ネット・通信系企業が新電力市場に参入する狙いとは?

独自の電源をいかに確保できるか
2016年からスタートする電力の全面自由化によって、「新電力(PPS)」と呼ばれる新しい電気事業者は、一般家庭やコンビニといった零細規模の需要家へも電気を販売することができるようになります。
新電力が家庭などへ電気を販売するうえで大切になってくるのが、いかに電源を確保するかということ。それには①独自の電源を確保する ②大手電力・発電事業者から電気を購入する という2つの大きな選択肢がありますが、独自の電源を確保する方法として有効なのが、太陽光などによって発電された電気を買い取ることです。
プレミア価格での電力買い取りサービスを開始
ソフトバンクグループの一つ「SBパワー」は、独自の電源を確保するために、太陽光発電の低圧電力買い取りサービスを開始しました。国が定める固定買取価格よりも1kWhあたり1円上乗せした価格で買い取ることで、より多くの電気を確保しようとしています。差し当たっては、関東地域で1万棟の住宅・建物からの買い取りを目指しているようです。
また、NTT西日本とオムロンが出資してつくった「NTTスマイルエナジー」も、固定買取価格にインセンティブをプラスした価格での買い取りをおこなっています。
さらに楽天は「楽天エナジー」を立ち上げ、企業向けに「電力マネジメントサービス」をスタート。このサービスは、企業の求める最適な電力を、電力会社から電力の供給を受けながら、これまでより安く提供するというものです。
電力会社が守らなければならない「同時同量」というルール
電気は貯めておくことができないため、常に需要と供給のバランスを保たなければならなりません。この需給バランスを保つことを「同時同量」といい、電力会社はこれを義務づけられています。そして同時同量が保てなくなることを「インバランス」と呼び、インバランスが生じると場合によっては大規模な停電を引き起こしてしまいます。
大手の電力会社は自社で電源を確保しているため、さまざまな手段を講じて同時同量を実現してきました。ところが、新電力の多くは電源を持たないため、大手電力会社のように同時同量を達成することは困難です。そこで政府は新電力に対しては、30分ごとに平均需給をバランスさせる「30分同時同量」という優遇措置を採ることにしました。
さらに、たとえインバランスが生じても停電が起きないよう、既存の大手電力会社が新電力を支援する体制も整えています。したがって、わたしたちは新電力に乗り換えたとしても、安心して電気を使えるというわけです。
ただ、仮に新電力がインバランスを起こしてしまった場合には、高額な「インバランスペナルティ」を大手電力会社に支払わなければなりません。これが、新電力にとって大きな負担になるといわれています。
【表/同時同量について】
電力会社 ルール
既存の大手電力会社10社 同時同量
新電力 30分同時同量
バランシンググループで主導権を握る
楽天やソフトバンクといったネット系、通信系企業は、持ち前の情報・通信力を活かして新電力を大きなグループとしてまとめ、需給バランスを上手くコントロールしようと考えています。
これを「バランシンググループ」と呼び、規模の小さな新電力はバランシンググループに加わることでインバランスのリスクを回避しやすくなり、一方、楽天やソフトバンクといったバランシンググループのまとめ役は、インバランスリスクを減らすことで、価格競争力を得られるようになります。
このように、ネット系、通信系の企業が電力ビジネスに参入する狙いは、これまで培ってきた一般消費者とのつながりを基盤に顧客を確実に獲得すること。さらに、情報・通信力を活かして電力需給のバランスを保ちながら、電力事業において先導的な地位を確立するといったことが挙げられます。