電力自由化で電力供給や送電はどう変わる?

電力自由化で電力供給や送電はどうなるの?
電力自由化で、今後発電や送電、配電のしくみが変わっていきます。
これまでの仕組みは地域に根付く大手企業が電力の発電、送電(発電所から変電所まで電気を運ぶこと)・配電(変電所から各家庭へ電気を送ること)、小売りまでを一貫して各社で行っていましたが、今後電力自由化に伴って仕組みが大幅に変更され、それぞれ独立した会社として分離されていきます。
それぞれの段階について、電力自由化でどう仕組みが変わるのかを詳しく説明していきますね。
発電部門
発電部門の仕組みは変わらず、今までも電力自由化が行われており、各地方の大手企業以外にも事業者がいます。
今後は、発電から送電や小売りまで一貫した仕組みで行ってきた大手企業が分社化し、発電部門は発電部門しか請け負わない会社も増えていきます。
送電・配電部門
電力自由化で送電、配電部門は今までと仕組みが変わり、2020年4月までに大手企業(東京電力、中部電力など)から分社化される送電・配電会社が発電会社から託送料金(送配電網を利用するのに必要な料金)を支払われ、その業務を担います。
その理由は、大手企業の発電部門と送電・配電部門とを分ける仕組みにしないと、既存の送電線網を使用したい新規事業者に対して不当な使用料金を大手電力会社が請求してもわからないからです。
分離することで、大手や新規事業者どちらの発電会社も同じ負担額で送電や配電を公平に行えるようになります。
しかし、電力自由化の後もこの事業は新規の参入が認められていません。
というのは、送電や配電は電力を安定的に供給するのに非常に重要なポジションだからです。
送電や配電に電力自由化を認め新規事業者の参入を許してしまうと、せっかく電力を発電しても、トラブルやミスなどが起こりきちんと需要家まで供給されないなどのトラブルになりかねません。
このことからも、当面は送電・配電を行う会社は仕組み上変わったように見えても、今までのノウハウや実績のある大手電力会社が引き継ぎ、需要家と発電会社を結ぶ業務を行います。
電力小売事業部門
今回電力自由化で仕組みとして最も大きく変わるのが、この電力小売事業者の一般家庭向けへの参入が認められたところです。
電力小売り事業者は、簡単に言うと需要家と直接契約や金銭のやりとりをする事業者のことで、需要家が直接電気料金を支払う先であり、発電会社から需要家向けの電力を調達・購入する役割ももっています。
電力自由化により、小売事業者も多く参入し、新料金プランやサービスが多様化しています。
電力の自由化で契約会社を変えても電気の品質は大丈夫?
電力自由化に伴って契約会社(電力小売事業者)を変更すると、気がかりなのは今までは大手の電力を使用していたところを、新規の発電会社からの電力を使用することになり電気の品質が落ちないかというところですよね。
結論から言うと、新規事業者のうち、発電と小売りを一挙に行っている会社から電力を購入した場合、先述のとおり送電・配電の仕組みは変わらず、各地域の大手が行っているので、送られてくる電気の質や信頼性も今までと全く変わりません。
電力の流れはどうなっているの?
発電会社で発電された電力は、一度送電・配電会社に集められ、そこから需要家へ必要なだけ電力を調整し、流す仕組みになっています。
つまり、使用した電気料金は小売事業者に支払っているものの、実際に使用している電力は各発電会社から集められ「混ぜられている状態」の電力という仕組みになっています。
契約した小売事業者の調達した電力よりも消費が上回った場合
電力の小売り事業者が調達した電力よりも需要家が消費した電力が上回ってしまった場合や、発電所がなんらかのトラブルによって稼働しなくなってしまった場合、電力の送電・配電を行う事業者は、集められた電力から足りない分の電力を調整して補う役割も担っています。
送電や配電の間で起こってしまったトラブルはどの電力会社と契約している需要家も被害を受けてしまいますが、この仕組みのおかげで、新規事業者と契約した家庭でも安心して電力を使うことができます。
スイッチング支援システムについて
電力自由化が始まり、新しい魅力的な電気料金プランや電力会社が参入してきますが、電力の供給契約を切り替える時に、契約のいきちがいで電気が使えないというトラブルが発生しないために、きちんと切り替え支援の仕組みが導入されていく予定で、これを「スイッチング支援システム」と言います。
スイッチング支援システムとは、契約変更の際に電気の供給トラブル(電気の流れが止まってしまう)が起こらないように導入される仕組みのことです。
今まで契約していた電力の小売り事業者から新しい小売事業者へ契約を変えたい時、新しい小売事業者との契約が新規に手続きされると、自動で今までの小売り事業者との契約を解除してくれるというもので、新規契約と旧契約の解除を一度に行えるので非常に便利です。
この仕組みは、「電力広域的運営推進機関」という中立機関から提供される予定です。
小売事業者を切り替えた場合、工事は必要?
小売事業者を切り替えても、工事は不要で今まで通りの設備で電気が使えます。
先述の通り、電力の小売り事業者や発電会社を変更しても、実際に各需要家まで電力を届ける送電・配電を担うのは既存の大手企業です。
よって、家庭や地域にある電線などの設備も今までと同じように使用することができます。
電力自由化で託送料金が安くなる
今回の電力自由化によって、新規の小売り事業者向けに、託送料金が経済産業省から認められた金額で新たに設定されました。
今までは国がその料金設定について本格的に関与はしておらず、今回初めて今までよりも安い単価で託送料金の支払いを済ませられるようになります。
このことで、今までは託送料金がネックでなかなか大手と競争が難しかった発電会社も、送電や配電の部門については同じ条件で料金を支払うことになるので、より公平な条件で参入することが出来ます。
電力自由化で変わっていく電力業界の仕組み
電力自由化で小売り部門の新規参入が次々と始まりましたが、今回の電力全面自由化で変わったのは小売部門だけではなく、送電や配電などの仕組みも大幅に変更されました。
今までの状態のまま小売りの自由化を進めても、割高な託送料金が上乗せされた状態の電気料金に魅力を感じる需要家はほとんどおらず、1995年の発電部門自由化の二の舞になってしまうところでした。
しかし、送電・配電を行う部門ごと別会社へと分けることで、今まで不透明だった託送料金も見直され、適正な単価で利用することができるようになるため、これまでより市場競争がきちんと行われていくことが予想されます。
新規の発電会社向けに、可能な範囲で「地域に根付いた」電力供給をすることで、大手とも十分に価格やサービス面での競争ができるような制度の環境作りもどんどん進められており、これから需要家に選ばれる電気料金プランやサービスを提供できるかは各社の腕のみせどころです。
需要家の方々も、これからは国が用意した安心な電力供給のしくみを十分利用して、「本当に納得のいく」サービスや電力会社、電気料金プランを選べる時代がやってきたと言えるでしょう。