《世界の電力自由化》イタリアから学ぶ電力自由化の影響

イタリアでの電力自由化
イタリアでは、1999年に電力の部分自由化を開始しました。その頃、電力自由化の先駆けと言われるイギリスでは全面的に電力の自由化が始まったので、後を追うようにイタリアでも電力の自由化への取り組みが始まりました。
そしてイギリスから遅れること8年、2007年についにイタリアも電力の全面的な自由化に踏み切りました。
⇒電力自由化の先駆け「イギリス」ではどんな状況だった?
イタリアの電力自由化の歴史
もともとイタリアでは電力は、ENEL(エネル)という国営企業が独占的に提供してきました。ですが、ENEL(エネル)は原子力や大容量火力設備の立地に失敗したことで、イタリアという国全体で電力供給不足のリスクが高まり「電気料金の上昇」という問題が生まれました。
そこでイタリア政府は、ENEL(エネル)の民営化を決断しました。そうすることで市場に競争が生まれ電力価格が下がると考えたからです。そうしてENEL(エネル)は、1992年に民間の株式会社となりました。それから7年後の1999年に電力の部分自由化が始まり、2007年に電力の全面自由化が始まりました。
⇒電力会社『エネル』から見るイタリア電力自由化の歴史
イタリアの電力市場の現在
イタリアでは2007年の電力全面自由化に伴い、多くの新規参入企業が生まれ電気会社の乗り換えが活発に行われると思われていました。しかし、実際には現在も元国営企業のENELが市場の約8割のシェアを誇っており、自由化以前と何ら変化のない状態が続いています。
統計上は「約5%の家庭のみが乗り換えをした」というデータが出ており、イタリアでは電力会社の乗り換えはほとんど行われなかったことがわかります。この原因は、政府にあるとされています。それは未だに政府が、ENELの株式を大量に保有していることが理由として挙げられます。
これまでにENEL株は複数回放出されていますが、イタリア政府は未だに3割の株式を保有しているとされ、そのことが国民の乗り換えを妨げている要因であると考えられます。そのためこれからイタリア政府は、ENEL株のほとんどを売り出すと思われます。そこからイタリアの新規参入企業の本格進出が、始まると言われています。
今はまだイタリア国内の新規参入企業が、全体の10%に満たない割合です。新規参入した企業のほとんどは、合併や買収により参入することがほとんどです。これは、参入障壁があまりに高すぎることが理由の一つに挙げられます。最初に必要な設備を準備するためにも巨額の費用が必要であり、それが国内の新規参入企業の割合が増えない一つの原因と考えられます。
同じ時期に自由化したガスの市場は競争激化
もともとガスは国営企業のENI(エニ)が独占していたのですが、自由化が起こった後は30%のシェアに縮小しました。その際、海外の企業なども多く参入してきたため非常に細分化されている構図が描かれています。
今はまだENIがトップのシェアを誇っていますが、数年後には陥落している可能性は非常にあ高いを考えられます。
市場シェアが変化しないのはイタリアだけじゃない!
電力自由化が行われた後も市場のシェアが変化しないことは、イタリアに限ったことではありません。それと同様のことは、フランスでも起こっています。もともと国営企業だった企業の市場シェアが、電力自由化後も市場のほとんどを占めているという状態です。
イタリアの電力自由化に見る日本の今後
日本も2016年の4月から電力自由化が始まりましたが本当に国民にとってメリットはあるのでしょうか。
日本は電気料金が安くなるのか?
その答えは、「基本的にはならない!」です。
電気料金は会社によっては、上がってしまう場合もあります。ですがamazonの商品券や各種ポイントの贈呈などがあり、それらを全て有効に使用すれば全体としては電気代が安くなるという見方もできます。
なぜわかりやすく電気代を安くせずに、こういったまわりくどいやり方をするのかというと、新規参入の電気会社は、初期投資を早い段階で回収するために電気代自体を値下げすることはできないのです。そのへんのことを考えると、すぐには電気会社の乗り換えを行わないほうがいいかもしれません。
海外の電力自由化後の電気料金の変化
海外では電力自由化後に電気料金は、ほとんどの国で上昇しています!
主な国としてはアメリカ、ドイツ、イギリス、などです。自由化に踏み切る際には「市場の競争原理が働き、顧客を獲得するために企業は電気料金を安くするだろう」と、どこの国の政府は考えます。しかし政府の予想とは裏腹に、長期的には電気料金はどの国も上昇しているのです。
これは、「企業が政府に対し電気料金の申請をして承認を得る必要がなくなったこと」が原因とされています。このようなことは、日本でも間違いなく起こります。その証拠に電力会社は最初、政府に希望とする利益額が出る電気料金の申請をし、断られることがセオリーです。その後、電気料金を安く設定した案を政府に申請し、承認してもらっています。
例えば関西電力は、2015年の5月に一度申請を断られています。その時は10.23%で申請したのですが却下され、結局は8.36%まで下げようやく申請が承認されました。ですが電力自由化後は、こういった「政府が申請を却下し安くする」ようにすることができなくなるため、電気料金は電力会社の言い値で売られることになる=電気代が上がるという結果になります。
また、値上がりの要因と考えられそうなことは、再生可能エネルギーの発電負担や燃料費の高騰、設備などの増強負担などが電気料金に反映すると考えられています。
イタリアでの大停電…日本でも起きるかも!?
過去にイタリアでは、送電線に対する負荷があまりに大きくなりすぎたことが原因で2003年に大停電が起こっています。この大停電は18時間に渡り、国民は大きな被害を受けています。ここまで被害が拡大した要因としては、欧州には送電線の過負荷事故が起こった場合の対策が全くされていなかったことが挙げられています。
また、これは他人事ではなく「日本でも起こり得ること」なのです。電力の自由化に伴う停電リスク上昇は、過去の事例から見ても間違いない事実です。過去には、ドイツも大寒波が訪れた際に大停電を起こしています。
⇒電力自由化になったら停電で大騒ぎに?
いろいろ、課題がありそうな電力自由化ですが、日本でも自由化がスタートして一般家庭でも電力プランを自由に選べるようになりました。
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