタリアも韓国ほどではありませんが、政府が元国営企業の株式を保有したまま電力自由化を推し進めました。
イタリアの場合は、全体の3割の株式を保有したまま株式公開に踏み切ったのですが、(3割といっても実に大きな割合を保有していることになります)韓国はそれを上回る5割の株式を保有しているということは「実際には国営企業のまま」という印象を受けます。
おそらく韓国は電力自由化の動きこそ見せるものの、「本格的に自由化に踏み切るのは他国の成功と失敗の事例が集まってから」という考えなのでしょう。
しかし実際にはもう、
・電力価格の高騰が、燃料の高騰により早期で起こるというリスク
・新規参入業者が予想以上に集まらないリスク
この二つの大きなリスクを政府が軽視していたため、「電力価格を低下させる」というミッションを失敗させてしまいました。
電力の自由化に伴う規制と緩和のバランスが崩れ、市場の形がいびつになりエラーを招いた最たる例が韓国の事例であると考えられます。
日本はこの事例をしっかり理解し、対策を取らなければいけません。電気を買う我々消費者もある程度知識を身につけこの問題をしっかり考えるようにしないと、安定して電気を買うこともできなくなり、最悪「電気代の急激な値上がり」という事態にさらされてしまいます。
韓国の停電事故の根本的問題点
韓国では、2011年9月15日に大規模な停電が起こったということは先ほどもご紹介いたしましたが、その停電は国家規模でも危機を招いています。
停電のあった場所はソウルをはじめとする韓国のいくつかの都市で、社会的なインフラにも多大なる影響を及ぼしました。この時の被害は、約30地域の輪番停電(計画停電のことです)が5時間で60万世帯に影響を及ぼしました。
この韓国の大停電の根本的な原因は、先に説明した原価割れの電力販売が大きく関わってきます。
政府が決めた値段でしか電力を販売できないにも関わらず、電力の原価は燃料の高騰により高騰し続けていき、そんな状態の中、企業は余分な発電設備を放棄し始めました。
ようは、「電気を作って売ると損をする。だったら作らない方がいい。」ということです。つまり、損失を減らすことで経営を維持しようと考えたわけです。
それにより企業としての赤字は減少するのですが、同時に電力の供給量も減少していきます。電力の需要は人口の増加に伴い増え続けていきますので、ここで「供給が需要に追いつかない」という需要超過が起こります。
そして結果として、「韓国の大規模停電は起こってしまった」のです。
大停電が起こったのは韓国だけじゃない
電力の自由化に伴う大停電は韓国だけで起こっているわけではなく、アメリカのカリフォルニアでも非常に大きな停電が起こったことがあります。
またイタリアでも起こっており、大きな被害を及ぼしました。このとき欧州では、大停電を想定した設備がなかったために、復旧までに長い時間を要しました。
これらの停電の事例から分かることは、需要超過に陥らないように電力の安定供給をすることはもちろんですが、「停電した際の対処をしっかりとしておく」ことが重要になってくると思われます。
日本は地震などが多く、災害に対しての予防策や対処をすることが得意な国ですので、停電のリスクと、停電した場合の被害は小さく抑えることができるのではないかと言われています。
電力自由化に伴う構造の変化
また、電力自由化に伴う構造の変化についても考えたほうがいいということを韓国の停電から学ぶことができます。
「韓国では、企業が電力を売れば売るほど赤字になるというシステムを作ってしまったことが発電設備の減少を招きました。」
これは、利益の出ない構造を作ってしまったことに起因します。
電力企業を国営から民営化にする場合には、
「利益の出る仕組みを構築しやすいように政府の関与を極力なくす」必要があります。
<韓国政府が国営企業を民営化した後もしていたこと>
- 株式を5割保有していた
- 発電事業だけの自由化をした。(=他の配電と卸小売りは政府が直轄)
- 販売価格は政府が決定する
これでは「政府の利益は生まれますが、社会的な利益は生まれません」
※社会的な利益=電気を販売する側の利益と電気を買う側の求める価値のこと
売りたい人は、自分の努力に見合った報酬が欲しいですね。しかし政府が決めた値段でしか売ってはならないのなら、やる気を失ってしまいます。
そのため電気を作らなくなり、供給が安定しなくなります。
そして買う側は価格に見合った価値のサービス(電気がもたらす便利さ)を欲するので、少ない電気に多額のお金は払いたくないですね。ですが、電気というのは生活に必需であるため、値段が高くても買うしかありません。
ここが電気が他の商品と決定的に違うところです。
値段が自分の求める価値よりも高ければ普通は買わないのですが、国が値段設定をしているために、この値段で買わざるを得ないという状況です。国が電気の値段を決めるとこうなります。
そのため政府は、新規参入業者への割賦金をする程度のこと以外には関与せず「市場原理が正常に働くよう電力市場の全部門の開放を行い、市場の形がシンプルで整った形にする必要がありました」
ようは、政府が余計な口を挟まない方が良かったということですね。日本も政府があれこれ口出しせず、民営化したらほぼ全権利をそちらに託すようにすれば目指す結果を得られるのではないでしょうか。
郵政民営化と鉄道民営化とは根本的に違いますが、「世界に日本の存在感」を示すいい機会なのは間違いないので、2020東京オリンピックに向けて輝かしい結果を残したいですね。
海外の電力自由化は失敗だらけ?!日本の違いと安全性とは
日本よりも先に電力自由化に踏み切った国は多いですが、なんだか心配になってくる結果を迎えていることが多いですよね。日本は他国の失敗と反省点を活かし、成功の道を慎重に模索しているのことがよくわかります。
では「電力自由化が成功するまで様子見するのが消費者の賢い選択か」といえばそうではありません。
消費者保護を重視する日本の電力自由化で安全に節約するなら行動するべきはまさに今。タイナビスイッチはユーザーが損を被らないためのシミュレーション作りで電力自由化をサポートしています。