国内の電気料金推移からみる電力自由化

わたしたちの暮らす日本では、電気料金はどのように推移してきたのでしょうか?さらに、2012年からはじまった再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、どのようにその価格が変化しているのでしょうか?2つの観点から、いろいろ探ってみたいと思います。
2度の石油ショックで電気代が高騰
これまでに電気料金がどのように推移してきたのか、資源エネルギー庁のデータから読み解いてみます。
1951年に約7円/kWhだった電気料金は、1954年には約10円/kWhへと上昇。その後は約12円/kWhに落ち着き、18年以上にわたって横ばい状態が続きますが、1973年に第1次石油ショックが起こります。その翌年には約15円/kWhに値上がりし、安定価格から上昇傾向へ。そして1977年には、約19円/kWhとなりました。
※平均単価の算定方法は、電灯料収入、電力料収入をそれぞれ電灯、電力(自由化対象需要分を含む)の販売電力量(kWh)で除したもの
さらに1979年には再び石油ショックが起こります。この第2次石油ショックのあった翌年に、電気料金はこれまでにない高い伸びを示し、約27円/kWhになりました。第1次石油ショックが起こる前と比べると、約2.4倍に跳ね上がったことになります。
その後、1985年に28.9円/kWhとなって高止まったあとは下がっていき、1989年以降は約25円/kWhで落ち着きます。
小売の一部自由化により電気代が緩やかに低下
1995年になると、国によって「発電」することが自由化され、それ以降は電気代が25円/kWhを下回るようになりました。
その後も少しずつ電気料金は下がっていき、特別高圧、高圧と呼ばれる大口利用者に対して電気の「小売」が自由となった2000年以降は、さらに低下。
緩やかな下降がみられるなか、2008年には電気代が少し上昇しました。これは、リーマンショックが関係しているだろうと推測されます。そこで一旦は上昇したものの、2009年、2010年は再び下降に転じました。
震災後は電気料金が上昇
リーマンショックがあった翌年以降、低下した電気代ですが、2011年に起こった東日本大震災の影響によって、再び上昇します。2012年22.3円、2013年24.3円、2014年25.5円と約1円ずつ値上がりしていき、震災が起こる前の2010年と比較すると約25.2%アップしました。
この水準は、第2次石油ショック以降に落ち着いた1989年〜1995年と、同レベルです。
今後の電気料金はどうなっていく?
震災以降、電気料金が値上がりした背景には、国が導入した「固定価格買取制度」=「FIT(Feed In Tariff)」が少なからず関係しています。
国は震災による電力不足を太陽光発電などでまかなうため、2012年より各電力会社に、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーで発電された電気は一定期間、一定価格で買い取ることを義務づけました。
ただ、再生可能エネルギーの買取にはそれなりに費用がかかるため、各家庭にもその費用の一部負担を義務づけたのです。2012年以降電気料金が上がったのには、このFIT導入も関係しているというわけです。
買取価格はどう変化しているの?
ここからはFITの売電価格の推移をみていくことにしましょう。なかでも特に家庭に身近な太陽光発電に絞ってみてみたいと思います。
導入初年となる2012年度の太陽光発電の売電価格は42円と、その年の電気料金22.3円/kWhよりも大幅に高く、太陽光で発電した電気は売ったほうが断然お得でした。
その後、2013年度には38円、2014年度には37円とやや下がりますが、それでも電気料金よりは高い水準にあります。
しかし、2015年度には一気に10円も下落となり27円(出力制御対応機器設置義務なしの場合)に。2014年の電気料金は25.5円ですので、電気を買う価格と売る価格がほぼ同じになったことになります。
さらに今年度、2016年度の売電価格は25円(出力制御対応機器設置義務なしの場合)と、ついには2014年の電気料金を下回るようになりました。電気を売る価格よりも、買う価格が高いということは、発電した電気は家で使うほうがお得になったということです。
電気をつくり、貯めて使う時代の到来!
発電した電気を売るより、家で使うほうがお得となった場合に持っておきたいのが、「蓄電池」と呼ばれるものです。
蓄電池を使えば昼間に発電した電気を貯めることができ、夜間、それを使うことができます。場合によっては1日の電気を太陽光で発電した電気だけでまかなう、といったことも考えられます。これから太陽光発電システムを導入しようと考えている家庭は覚えておくとよさそうです。
さらに、これからは電力会社を変えることで、電気料金を今までより安く抑えることができます。家庭でつくった電気で足りなくなった場合には、これまでよりも安く電気を買うことができるのです。