BEMSは最新スマートビルに採用されているエコシステム

BEMSで注意したいのは、Hems、Fems、Cemsなどのスペリングがそっくりの他の用語と間違えないことです。これらの用語は最初の1文字こそ違うものの、後の3文字はBEMSとまったく同じだからです。それにネットなどでは一般的にBemsよりHemsの方がよく出てくることもあって、勘違いする恐れがあります。
前置きはさておき、BEMSは「Building Energy Management System」の頭文字を取った略語で、エネルギー消費量の最適化や低減を図るために、建物の設備や機器の運転データを蓄積、解析することによって、制御の効率を高めることです。
なおbemsは一般的にはオフィスビルなど、ビルだけを対象にしたシステムであり、目的は同じでも工場を対象にしたものはfems(Factory Energy Management System)になります。
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BEMSの目的の一つはビルから排出されるCO2を減らすこと

Bemsの導入の目的はビルエネルギーの最適化ですが、その他に、我が国のCO2全排出量の1割にも及ぶビルから排出されるCO2を減らすことにあります。
それ故にBemsは地球温暖化に対する有効な対策として、低炭素社会実現のための不可欠な技術として期待されているのです。
BEMSに対するニーズはどんどん高まっている
Bemsは、Building Management Systemというビル監視システムが元になっており、それにITを組み込んだものがBemsに発展し、現在では省エネとCO2削減のために、多くのビル管理会社や建設会社などがこのシステムを開発・販売しています。
Bemsは家庭用のHemsとともに、低酸素社会実現のために、なくてならない技術として、日増しにニーズが高まっています。
BEMSには二つの重要な役割がある
Bemsの目的はビル全体のエネルギー使用量を削減することにあります。そのためにBemsは次の二つの役割を担います。
①電力使用量、水道使用量、ガス使用量の見える化
②照明、空調、エネルギー設備などの制御
BEMSは三つの要素で構成される
上ではBemsの二つの役割を挙げましたが、次はBemsがどのような構成になっているかを見てみましょう。Bemsを構成しているのは次の三つの要素ですが、これらすべての総称がBemsと呼ばれるのです。
第1の要素・BAS
BASはBuilding Automation Systemの略で、ビル設備集中管理制御システムのことです。BASの役割はビル内の各設備の制御と監視です。なおビルの各設備とBASはネットワークで繋がっています。
第2の要素・EMS
EMSはEnergy Management Systemの略で、BemsからBの文字だけを除いたものですが、ビル内のエネルギーの最適化を図るために、BASから得たデータを分析するためのシステムです。
第3の要素・各種センサー
ビルの中には様々なセンサーがあります。人感センサー、温度センサー、照度センサーなどが主なものですが、これらのセンサーがエネルギー関連の情報の収集を行い、それらはBASやEMSで活用されます。
BemsとFemsはどう違うのか?
上でも書きましたがBemsによく似たシステムにFemsがあります。いったいこの両者にはどんな違いがあるのでしょうか?この両者の最も大きな相違点はシステムの規模です。つまり、各々の最初の文字がBとFになっているように、対象がビル(Buiding)と工場(Factory)の違いです。
一般的にビルに導入される設備は蓄電池や太陽光発電、あるいはコージェネレーションシステムなどが挙げられます。しかし工場の場合は、屋外など対象になる敷地が広いため風力発電やメガソーラーなども導入が可能になり、同じ設備でも容量や出力の規模が異なってきます。規模が異なってくると、当然のごとくコストも異なってきます。すなわち規模が大きくなるほどコストも高くなるのです。したがって両者の違いはコストであり、Femsの方がBemsより導入コストが高い点なのです。
⇒工場の節電対策に有効な8つの方法
Bems、Femsだけでなく、Cemsについても知っていたほうがよい

これまでBemsを筆頭に、FemsやHemsなどが出てきましたが、冒頭で名前の出たCemsについても説明しておきます。Cemsは「Community Energy Management System」の略で、最初のCommunity(コミュニティ)でも分かるように、地域全体の電力需要、供給を総合的に管理するシステムのことです。したがって対象が地域全体になりますから、BemsやFemsより規模が大きくなります。
スマートビルにはBEMSが欠かせない
このところスマートハウスという言葉はよく聴きますが、スマートハウスとはHems(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入した家のことです。これと同様に、ビルにBemsを導入したものがスマートビルなのです。
スマートハウスにHemsが必要なのと同様に、スマートビルにはBemsが欠かせません。Bemsによってこそ、ビルの各設備の状態を把握することでき、それをコントロールすることによってエネルギーの最適化を測ることができるからです。とはいえ、スマートビルにはメリットが多い反面デメリットもあります。以下その点を見てみましょう。
⇒電力自由化で無駄が減る!?未来型の家『スマートハウス』
BEMSによるスマートビルのメリットとデメリット

Bemsを導入したビルのことを一般的にはスマートビルと呼びますす。このビルは一見良いことずくめのようですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
BEMSによるスマートビルのメリットは?
メリット①・省エネが可能になる
Bemsが導入されたスマートビルは従来型のビルに比べて数十パーセントも節電が可能になります。規模によって省エネの数値は異なりますが、年間エネルギー消費量の大幅カットは間違いありません。
メリット②・非常時でも電気が使える
Bemsにより、蓄電システム、太陽光発電システム、コージェネレーションシステム(注1)などを導入している場合には、例え事故や天災で停電が発生しても、電力を使えるだけでなく、自家発電も可能であるため、非常時にも電力で困ることはありません。
メリット③・デマンドレスポンスに対応できる
デマンドレスポンスとは電力需要の大きい時間帯に消費電力を抑える仕組みのことを言います。スマートビルは備えている創エネ設備や蓄エネ設備を活用すると電力需要のピーク時の消費電力を削減することができます。
以上がBems導入によるスマートビルのメリットですが、少ないとはいえ、次のようなデメリットもあります。
デメリット①・導入コストが高い
Bems導入には、スマートビルを完全なものにするため、創エネ設備や省エネ設備が必要になります。具体的にはメリットの項でも触れた蓄電地、太陽光発電、コージェネレーションシステムなどです。これらのシステムにコストがかかるため、全体のコストが高額になるのです。
デメリット②・知名度が低い
コストの点に比べると小さな問題かもしれませんが、スマートビルはスマートハウスに比べて極端に知名度が低いのが現状です。これが普及を遅らせている原因になっていることは否めません。
(注1)コージェネレーションシステムとは
コージェネレーションシステムは、発電機で電力を生み出すと同時に、発生する廃熱を給湯や冷暖房に利用するものです。
まとめ
スマートハウスという言葉はよく聞きますが、スマートビルはあまり聞きません。スマートハウスがHems(ホームエネルギーマネージメントシステム)を備えた住宅であるのに対し、スマートビルはBems(ビルエネルギーマネージメントシステム)を備えたビルのことなのですが、今のところスマートハウスに比べると知名度がうんと低いようです。