電力自由化で変わる固定価格買取制度

固定価格買取制度を政府はどう適用する?
国は2012年7月より「固定価格買取制度(FIT)」をスタートさせました。これは太陽光や風力といった再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取る際は、10年および20年(条件によって異なる)という一定の間、その年に定められた価格で買い取り続けるよう義務づけたものです。
これまではおもに東京電力や四国電力といった、地域の大手電力会社が電気を買い取っていましたが、2016年4月にはじまる電力小売全面自由化によって、新電力と呼ばれる新しい電力会社もこの固定価格買取制度による電気の買取義務が発生します。
新電力には実績がない企業や、設立間もない会社も多く、大手電力会社と同じように電気を買い取ることが難しい場合も。そこで政府は現在、どういう基準で電気を買い取るべきかをさまざまに議論しています。
電力会社が電気の買い取りを拒否できる場合
一般家庭を含む発電事業者が、小売電気事業者に電気の買い取りを申し込むと、ある条件の場合を除き、その申し込みを小売電気事業者は拒否することができません。その条件とは「代金の支払方法に同意できない」、あるいは「離島などで電力の供給を受けられない地域」など、法律で定められたケースに該当する場合です。
さらに新電力であれば、発電事業者からの電力供給が顧客からの電力需要を上回ってしまいそうな場合にも、契約を拒否することができます。ただしこの条件は、地域の大手電力会社には適用されません。
買取義務に上限を設ける案も
来春の電力小売全面自由化によって、電気事業は「発電」「送配電」「小売」という3つの事業に区分され、地域の大手電力会社も新電力も同じ「小売電気事業者」として扱われるようになります。そうすると「電力供給が需要を上回る場合」という、これまで新電力にのみ適用されていた買取拒否の条件を設けることができなくなってしまいます。
そうしたことを踏まえて国は、小売電気事業者がこれ以上は買い取らなくてもよいという買取義務の上限を設ける検討はじめました。一番有力な案は、顧客からの電力需要を事業者が想定したうえで上限を決めるというものです。
供給力がない小売事業者には特別措置も
ただ、小売事業者が自ら買取上限を決められるようにすると、上限を低めに設定してしまう可能性もあり、小売全面自由化後は発電事業者が電力の販売先を確保できないことも考えられます。
そのため事業者ごとによって上限を設定する場合は、どうやってその上限を決めるかがポイントになってきます。しかも季節や時間帯によって刻々と変化する電力の需要量を見極めるには、「最大値」「平均値」「最小値」と、いくつかの指標が存在するため、どれを採用するかによっても設定すべき上限は変わってきます。
さらに、今後新たに電力の小売事業に参入する企業にとって、はじめから需要を想定することは難しいでしょう。そのため、販売量がまだまだ少なかったり、参入間もない事業者に対しては、上限を低めに設定できるようにすること、そして買取義務自体を課さないという特別措置も考えられます。
すでに太陽光発電を取り付けている家庭も、取付を検討している家庭も、今後決められていく再生可能エネルギーの買取方針には要注目です。