都市ガスの都道府県別使用量からわかる事

都市ガスはプロパンガスに比べると比較的安いガスとして知られていますが、日本全国でどれほど普及しているのかを正確なデータを知っている方は意外に少ないのです。
しかし、日本では都市ガスの使用量がどれほどになるのか都道府県別のデータが国から定期的に公開され、各エリアにおける都市ガスに関する実情を知ることが可能になっています。
都道府県 | 都市ガス年間使用量(MJ)※2013年度 |
---|---|
北海道 | 1209 |
青森県 | 225 |
岩手県 | 241 |
宮城県 | 595 |
秋田県 | 197 |
山形県 | 215 |
福島県 | 360 |
茨城県 | 772 |
栃木県 | 439 |
群馬県 | 436 |
埼玉県 | 1666 |
千葉県 | 1881 |
東京都 | 5378 |
神奈川県 | 3192 |
新潟県 | 726 |
富山県 | 230 |
石川県 | 266 |
福井県 | 172 |
山梨県 | 165 |
長野県 | 400 |
岐阜県 | 404 |
静岡県 | 807 |
愛知県 | 2862 |
三重県 | 419 |
滋賀県 | 443 |
京都府 | 826 |
大阪府 | 3446 |
兵庫県 | 2154 |
奈良県 | 314 |
和歌山県 | 164 |
鳥取県 | 110 |
島根県 | 127 |
岡山県 | 387 |
広島県 | 790 |
山口県 | 357 |
徳島県 | 140 |
香川県 | 206 |
愛媛県 | 264 |
高知県 | 143 |
福岡県 | 1231 |
佐賀県 | 149 |
長崎県 | 178 |
熊本県 | 317 |
大分県 | 357 |
宮崎県 | 197 |
鹿児島県 | 308 |
沖縄県 | 180 |
このデータは私達一般市民にとってはそれほど重要性を認識できないかもしれませんが、ガスに関わる業者などは販売戦略などを立てるための重要な指標として位置付けているのです。
今回は、この都市ガスの都道府県別使用量、またはこれを含むエネルギー全体の使用量データを見ることでわかる事などをご説明していきます。
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都市ガスの都道府県別使用量からわかる基本的な事とは?
都市ガスは現在供用エリアが設定されており、その中からどのくらいの量について都市ガスが使用されているかを毎月チェックしているのです。そして、これが都市ガスの都道府県別使用量データとして反映されます。
統計自体は都市ガス会社がデータを国に提供して取られますが、都市ガス会社にとってこの結果は他エリアにおける使用量を知ることができる非常に大きな機会となっているのです。
ここからは都市ガスの都道府県別使用量を用いて、さらにどのような事がわかるのかをチェックしていきますよ。
都市ガス自体の供給エリア内での普及率が客観的にわかる
都市ガスの都道府県別使用量データを見ると、そこには供給エリアにおける供給可能な世帯数と実際にメーターを設置して供給を受けている世帯数のデータもわかります。これによって、供給エリア内における都市ガスの実際普及率も客観的にわかるのです。
この普及率について47都道府県すべてのデータが揃っているということは、日本全国における都市ガスの普及について都道府県ランキングを設定できることを意味しています。
ただ、ここで重要なのは供給できるエリア内に対する使用に過ぎず、各自治体において供給できないエリアも非常に多いことを考慮すればエリア内だけを考慮した普及率はあまり意味をなさないという点です。
各都道府県は異なった地形を持ち、平地が多いところもあれば山が多いところもあります。そのため、このデータでわかる普及率を絶対的なものとして位置づけるとするならば、これを使った様々な資料については若干信憑性が欠けることも否定できません。
都市ガスが供給可能でも必ずしも優先して選ばれていない
また、各都道府県における都市ガスの供給エリアに対するメーター設置状況を見てみると、一般的に都市ガスが導入されると供用が早く進むという一般概念とは裏腹に意外に普及率が低いことも判断できます。
これはつまり、都市ガスを使わなくても他のエネルギーで代替しているという現状が推測され、必ずしも都市ガスが普及の段階で各世帯にて優先的に使用されていないことを示しているのです。
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各都道府県の多くにて、電気がエネルギー占有率の約半分を占めている事情を考慮すれば、都市ガスが決して絶対的に受け入れられる存在ではないと言えます。近年、太陽光発電による売電制度なども企業や一般家庭にも人気がありますし、光熱費の中において経済的メリットをより多く見出すという観点ではガスが非常に不利になっている側面も否定できません。
都市ガスは地方でも徐々に普及はしていますが、供用エリアでも普及が進まないのは消費者側にもエネルギーにおける業者の選択肢が増えたことも大きな要因として考えられます。
都市ガスの都道府県別使用量では把握できないこと
さて、都市ガスの都道府県別使用量は国内の都市ガスの実態を把握するために役立つ指標ではありますが、これを見ただけでは把握しきれない事項も非常に多いと言えます。
まず、把握できない事項として、そのエリアにどのようなエネルギーに対して需要があるのかという点です。
都市ガスエリア内での普及率が低いことで他に利用されるエネルギーが存在すると推測はできますが、具体的にどのエネルギーが重宝されているのは見えてくることはありません。
今後どの程度その県で都市ガスが普及していくかは不透明
また、都市ガスの都道府県別使用量はエリア内での使用状況を把握できるだけなので、今後どの都道府県での都市ガスが普及していくかという点については非常に不透明なこともあります。
これを把握するためには、他のエネルギーの使用量も一緒に把握できる資料を使わなければならないのです。
プロパンガス業者になりますと現時点における都市ガスの使用量の把握も重要ですが、今後の都道府県内での都市ガス普及の見込みが立てられないと販売戦略としては成り立ちにくくなります。
それでも、都市ガスの都道府県別使用量は顧客の立場から見ると役に立つ部分もあり、それはどのエリアの都市ガスが比較的安いかという推測が立てられる点になるのです。
つまり、供給可能エリアにおけるメーター設置率の高さは、各都道府県の都市ガス代を比較する場合の重要な基準ともなりえます。都道府県別使用量のみでは分析できない情報が多い中で、このことは非常に有用な情報になるでしょう。
エネルギー全体の都道府県別使用量を一緒に見てわかること
さて、今まで述べてきた都市ガスの都道府県別使用量ですが、これだけでいろいろな状況分析ができるというのには無理があります。しかし、これにエネルギー全体の使用量を加えることで、いろんな情報を分析が可能になるのです。
都市ガスでだけではなく、すべてのエネルギーをミックスした情報の組み合わせはどのような有用なデータを得られるのでしょうか?
