電力の自由化今までと何が変わる?!

2016年度の4月より、いよいよ電力が自由化されました。ただ、いきなり自由化といわれても「いったい何が変わるの??」という方がほとんどではないでしょうか?
今回は電力自由化により何が変わるのかと、具体的に皆様にはどういう選択肢が今後できるのかを解説したいと思います。
電力自由化における生活の変化
上記のように「さまざまな企業が競合して行う新プラン
により、電気代を下げる。」ということ以外に、どのような生活変化をもたらすのかを解説します。
⇒東京電力の電気料金プランを従来のと新プランで徹底比較
電力の供給安定確保
電気を供給する会社を分散することにより、災害による停電などのリスクが分散され、いざというときのセーフティネットが増えます。
「新興の電力会社と契約して、倒産したら電気が止まってしまうのではないか?」という不安はおありだと思いますが、この点に関しては大丈夫です。
まず、電気の「供給元」自体は変わりますが、電気を配送する回線自体はこれまでどおり既存のものを利用し続けます。
その上で、電力会社が倒産した場合は電力をお互いに融通しあうなどのセーフティネットが用意されている(同じ回線を使っているので、契約先が違うところも全て同じ電気回線でつながっている)ため、急に電気が止まるということはありません。
このシステムにより、地震などの災害によりひとつの電力会社が止まっても、ほかの電力会社が補填するという、いわば「電力インフラのリスク分散」が行われています。
また、もともとの停電に対する対応能力は世界基準で見ても日本はかなり上位で、需要家1軒あたりの年間停電時間はアメリカのニューヨークが12時間、日本が次いで16時間、ここで一気に差が出てドイツが37時間、フランスが57時間、イギリスがなんと100時間となります。
データ出展:電力改革研究会 http://www.gepr.org/ja/contents/20120611-03/
つまり電力自由化により、ますます「トラブルに強い電力網」が日本に引かれることになるというわけですね。
クリーン電力の活用発展と、それに伴う環境保全
こちらは個人の方にとっては直接影響するものではありませんが、日本の環境のためにぜひとも知っておいていただきたい内容となります。
従来の火力発電は環境に対するリスク(二酸化炭素排出や空気汚染)が高く、また絶対に安全だということになっていた原子力発電神話も崩壊したことにより、太陽光発電や地熱発電、風力発電といった自然エネルギーが注目されています。
但し問題点として、文字通り「自然」をエネルギーとして変換するシステムという関係上安定した供給は難しく、そこが課題となっておりました。
今回の電力自由化により、「地域外での事業展開」が可能になったことにより、この問題が解消されるかもしれない、という考え方があります。
現在の再生エネルギーというのは安定性の問題のほかにも「地域内で余って破棄される」という問題などもありました。これらを一括して解決する可能性を秘めているのが「地域外での事業展開」です。
あくまで一例ですが、対策方法の一つとしては「発電方法の事業分散」です。
たとえば北海道にある太陽光発電A社と、風力発電を行う沖縄のB社があるとします。当然、太陽が出なければA社は発電が止まりますし、風力が弱ければB社も止まります。
この2社が地域の垣根を越えて統合することにより、「風が止まっても太陽が出ていればOK、逆に太陽が出なくても風がでていれば大丈夫!」といった形でリスクに対して柔軟に対応することもできます。
また当然、地域内であまらせて廃電していた電力も安くほかの地区に販売することにより、安価な電力が供給され、生活コストが下がるという形もありえます(現在の蓄電システムではまだいくつかの課題があります)。
つまり、「自然エネルギーの活用により、環境も守れて電力も安くなる可能性がある」ということですね。
電力自由化で大手の独占状態から自由市場に開放
今回の電力自由化で一番大きなポイントは大手電力会社による「独占」状態から市場が開放され、いわゆる「企業間での、サービスや価格の競争」が発生することです。
⇒電力自由化の仕組みと裏事情
2016年4月の法改正により従来の地域電力会社以外にも電気の小売が開放されるだけでなく、大手の電力会社も地域の枠にしばられず活動することができるようになります。
みなさんも経験がおありだと思いますが、いままでは「来月から電気代を○○円上げます」という通知が届いたら、たとえ不満でも泣く泣く呑まざるを得なかった、という経験はないでしょうか?
これからはこういうケースがあった場合、「じゃあ電力会社変えます。お宅高いし」と、いままでできなかった選択肢が増えるわけですね(そもそもそれがまともな市場原理で、いままでがおかしかっただけですが)。
電力自由化後は具体的にどういうところから電気が買えるようになるの??
