イギリスは電力自由化により電気料金が高騰!!

イギリスの電力全面自由化で電力市場の競争が激化
1999年より電力自由化が始まったイギリスですが、現在ではイギリス内外(イギリス、フランス、ドイツ、スペイン)の電力会社がM&Aにより形成した、Big6と呼ばれる大手電力会社6社が電力市場の95%のシェアを占めており、電力自由化が始まった当初のような1社の独占市場ではなくなっています。
電気料金だけではなかなか差別化が難しいため、各社はほかの公共料金とのセット割サービスや、クーポン券を配布するサービス、さらには長期間の契約で受けられる割引など様々なプランを提案しています。
今回はそんなイギリスの電力自由化の経緯と今について、簡単にご紹介していきたいと思います。
その一例をご紹介しますと、以下のようなサービスがあります。
電気料金の高い冬場に契約すると、商品券を進呈 |
3年以上の継続契約で、数か月間の電気料金が無料 |
電気とガスの同時契約でセット割引 |
電気と水道の同時契約でセット割引 |
早朝の電気料金は○%割引 |
電気と水道の同時契約でセット割引 |
プリペイド方式で電気料金が割安に |
上記のサービス以外にも、日本で言う「生協」のような共同購入システムも流行しており、既にある電気料金プランの中から需要家が選ぶ従来のようなタイプではありません。
共同購入する需要家の数や地域など共同購入側から条件を出し、それに応じて契約したい会社が電気料金やプランを入札して競い、最も魅力的な電気料金プランを提示した会社を選ぶというシステムです。
イギリスでは今や電力自由化が最も成功している国の一つですが、各社間では市場競争が激しくなっています。
それに応じて料金プランやサービスが大幅に増えて複雑化したことで、需要家がどのプランを利用すればよいかを比較や検討ができるサイトもたくさん出ており、中にはイギリスの規制当局の「電気とガス市場局(Ofgem)」によって「信頼性が高い」とお墨付きをもらっているサイトもいくつか存在しています。
イギリスの電気料金はどう変わった?
需要家への負担を減らし、市場を活性化するという目的のもとに開始されたイギリスの電力自由化ですが、結論から言うとその目的の半分である市場の活性化は達成され、もう半分の電気料金を安くして需要家への負担を減らす、という目的は達成がなかなか難しい状況だと言えます。
電力会社が国営だった当初に比べ、電力自由化が開始した1999年から約3年間で、イギリスの電気料金は40%も安くなりました。
しかし、安くなったのは新規事業者が多く参入し、電力自由化が始まったことで一時的な価格競争が激しくなったからという理由で、その安い電気料金は長くは続きませんでした。
電気市場が活性化したにも関わらず、市場のそもそものやり方などの問題は解決しておらず、その後は徐々に電気料金が高くなる傾向にありました。
一旦は安くなった電気料金が徐々に値上がり
現在では市場の合理化や活性化がさらに進み、各社電気料金やサービスで競っているため、国営の時と比較すると、より適正な価格での電力取引が行われています。
とはいえ、やはり発電に使われる天然ガスなどの資源の高騰が起こると、それに応じて電気料金も当然値上がりしてしまいますので、現在もイギリスの電気料金が特別安いという訳ではありません。
イギリスの電気料金はそのうちの発電コストが高い比率になっており、燃料費のあおりをもろに受けてしまうという面もありますので、需要家の負担はまだまだ少ないとは言えません。
今後、化石燃料に頼る電力だけでなく、新たにもっと低コストで電力を供給できるシステムが導入されれば、より安い価格で電力を購入することが出来るようになるでしょう。
イギリスの電力自由化は1990年から
日本では2016年4月より電力自由化がスタートしていますが、イギリスは実は電力自由化の先駆け的存在です。
全面的な電力自由化は1999年からですが、イギリスでの電力自由化の歴史が始まったのはそれより9年も前の1990年の事でした。
各国の中で最も早く電力自由化を始めたイギリスは、今では行きつけのお店に買い物へ行ってそこで電気の契約をついでに済ませ、特典としてサービスを受ける、という光景が今や当たり前になっているほど、電力市場が開かれたものとなっています。
イギリスの電力自由化の流れ