県庁所在地でも都市ガス普及がプロパンより低い場所もある
都市ガス以外のエネルギー状況を各都道府県別に見てみますと、エリアによっては都市ガスの使用量がプロパンガスよりも圧倒的に少ないところも見受けられます。
しかし、それが地方でも僻地に近い都市であれば話は分かるのですが、県庁所在地でありながらも都市ガスよりもプロパンガスの使用量が多いという事実は非常に驚きです。
これはそのエリアの普及が人口的な事情で著しく贈れているというよりは、都市ガス会社における普及への積極性が弱いと判断できます。
実際に県庁所在地であっても産業の育たないエリアは意外に多く、このようなエリアにコストを掛けて普及させるリスクは理解できるでしょう。
そのため、このようなエリアはプロパンガスが都市ガスの占有率よりも桁違いに伸びている大きい実情がある訳です。
東北エリアではガスそのものの使用比率が比較的小さい
例えば、都市ガスの都道府県別使用量を見ると、東北エリアでは都市ガスの普及率は非常に低いことがわかります。
この分には宮城県などの比較的大きい都市を含むところは含まれませんが、全体的に見るとこのエリアにはガスそのものの使用量が著しく低いことが見て取れるのです。
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これは、寒い冬場ではガスよりも灯油の使用量が桁違いに多いことが実情として存在しているのですが、都市ガスの都道府県別使用量のデータだけではこのことを把握することはできません。
寒いエリアにおける灯油の使用の多さについての推測は常識として可能ですが、寒いエリアのすべてがそれに当てはまるという訳ではないので、追加データによって厳密にどのエリアがそれに該当するのかを精査しなければならないと言えます。
よって、エネルギー全体の使用率が分かる都道府県別のデータを併用しなければ知ることができない事実がここにも存在しているのです。
都市ガスを含むエネルギーの都道府県別使用量でわかる傾向
これまで、都市ガスの都道府県別使用量からわかること、そしてエネルギー全体の使用量をチェックすることによるデータの正確性向上が理解できました。
実はこれらのデータを合わせて見ることにより、エネルギー全体における大まかな傾向をチェックすることもできます。
特に各エリアにおけるエネルギー全体の使用量に関する傾向は非常に特徴的なものもあり、データとして非常に明らかに表れているものもあるでしょう。
政令指定都市における都市ガスの使用量が特別大きい傾向
まず、都市ガスはデータを見ますと一般的に政令指定都市における使用量が特別大きい傾向にあります。政令指定都市は北から南まで増加傾向にあるのですが、気候については寒冷地もあれば非常に暖かいエリアもあるのです。
しかし、今までの流れを見ればわかるように、一般的に寒いエリアではエネルギー全体でみると都市ガスの使用量が非常に少ないところが多くなります。
それでも、政令指定都市に関しては例外に当てはまり、都市での普及を目的にしたガスではあるものの、一般的な都市における都市ガス使用率と比較すると雲泥の差があるのです。
特に東北や信越エリアにおける政令指定都市とその他の一般都市では差が大変大きく、到底同じエリアに思えないほどと言えます。
この背景には政令指定都市もしくは中核市、そしてほかの一般都市との間にある都市計画に関する重要性の違いやインフラ拡充のための下地が大きく異なっていることに起因していることにあるのです。
西日本に行くにしたがってエネルギー全体使用量が少ない傾向
また、都市ガスを含んだエネルギーの都道府県別使用量の多さは、一般的に西日本に行くほど少なくなる傾向が非常に顕著です。これは西日本における平均気温の高さに起因しており、日中におけるエネルギーの消費が比較的少ないことが挙げられます。
また、近年は寒冷地における夏場も西日本と同じように猛暑日が発生することも多く、エアコンにおける冷房の使用頻度が変わらなくなったことが東日本と西日本におけるエネルギー使用量の差をいっそう開かせているのです。
さらに、西日本は灯油への一般的ニーズがかなり少ないこともあって、都市ガスやプロパンガスの使用以外にほかのエネルギーへのニーズも非常に高い東日本とではトータルの使用量の差が将来的に縮まることはないと見られています。
その一方で都市ガスの消費量から推測すると、西日本における都市ガス普及率は東日本よりも少ない傾向にあるのです。