2020年には地域新電力の市場規模が530億円になるという予測とは?

経済のシンクタンク 矢野経済研究所は、地産地消のモデルとされ、地域新電力とも呼ばれる電力小売事業者について調査し、その結果を2016年7月に発表しています。それによりますと、まず注目すべき売上げについては、電力小売の自由化が開始される2016年には、自由化の対象になる家庭用の低圧電力の売上は240億円に達すると見込まれています。
地域新電力の売上げ予測
現在、地産地消を掲げる地域新電力は全国で40社を数えるほどになっていますが、今後も各地にこの事業モデルを目標にした新規業者は増えると予想され、それも踏まえた上で、今後の売上げを次のように予測しています。
2016年 | 240億円 |
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2017年 | 340億円 |
2020年 | 530億円 |
地域新電力とはどんな電力会社で、一般の新電力とはどう違うのか?
前述のように地域新電力の特徴は、電気の地産地消という点です。つまり、東京電力とか関西電力のような従来の地域を代表する巨大な電力会社から電力が届けられるのではなく、新しく地元にできた小さな発電所から届けられる電力を使うことをいうのです。
地域新電力は、このように地元で作った電気を地元の人に使ってもらうことを本来の目的にしています。とはいえ電力小売が自由化された今後は、地元以外にも供給エリアを広げる地域新電力も出てくると予想されます。
その結果、供給エリアが広域に広がってくると、もはや地産地消とはいえなくなります。その結果使われるのが、産地直送という表現です。したがって、地域新電力は今後、資産地消と産地直送の二つの方針を掲げていくことになります。こうした地産地消と産地直送という経営の概念が、一般の新電力と異なる点なのです。
なぜ地域新電力が選ばれるのか、そのメリットとは?
それにしても電気のユーザーは、これまで通りの大手電力会社でなく、なぜ地域新電力を選ぶのでしょうか。これには二つの大きな理由があります。まず一つはこのところの人々の大きな関心事である「環境とエコ」という点です。地域新電力の多くは、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーで発電を行っています。
つまり地元の特徴と強みを生かして、日照時間が長い地域では太陽光発電、風がよく吹く地域なら風力発電、山が多く森林資源が豊富な地域はバイオマス発電というふうに、地元の強みを最大限に活かした発電方法の組合せによって、より環境負荷の低い電力を選択しているのです。
もう一つは、「地域振興」です。どのような形の地域振興かと言いますと、例えば最近の林業は木材価格の下落や高齢化による労働力不足で衰退の一途を辿っています。
その結果、山地は荒れ放題で結果として土砂災害や花粉症の原因をつくっています。これを改善するため方法が、バイオマス発電所の建設です。この発電所を造れば、雇用が生まれ、所得も増え、地域経済を活性化することができますから、結果として地域振興につながるのです。
新電力は良い点ばかりでなく、こんな弱点もある
地域新電力にはメリットだけでなくデメリットもありますが、最大の弱点に挙げられるのは「価格競争力の乏しさ」です。これを言い換えれば、電気代が高い、ということになります。最近では円安の影響もあって原油や天然ガスの価格が下がっていますから、それを原料にして発電する大手電力会社の電力は比較的安い費用ですみます。したがって当然のごとく地域新電力より安い価格で消費者に電力を提供できます。
ということは、価格面では地域新電力は魅力的ではありません。でも何でもそうでしょうが、物やサービスの購入は価格だけで決まるものではありません。電気も然りで、当面の価格の安さだけで選ぶか、それとも長期的な視野に立って、環境に優しく地元に貢献してくれる点を評価して地域新電力を選ぶかは、まさにユーザー次第であり、選択は100パーセント消費者に委ねられています。
日本各地にはこんな地域新電力がある
いま全国には約40の地域新電力があるといわれていますが、ここではその中から一部をとり上げ、その特徴をご紹介します。
やまがた新電力
山形新電力は山形県をはじめとして、山形新聞社など民間社が総額7,000万円を出資して設立された地域新電力です。この新電力によって県は目標として、一番に脱原発、二番にエネルギーの地産地消と新しい供給基地化を掲げています。
特徴
- エネルギーの地産地消と電力の供給基地化みかん
- 天災などの災害対応力の向上
- 再生可能エネルギーの導入と拡大をはかることで産業振興、地域経済の活性化
- 当面は地元企業向けに供給みかん
湘南電力
沼南電力の地元である神奈川県は原子力に依存せず、環境に配慮し、地産地消を推進する、というスローガンを掲げ、スマートエネルギー計画を立ち上げています。その計画を推進するのが沼南電力の役目です。
特徴
- 株主にJリーグJ2所属の沼南ベルマーレが参加
- 地産地消を目指す
- 電力のエネルギーロスを防ぐ
浜松新電力
浜松市が中心になって設立した地域新電力で、政令指定都市としては始めての事例として注目を集めています。浜松市の他の出資者は、遠州鉄道をはじめとする地元企業で出資金の半分を負担しています。また一部をNTTファシリティーズやNEC系の企業が出資しており、経営面でパックアップしています。
特徴
- 政令指定都市では初の地域新電力
- 市内の太陽光発電所やバイオマス発電所から電力を供給
- 一般家庭向けも検討中
泉佐野電力
関西国際空港のおひざ元である大阪府泉佐野市が中心になって設立した地域新電力です。地域密着型をモットーとする新電力ですが、供給エリアは大阪府全域が対象になっています。泉佐野市内では、2015年から供給を開始しています。
特徴
- 泉佐野市が3分の2を出資みかん
- 関西国際空港のメガソーラーが主電源
- 料金は均一の5%引き
とっとり市民電力
鳥取ガスが90%、鳥取市が残り20%を出資して設立した地域新電力は、鳥取県地元の産、学、金、官の4者が連携して新たなエネルギー産業として育てようと資本金2000万円でスタートしたものです。鳥取市と鳥取ガスが設立したものであることから、市民電力を標榜しています。
特徴
- 供給源は太陽光、廃棄物、バイオマス、小水力発電など
- 地産地消で地域経済の循環と成長を目指す
- 伊藤忠エネクスと提携
みやまスマートエネルギー
福岡県みやま市が55%出資の筆頭株主で、市内の公共施設や民間企業を対象に、初年度(2016年)は1.4億円の売上げを目指しています。
特徴
- 福岡県みやま市が中心となって設立
- みやま市の水道などとのセット料金もある
- 高齢者見守りサービスなどの付加価値もある
鹿児島電力
鹿児島電力は、三つの事業を運営していきます。その三つは電力小売事業、メンテナンス事業、再生可能エネルギー買取事業などです。電力小売では、九州電力より安い料金の提供を目指しています。とはいえ単に価格競争に走るだけでなく、鹿児島県における地産地消、及び地域活性化にも役だつような小売形態も目指しています。
特徴
- 鹿児島でつくり、鹿児島で使う電気の地産地消
- 電源は太陽光発電、バックアップも万全
- 料金は九州電力より安く
まとめ
新電力と呼ばれる会社は全国に数百社あると言われていますが、そのうち、主に地域のユーザーだけに電力を提供するのが約40社ある地域新電力です。この記事では地域新電力の特徴や、その他の新電力との違いなどを説明しています。
地域新電力と激安新電力を一括比較!
環境に優しいエコな電気を使えるというのは大きな魅力です。しかしこの手の地域新電力と契約するとなると、やはり価格がネックとなってしまいます。値段か、エコか……悩ましい問題です。
この問題を解決するためにも、一度どれくらいの差があるのか、比較してみましょう。
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