節電に興味ないあなたこそピークシフトとピークカットの違いを知るべき2つの理由!

2011年の東日本大震災は原子力発電所に大きな打撃を与え、その多くを運転停止に追い込みました。その結果、全国的に深刻な電力不足に見舞われ、国民にとっては節電対策が急務となりました。ピークシフトやピークカットはそうした節電対策の一環です。
電力のピークシフトとピークカットはどう違うのか?
電力のピークシフトとピークカットの違いを知るためには、まず両者の意味を知ることが必要です。まずピークシフトですが、これは電力の需要が多いときに、電力需要を他の時間帯や曜日に移す(シフト)ことを言います。
一方ピークカットはピーク時の需要電力が過多にならないようにするため、需要を減らす(カット)ことを言います。
でもこうしたことが問題になるのはなぜなのでしょうか?
なぜピークシフトとピークカットが問題になるのか?
東日本大震災の影響で多くの原子力発電所が閉鎖され、それにより電力不足が深刻な問題になり、電力のピーク時カットが日本中の大きな課題になりました。
これを踏まえて従来の省エネ法が改正され、全国の電力需要家にピーク時時間帯の電力使用量の低減を促し電気需要の平準化をを目指すため、その手段として採り入れられたのがピークシフトやピークカットなのです。
ピークシフトやピークカットは電力需要の「負荷平準化」に対する対策

負荷平準化と聞くと、いかにも難しそうですが、その意味は単純で、電力需要格差を時間帯や季節ごと縮小して平準化することです。電力の格差が拡大すると設備の利用率が低下し、コスト上昇の大きな要因になります。したがって安定した価格を守るために電力会社はたえず格差の縮小に取り組んでいます。
負荷平準化のための対策は次の3つになります。
負荷平準化に対する3つの対策
①ピークシフト
ピークシフトの方法には、事業所の操業日や時間を計画的に変更したり、蓄熱を利用し、夜間に昼間利用する熱を蓄えるなどがあります。
②ピークカット
ピークカットは、電力の利用を調整してピーク時の電力を抑えるものです。
具体的な例としては、冷房の設定温度を26度から28度に上げることなどがあります。
③ボトムアップ
ボトムアップとは電力需要の少ない深夜に、電気を有効に、かつ積極的に使っていくことです。
負荷平準化のために様々な料金体系が用意されている
負荷平準化は電力需要の格差を季節や時間帯ごとに縮小し、設備利用率の向上をはかり、供給コストを下げることが目的ですが、それを達成するために、電力会社は様々な料金体系や数多くの契約メニューを設けて、ユーザーの選択肢を広げています。
ピークシフトとピークカットはどのようにして行うのか?

ピークシフトには、主として蓄熱や夜間電力使用型機器として使うエコキュートや蓄電システムなどを使用して行います。これらを用いて電力需要に余裕のある夜間に電力を貯め、昼間の時間にそれを放電します。こうした蓄電システムを使う方法はピースシフトの代表的な例と言えますが、この他にも、夜間にバッテリーを充電しておき、日中は電力会社から電力を消費しない方法があります。
一方ピークカットの方ですが、こちらはユーザー自身が電力の使用を抑えたり、省エネ機器や再生可能エネルギー設備などを用いて電力使用量の低減などに取り組みます。
またピークカットにより電力のピーク時の需要を減らすことは、CO2排出量の多い火力発電所の電力を減らすことにも繋がりますから、電気料金の低減だけでなく、地球温暖化対策にも貢献することになります。
ピークシフトはパソコンでも操作できる
最近のパソコンには、夜の間に充電を行い、日中は自動的にバッテリー駆動へ切り替える機能がついたものもありますから、これを使うことにより、個人でもピークシフトに取り組むことが可能になってきました。
デマンドレスポンスがピークシフトとピークカットを後押しする
このところデマンドレスポンスと呼ばれる電力の需要家が需要量を変動させて電力の需給バランスを調整する取組みが次第に広がってきています。この傾向が続くと、ピークシフトとピークカットへの取組みはさらに加速していき、人々の間にいっそう浸透してゆくと予想されています。
デマンドレスポンス機能を備えているのはHEMS、あるいはBEMSやFEMSと呼ばれる省エネシステムです。
HEMS、BEMS、FEMSなどはピークシフトやピークカットの強い味方

HEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)やBEMS(ビルエネルギーマネージメントシステム)の主たる目的は省エネやCO2削減ですが、見逃せないのは、これらの目的を通してピークシフトやピークカットに貢献している点です。
HEMSが家庭のエネルギーをコントロールすることによって省エネを実現し、CO2を削減して地球温暖化防止に貢献していることは、今や広く知れ渡っていることですが、それに負けじと、BEMSやFEMS(工場エネルギーマネージメントシステム)もこのところ健闘が目立ってきました。次の例を見ると、それがよく理解できるのではないでしょうか。
BEMSによるピークカット具体例
大成建設は横浜市内の同社建設技術センターの敷地内にあるビル5棟を対象にデマンドレスポンス(需要応答)の実証実験をおこなったところ、2013年夏季には最大で33.2%、平均では28.7%のピークカットの削減効果があったと発表しています。
FEMSによるピークカット具体例
BEMSがビル対象であるのに対して、FEMSの対象になるのはFactory(工場)ですが、電気工事大手の住友電工は同社が開発したFEMSの実証実験を同社の横浜製作所で行いました。1800人が働く40万㎡の広大な面積をもつこの事業所での2013年夏季の実証実験では、8月7日の13~16時の時間帯のピークカット率が28%に達し、それまでの実証実験の中でもとりわけ高い効果を記録しました。
⇒HEMS(ヘムス)のメリット・デメリット・補助金について知ろう!
スマートハウスやスマートビルが増えるとピークシフトとピークカットの効果が上がる
このところスマートハウスという言葉をよく聴きます。これはきっとHEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)の普及が進んできたために違いありません。
HEMSは家庭の電力をコンとロールして、省エネを実現し、その結果CO2を削減する環境に優しいシステムです。もちろん省エネではピークカットの力が大きく働きますから、HEMSによるスマートハウスが増えればピークカット効果はますます上がっていきます。一方、スマートビルに用いられるBEMSはビルの電力をコントロールするものですが、対象こそ違いますが、効果はHEMSとまったく同じです。
⇒HEMS(ヘムズ)国内8メーカー徹底比較!!
まとめ
電力のピークシフトやピークカットが大きな問題になったのは、東日本大震災で多くの原子力発電所が操業停止に追い込まれ、電力が大量に不足してきたからです。電量不足を補うには、電力の節約が必要です。その節約に効果的なのがピークシフトやピークカットなのです。