イギリスの電力自由化が本格的に開始されたのは、先述の通り1999年からです。
その目的は、イギリス国内で電気料金が高騰していたため、電力自由化を行うことで電力会社間での競争を活性化し、電気料金をより安く需要家に提供できる環境を作ることでした。
イギリスの電力会社はもともと、国営の中央電力公社(CEGB:Central Electricity Generating Board)1社のみが1957年の電気法に基づいて電力の発電から送電まで一手に担っていました。
しかし、その経営状況は振るわず、国内で生産した割高な石炭を使用したり、どの地域にも確実に電力を届けるために発電施設を必要以上に増設したりするなどでコスト高が続き、国民に対して割高な電気料金の支払いを強いる状況が続いていました。
これを打破すべく動いたのは、かの有名なイギリス初の女性首相であるマーガレット・サッチャー率いる政権です
市場の活性化を目的に16社に分割
当時国営企業を次々と民営化させ、市場を活性化させようと試みていたイギリスは、電気事業も民営化させ、その電気市場の独占状態を変えようと、1990年には電気事業の再編を行い、CEGBを16の会社に分割しました。
その内訳は、以下の通りです。
発電部門 | 3社 | ナショナルパワー・ジェン、パワージェン、ニュークリア・エレクトリック |
---|---|---|
送電部門 | 1社 | ナショナル・グリッド |
配電部門 | 12社 | 各地の配電局をそのまま会社に |
分社化されたイギリスのCEGBですが、政府は競争を促進するために発電部門に対し「強制プール制」を導入しながら段階的に電力自由化を進めていき、1999年に全面小売り自由化に踏み出しました。
新規事業者が50社集まりスタートした電力自由化ですが、強制プール制(電力会社は政府からの強制で電力を市場に卸し、新規事業者がその電力を購入し需要家へ供給するシステム)は発電の大手企業によって価格のつり上げなどが可能であったため、市場が円滑に進まず、もともとの電気料金とさほど変化がありませんでした。
より市場を正常化させるべく、イギリスは2002年に新電力取引制度(NETA :New Electricity Trading Arrangements)が始まり、電力を卸す際にも発電会社が一方的に価格を決めるのではなく、相対取引が可能となったため、そこから著しい電力市場の発展が始まりました。
2005年にはBETTA(British Electricity Trading Arrangements)という電気取引制度が成立し、現在に至ります。
イギリスに学ぶ、今後の日本電力自由化
イギリスでは世界でもいち早く電力自由化が開始され、開始から20年以上経った今では「共同購入」などのシステムが生まれるなど、更に市場競争は激化しています。
日本では2016年4月より電力自由化がスタートしていますが、現在各地域に大手の電力企業が存在し、新規参入の事業者も精力的に市場に参入してくるなど、イギリスにおける電力自由化の過程と似ている部分もあります。
イギリスの例にならい、日本では電気料金プランの比較サイトが既に登場していたり、通信やガス料金とのセット割プランが提案されていたりと同じ道をたどり、電力自由化を成功させるために全体が動いています。
これから日本がイギリスのように電力市場を正常化するには、まずは今ある一部の大手が地域ごとに根を張って独占状態にある状態を解消し、地域ごとだけではなく、全国的に市場が開かれる必要があります。
日本の電力自由化は皆さん「需要家」の選択にかかっています
その為には、需要家がこれからの電力会社や電気料金プランの流れを敏感に読み取り、より優れた企業や電気料金プランへと乗り換えていく流れを作ることが先決です。
イギリスでは既に電力自由化によって電力供給の基盤や市場が安定してきていますが、中には一時の利益のために発電所の増設などに力を入れず、供給が追い付かなくなりかねない企業もあります。
優れたサービスやシステムを導入した新規事業者が現れても、インフラ整備が整っておらず、サービスの継続が難しいケースが出てきてしまっては本末転倒です。
需要家の皆様はこれから先、より良いサービスを提供する企業や市場を育てていくように、経済状況を学び理解しながら、先を見据えた経営をしている企業や電気料金プランの選択をしていく事が大切と言えるでしょう。