では具体的に、どういった企業から電気を買えるようになるのでしょうか。
いくつかパターンがあります。
大手地域電力会社
東京電力や関西電力といった、いままで地方ごとに電力を供給していた企業です。
今回の電力自由化に伴い、「地域を越えた営業活動」が可能になりました。そのため、大手電力会社も新たにいくつかの電力プランを作成するなど、さっそく営業努力をおこなっております。
PPS(特定規模電気事業者)
「特定規模電気事業者」とは2004年より500kW以上(05年から50kW以上)の高圧伝記を必要とする顧客を対象市場とする、「一般電気事業者以外」の電力供給事業者のことを指します。
従来はこういった高圧電流のみを取り扱っていたのですが、今回の自由化により家庭向けの一般電力も取り扱えるようになります。大手地域電力会社と違い、すでに「電力プランに差をつけて販売する」という電気事業の経験とノウハウを保有している企業群になりますので、これらの業者が一般ユーザーにむけてどのようなプランを提案するのか楽しみなところであります。
ガス会社(都市ガス、LPガス会社)
東京ガスや大阪ガスといった、各地方にガスを提供している企業も参入します。
ほかの業者セグメントとの違いはやはり、「ガスと電気の抱え合わせによるプランの提案」ですね。
家庭インフラの電気やガス両方を一括管理しやすくすることプラス抱え合わせのプラン提案によりガス会社はより高利益に、顧客も支払いや問い合わせ作業の簡易化とコストダウンなど、双方にメリットがあるプランを提示できることが期待されます。
エネルギー関連企業
東洋ゼネラルなどのいわゆる「エネルギー」に関する企業群も参画する予定です。
この業界は、やはり火力発電の源である「石油」を握っているのがポイントです。これらにより先物取引などの活用における電力の安定化や価格戦略を行い、幅広いプランニングを行える可能性を秘めていることがポイントといえます。
新規の小売参入業者
当然、これまでになかった法改正とインフラネットワークが構築されるということで、新たに経営参入する業者もあります。メジャーなところですと商社系の丸紅新電力などが挙げられます。
まだ事業が動き出していないためどういったポイントをセールスポイントとして経営戦略を組み立てるのかは分かりませんが、新規参入ということもあり大手にはない柔軟なビジネスモデルが期待されています。
大まかに分けましたが、今までの独占状態とは違い、これだけの企業がさまざまなプランを考案し、しのぎを削ることになります。
既存の顧客(つまり皆様)にとってはメリットしかないですね。
電力会社を変える方法
具体的に、電力会社を変えるにはどのような手続が必要なのかについてです。
結論から申し上げますと、電気会社を変える際に必要なのは「申し込み(契約)」と「スマートメーターの導入」のみです。
申し込み
当然、電力会社を変える=今よりお得なプランにならないと意味がない、と思いますので、いろいろな業者さんを比較検討することになると思います。
今回はどのような料金プランがあるかなどについては言及いたしませんが、「これだ!」という電力会社さんが決まれば契約を行う事になります。
この時点で「お客様番号」と「供給地点特定番号(メーターに割り振られている番号です)」を申告し、あとは名前や支払い方法などの一般的な契約の流れを行うだけで、電力供給源の切り替え契約は終わります。
また、今まで電力を供給していた企業のほうにもいわゆる「解約手続」などは必要なく、こちらに関しては切り替えを行う業者が作業を行います。
まとめてしまうと「理想の業者を見つけて契約するだけでOK!」というわけですね。
スマートメーターの導入
もうひとつの作業として検針のための「スマートメーター」を導入する必要があります。
そもそも「スマートメーターとは何か?」
現在の検針機というのは「誘導型電力量計」という非常にアナログな技術で検針されています。それに対して「スマートメーター」というのは電力をデジタル機能によって計測し、メーター自体に通信機能も導入されている、という次世代型検針機です。
簡単にまとめてしまうと「最新の電気メーター」という解釈で大丈夫です。
スマートメーターの導入に伴ってですが、基本的に工事費用などは発生しません(但し業者によっては事務手数料という名目で料金徴収する場合があるので注意が必要です)。
工事の依頼に関しても、新たに電気を買うことになった業者が手配してくれますので、導入といえば大げさに聞こえますが、インターネット回線の工事程度の手間だと考えていただければ分かりやすいかと思われます。
これら2点を行うだけで電力会社を変えることができますので、煩雑な手続などは必要ありません。みなさんも気軽に変更を検討してみてはいかがでしょうか。
電力自由化後、注意が必要な「太陽パネルの導入」
その一方で今後、注意が必要なのが「太陽光パネル導入」です。
ここでの太陽光パネルとは自宅につけて発電して電力を賄うのが目的の方ではなく、「投資目的で広い土地などに太陽光パネルを設置し、収益を得る」という事業や投資を行う方対象です。
こういった「太陽光パネル設置」による投資は2016年現在、一度パネルを設置してしまえば年間なんと10~15%もの高収益を得られる投資です。
理由としてはまず安定性。例えば不動産のように、「入居が入るか入らないか分からない」といった不確定要素があるわけでもなく、株式のように「明日大きく価格が動くかもしれない」といったリスク要因があるわけでもなく、純粋にパネルを設置して太陽さへ出ていればいいため、非常に安定しています。
また、これは意外と知られていないですが、政府が太陽光パネル設置を推進するため現在の電力買取価格というのは非常に「高額」に設定されています。
国家が意図的に市場原理をゆがめているため、「土地さえ持っていて、パネルを設置すればお金が儲かる!」という、本来の経済学上には存在しないとされている「フリーランチ(注:ただ飯。運用業界の場合、危険を冒さなくても儲けられる、の意味)」が市場に存在しているという状態になっています。
こうした状況の中、太陽パネル設置者は勝ち組だったのですが、今回の電力自由化により送電効率があがったことと、「高い費用を払ってまでパネル設置を無理やり推進する」という必要性もなくなってきたため、この錬金術となっていた「政府による高額買取設定」を撤廃する方向となっています。
今のところはまだ大丈夫ですが、今後、電力買取り料も下げていく方針を発表しているため、「(投資としての)太陽光発電っていいな」と思っている方は注意が必要です。
⇒電力自由化と太陽光発電両者がお互いに及ぼす影響
電力自由化による変化のまとめ
- 競合により電気料金が安くなる
- さまざまな業者が参入し、今までになかったプランの選択肢が増える
- 現在以上に災害リスクや電力不足に対応できるようになり、社会的セーフティネットが増える
個人の方にとっては、「良い事しかない」という結論です。皆様もこれを機に電力会社変更を検討し、ライフプランニングの見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
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